第十一話 あったことあるの?
識代Side
「デカッ!!」
「お、大きいですね」
「でかいな」
「デカい!!流石宇宙人!!」
(それぞれの性格の滲み出る反応だなぁ)
その門は途轍もなく大きかった。10メートルは裕に超えている。巨大な鉄門。
そして、すぐ手の届く場所にある小さな鍵穴。
「…‥鍵穴から察するに、恐らく全長3センチほどの鍵だ。デカい門とは逆に、小せぇカギだ」
「そんなことまで分かるんですか」
「大体な。ピッキングすれば開けられないこともないかもしれないが、こんなことする奴等だ。
何かしらの手を打ってるだろうな」
「んじゃあ、諦めて鍵を探せと?」
「初めからそうしろっつってんだろうが。俺が来たのは扉の位置を確認したかっただけ」
「鍵の場所は?」
「知ってたら初めからお前らは困ってない」
「何であんたは困ってないんだ」
「俺の目的は自殺。自己紹介の時にも言ったはずだ。お前達を助けてるのは、
お前達が、あんまりにも哀れだから。何度も言わせるな。バカ」
「むむぅ」
正にぐうの音も出ない。どれもこれも自己紹介の時に言っている。
(ま、一生その目的は果たさせないけどね)
「俺の目的は果たさせてもらうからな。識代」
「やらせるわけないじゃないですか」
「…‥チッ!お節介なガキめ」
「死にたがりのオッサンめ」
絶対に死なせませんよ。
識代Side
「鍵って何処にあるんでしょうか」
「鍵ねぇ」
「ヒントが全くないからなぁ」
「‥‥‥‥何でかな」
「ん?」
心くんが疑問を唱える。
「何で、化け物を放とうと思ったんだろうね?」
「え‥‥?」
「逃げ回ってる私たちを見て楽しみたいとか?」
だとすれば、かなり悪趣味だ。
「俺だったら、飢餓で苦しむ奴らを見るほうが楽しいがね」
こっちはもっと悪趣味だった。
「つーか、金かけてるよな。こんな施設造ってさ」
「そりゃあ、宇宙人だもん」
「そろそろその自説捨てろ。さて‥‥‥」
と言って、近くの廃ビルの方に歩き出した。
「ちょ、ちょっと待ってください!」
私も、彼の後を追って走りだした。地味に歩幅が大きいので速い。
「お、おい。っていうか、あんたも動け!他の二人もう行ってるんだぞ!」
「‥‥‥‥」
円Side
動かないことかれこれ十数分。
「おい?何で動かないの?」
「…‥そろそろかな」
「そろそろ?」
すると、心は世にも美しい口笛を吹く。
「~♪」
「え?あんた、そんな特技あったの?」
「ん~、絶対音感ってやつかな?何かそういう才能があるって宇宙人が言ってた」
「へぇ~、え?宇宙人にあったことあるの?」
識代Side
「ちょっと待って下さーい!」
「あ、結局来たのか」
「当たり前ですよ。目を離すとすぐ自殺しようとするんですから」
目の前には、今にも崩れてしまいそうな、五階建てほどの廃ビル。
彼はそれに意にも介さずツカツカと入って行く。
「ちょっと!一人で行かないで!」
「一人にしないでの間違いだろ」