第十八話 成神清道の裏切り
清道side
「それでは皆さん、良い地獄ライフを」
「貴方、私を裏切るんですか?」
「お互い様」
(あいつら何言ってるんだ?)
(僕が知るわけないじゃん)
如月の足を掴み、天音とともに飛び降りる。
天音はガムを膨らませ、三人の身体を受け止めた。そして車の形を形成し
走り出す。
明Side
視界が回転する。このままでは首を地面に叩きつけられ、
確実に死んでしまうだろう。
……あいつらと心中だけは
「ゴメンですね!」
目の前のオレンジ髪に焦点を合わせる。
(殺人未遂)
想像した鎌をつっかえ棒にして車の横転を止めた。
「お、ありがとさん」
「あんたらは、別に助けたくはなかったのですが」
(戻ってこい)
つい先ほど投げた鎌を手もとに戻す。
「ッツ!まさかあんたの真似事するとは思わなかったですよ」
足首から下を切り取った。かなり痛い。
血があふれて顔にかかる。
横転した車を血塗れた鎌を片手によじ登り、
「せいどおおおおおおおおおおおおおおお!!待ちやがれてめぇ!!
麗しの乙女を殺そうとしやがって!!」
「姐さん、顔が乙女の顔じゃないぞ」
「そんなの知るか!」
清道side
怖い怖い怖い!八尺様でも裸足で逃げ出すぞ!
「早く!早く車出してお願い!」
車はすぐに動き出し、加速してゆく。
トンネルの出口は残り100mもない。
清道Side
トンネルを抜けると、
「はっ?」
後ろを向いてもトンネルなどない。それどころか道路もなければ地面もない。
空中に浮いていた。
(落ちる!)
‥‥‥いつまでたっても地面に落ちることは無い。浮遊感すら覚えなかった。
「?」
試しに降りてみると、透明な地面があった。地面というより道路だろうか。
寒い‥‥‥心なしか空気も薄い。呼吸がしづらい‥‥‥
下を見てみても雲にさえぎられて地面が見えることは無い。
恐らく、今時分は相当高いところにいる。
(何だコレ)
約10mほど先に、黄色の点が見えた。
その点は次第に横へとスライドし、その全体像を見せた。
嘴だ。鳥の嘴が見えた。更に顔、黒い翼、そして白衣に身を包んだ
美少年、金髪で目がくりっとした愛らしい顔をした少女がそれに乗っている。
まるでファンタジー映画を見ているような気分だ
フィリップSide
ワープした先で真っ先に目に留まったのは雲でもなければ
マモンのアホ面でもない。先客の顔などでもない。
「貴様怪我しているではないか!」
「は?」
右腕がひどく裂傷している。血は溢れ出し、皮膚が破け筋肉が顔を出し、血管が垂れさがっている。
骨は複雑骨折をしているようだ。応急手当程度に固定はしてある。
「何をしたらこんな怪我になるんだ。刀で斬られたか?いや、それで複雑骨折はしないか。
爆破?焦げ跡がないぞ!」
「蹴られたんですが‥‥‥」
「蹴りでこんなことになるか!‥‥‥ゴホッゴホ!」
「フィリップ‥‥‥ここ空気が薄いぜ‥‥‥」
「地面が見えないぐらいだしな。こんなところに長時間居たら重度の高山病になる。
急いで離れよう」
鎧内部の空圧調整‥‥‥完了。マモンとカラスは酸素濃度に気を付ければ大丈夫か。
あとはこの子たちを下ろしてやらなくては‥‥‥
プルルルルルルルル
「何だ、こんな時に」
見てみると、どうやらベルフェからのようだ。
「‥‥‥」
「どうした?フィリップ」
「予定変更。あいつらを捕縛する」