第十九話 vsフィリップ&マモン
フィリップside
あの、強烈な衝撃を食らわねばならないケガ。
あの阿呆が蹴り飛ばしたのなら合点がいくというもの。
こいつが車を壊した張本人か。
なら、こいつの能力は、〝機能を消す〟能力かもしれない。
ベルフェもそういっていた。蹴りを封じられてまいっているといっていたしな。
ならば、至近距離で戦うのは得策ではない。
清道side
(あいつら何話してんだ?)
白衣をまとった男と金髪の少女は、一か所に固まり、話し込んでいる。
あの時かかってきた一本の電話。それは、あの頭を吹き飛ばした男からのじゃないか?
(ばれたか?……離れた方がいいか)
そんな俺の考えを知ってか知らずか、白衣の男は、ツカツカと天音に歩み寄る。
「おいおい、俺の診察もう終わりかぁ?お医者先生よ。他の箇所もケガしてるかもしれないぞ?」
「そのときは、また診察してやる」
そのお医者先生は、こちらをきっとにらめつけると、
「捕縛してからな」
「っ!」
俺がとっさに伏せたのは、恐らく本能という奴だろう。後ろの少女の腕が、俺がコンマ一秒前
までいた空間を切っていた。
「そいつには近づくなといっただろう、マモン」
「じゃあ俺どうやって攻撃すんだよ」
「攻撃しなくていい。貴様のは殺しかねんからな」
「天音!そいつを押さえつけろ!」
天音はガムを膨らませ、男に覆いかぶせる。
「うわっ!」
少女は足を払われ、透明な地面に体をしたたかに打ち付ける。痛みで歪んだその顔の上に、
右足を置いた。
「が……てめえ!」
「悪いね。その顔ちょっと汚れちゃうけど、恨まないでくれよ」
しかし、少女は物怖じ一つせずに言い放った。
「謝んないといけないのはこっちだな。安心しろよ、殺しはしない」
「何を……おわ!?」
突如、右足の感覚が消えた。足が、まるで切り取られたような……
(!)
足は、切り取られてなどはいなかった。しっかりそこに存在していた。ただ、いつもと違ったのは……
(干からびている……!)
その干からびた脚をしっかりとその少女は掴んでいた。
干からびていくという感覚は、膝から腿へと進行していく。
「てめえ離せ!」
左足で蹴りつけようとしたが、バランスを崩して倒れてしまった。
「いたたた、これは高くつくぜ、この野郎」
フィリップside
「……」
動けない。それどころではない、四方八方の鉄の壁に押されているようだ。
(ガムの中がここまで居心地が悪いとはな)
傍から見れば、俺の腕はいま、変形し刃物のようになっているだろう。
実際にそれは俺の腕ではないのだが。
光が見えた。このガムを切り裂き、外に出たのだ。
孵化した蝶の気持ちがわかった気がする。
「あ、フィリップ。生きてたか」
「縁起の悪い事を言うな」
マモンの足元に先ほどの少年がへたり込んでいる。
片足が干からびている。
「お前、能力を使ったのか」
「だってよー、こんなか弱い俺に能力を使わずどうやって倒せっつーんだよ」
「逃げ回っていればいいだろう」
「そんなの俺の性に合わな……合わな……げほっげほ」
マモンの皮膚を覆っていた˝鎧˝が消滅した。
何が……いや、そんなことはいい。
この空気の薄いところで鎧がないのはまずい!
「てめえ、何を……」
「天音!そいつをぶん投げろ!」
俺が彼女に近づく前に、切り裂いたガムは再び俺を包み、大きくしなると、
勢いよく……投げた!
「ぐおおおおおおおお!!!」
抵抗する間もなく投げ飛ばされた俺は、数秒横に直線に飛んでいき、
そして、下へ下へと落ちていく。
清道side
「あれ~?ついさっきまでもう一人いなかったぁ?」
「てめえ、ぶっ殺してや……げっほ」
息ができていない。空気が薄いせいか。やはりここには長居しない方がいい。
片足でよろめきながら立ち上がる。
「ジ・エラー。原子が結び付くという機能を消した。3時間後にはなぜか元通りになるから、
早めに決着付けねえとな」




