第二十八話 LB(エルビー)登場
智弘side
この屋敷をグルんと回ってみた。幸いというべきか、˝生きた人間˝とは会わなかった。
会っていたら十中八九自殺を止められていただろう。
さらに幸いなことに、ここはキッチン。ナイフを首に突き立てることもできるし、
水を浸したボウルに手首を切ってつけてもいい。自殺法のバーゲンセールといったところだ。
上の方の棚を開けてみる。中に入っているのは食器ばかりだ。
冷蔵庫には何もないだろうなと思いつつ、開けてみた。
「!」
肉が詰められていた。冷蔵庫いっぱいに。調理など施されておらず、
生のままで。
「……これは……まさか」
(人肉?)
ここに来るまでにも、何体か死体を発見した。何かに食いちぎられたような跡を持つ
グロテスクな死体を。人の形をとどめていない物もあったが、人型のものもあった。
「……代わってやりたいよ」
冷蔵庫を閉めた。下の棚を開けてみた。そこには、何本かの包丁と
鍋があった。鍋に水を注ぎ、手に包丁を当て---
コツ、コツ、コツ
「……」
足音。誰か来るのか。まぁいいだろう。自殺さえ邪魔されなければ。
「こんちわー、あ?」
ドアを開けてきたのは、緊張感のない少年だった。黒いパーカーを着込み、
爆炎のような赤髪と、煙のような黒髪が入り混じったような髪の、
ぼーっとした少年だ。
「こんにちわ。邪魔しないでくれよ」
少年は俺の手元をちらりと見ると、すぐに顔に視線を移した。
「……邪魔ねえ。してもどうせまたしようとするんでしょ?」
「ああ。するだろうな」
「じゃあ意味ないね。勝手にすればいい」
「……止めないんだな」
「˝生きろ˝って言葉は˝死ね˝って言葉並みに軽いから」
「わかってるじゃないか」
にやりと笑みを浮かべた。相手もそれを返す。
手首に当てた包丁を、引……
「見つけたー!」
「ぐえー!?」
ドアの前に立っていた少年は、勢いよく開いたドアに激突され、俺の足元に倒れた。
「見つけましたよ、智弘さん!」
「げっ」
「お、おっさん久しぶり」
扉の向こうには、見知った顔が二つ並んでいた。
living Bomb
「……」
「ごごごごご、ごめんなさい!」
痛い。主に後頭部が痛い。それは何故か。前々回の僕初登場回で彼女が開けたドアが
激しく僕の後頭部にたたきつけられたからである。
「とんだ災難だよ。全く」
「……ごめんなさい」
「本当に災難だ」
「智弘さんは間に合ってよかったです!」
というか、彼女たちはどういう関係性なのだろうか。親類……という訳では無さそうだな。
前からの友達?そもそも友達がいるやつがここには来ないか。誰にも必要とされないやつか、
˝自分から˝来た奴だけ。彼女らは恐らく前者。
彼女、道具でも思い入れがあるわけでもない人間を助けようとしてるのか。
---面白い。こっちに来てよかったかも
「ところで、あんた、いったい誰なんだ?」
「誰?って言われてもね。答えようがないっていうか」
「名前は?」
「名前……名前。考えたことなかったな。コードネームでいいかな?」
「コード……?君スパイか何かなのか?」
「スパイ……似たようなもんかな。living Bomb。気軽にエルビーとでもよんで」
---我ながら的を得た名前だよ。˝生きている爆弾˝なんて。
「ところで、金髪の彼はどこに行ったのかな?」
「「ん!?」」
ジョセフside
「こっちでいいのか?」
「そーよ。キショイあんたにはお似合いのキショイぐらい難しいゲームがあるところよ」
「キショイキショイ言い過ぎだっての」
「さっさと足を動かしなさい。時間は有限なのよ」
少し歩くと、鉄の扉の前についた。人間の、いや怪物の力でも壊せそうにないな。
その前に、モニターとコントローラーが置かれている。
「これよ。ま、ユーカ様が作った特別難しい奴だから、あんたにクリアできるわけないけどね」
「ユーカ様?」
「私たちを作った人よ。この美しい私のモデルでもあるわね」
「美しいって自分で言うかな」
「事実ですから♪」
ユーカside
「暇だわ。何か面白いことないかしら……そうだ!久しぶりにロンと遊ぶとか……」
ソファに座りながらそんなことを考えていると、一匹の蝙蝠がどこからか入ってきた。
「何?サバト。私今休憩中なんだけど」
『申し訳ありません。少々問題が発生しました』
「問題ぐらいあなたで対処なさいよ。……って言って前被験者全滅させかけたわよね。
幸い犬神が止めたけど」
『……申し訳ございません』
「それはもういいわ。で、問題って?」
『エクストラステージの門が開きました』
「……え、ウソ!?」
『あのゲーマーがユーカ様が作った死にゲーを一回もミスすることなくロックを解除しました』
「一回も!?」
『どう致しましょう』
「……いいんじゃない?ほんとはやりこみ要素なんだけど、いつやるかはプレイヤーの
意思次第だし」




