第十二話 赤石・心?
ジョセフ・メルストSide
これはどういう状況だ?
ここ三階の窓から突き出たおっさん。その足を引っ張っている、恐らく16~17歳ほどのjk。
体格や髪の色から見て日本人だ。
「‥‥、エー、アナタタチハ、ソコデ、ナ、ナ、ナニャウォ?シテ?」
上手く話せない。日本語は難しいと言うことが身をもって体感できるな。
女子高生の方は、きょとんとした顔で、
「えー、へるぷみー?」
助けて、か?まぁ、人が落ちそうになってるんだもんな。
「IfyouHelpme、Iwllkillyou(助けたら殺す)」
今度はおっさんの方から恐ろしい答えが返ってきた。
これは助けたほうがいいのか?助けないほうがいいのか?
「へるぷみー!!」
「kill(殺す)」
どっち?どっちだぁ―――――――ッ!?
円Side
「あわ、あわわわ」
「宇宙人!宇宙人だ――!!」
心の口笛に釣られてきたそれは、人の形をとってはいたが、人などではなかった。
身長、およそ三メートル。真っ黒い肌に、ボディービルダーのような体つきを
してはいるが、顔が小さく、その中央に巨大な口のみがあった。
「ば、化け物」
そう形容するしかない姿だった。
「‥‥‥まさか」
心がそうつぶやいたその時、
「グオオオオオアアア!!」
化け物は咆哮を上げ、突っ込んでくる。
「うわわ…」
あ、足がすくんで…‥
ドガン!
円Side
「‥‥‥‥あれ?」
私が覚悟していた痛みや衝撃は、いつまでたっても来ることは無かった。
もしくは、痛みも感じず死んだのだろうか。薄っすら目を開けてみる。
「!?」
「死んだと思った?残念。君はまだ天国にはいけそうにないね」
私の目に映ったのは、赤石・心。そして、異形の怪物と、それにこじ開けられ、
半開きになった巨大な門。
「え‥‥えっ?」
「簡単な話だ。門には鍵がかかっておらず、あの怪物を誘導して門をこじ開けてもらうこと。
それがここからの唯一の脱出方法。こんな漫画前に見た気がするけど」
「あれ‥‥って言うか、何で私が生きてるの?私‥‥あの怪物に潰され‥‥」
「る前に君を引っ張ってアレの軌道上から逃がした」
(よくボケっとしてるアンタにそんな判断ができたな)
意外と俊敏な心に感心しつつ、門の方に目を向けると…‥
「すじゅるるる」
怪物はうなり声をあげながら起き上がる。折角開きかけた門も閉じてゆく。
「あれが気絶するまでやらないといけないか…‥」
「その必要はない」
突如、門の奥から手が伸びた。その手はとても人間のものとは思えないほどに
黒かった。爪は十センチ程に長く伸びている。形容するならそれは‥‥
〝悪魔の手〟
「ぐあ!?」
その手は怪物の頭を握りつぶした。
「あ…‥うぇ!」
どう考えても人ではないが、身体形が似ているので、人間の首なし死体のように見えてしまう。
心も声は出しはしないが、表情は歪んでいる。
その〝手〟は、閉じつつある門を抑えつつ、言った。
「貴様らは門を開けた。潜る資格がある。さっさと入れ」」
「で、でもまだ友達が‥‥」
「他のものに資格はない。門を開けたものだけだ」
「‥‥‥」
心は、無言で門の方へと歩を進める。
「お、おい」
「‥‥何?」
「アイツら…‥おいてくの?」
「…‥」
心はにっこりと微笑むと、
「彼女たちなら大丈夫だよ。僕らで先に行って待ってよう」
そう言って私の手を取った。