第九話 ガタガタ vs 凸凹
ジャック・ルーリリィSide
「あんのガキ!!車を激しく左に切って僕らを落としやがった!!」
「キャラ変わってる」
そして、地面に激突する寸前、ベルフェに首根っこ掴まれるのと、ピンク色の巨大な拳が迫るのは、ほぼ同時だった。
「!?」
僕は咄嗟にスタッカートで受け止める。出しててよかった。
「お前はあっち」
「え、あれぇ~?!」
僕はぼさぼさ髪の子の車に引き寄せられる。そして彼はその巨大なピンクの拳に掴まる。
ここで戦力分散。打倒とはいいがたいが…‥明さんが居たし、彼の能力は戦闘系じゃないからな。
僕が何とか押さえつけろってことね。
「ったくもう、自分が傷つくのを避ける気か」
「あ、お前死んでなかったのか」
「君の学ランノースリープにするまで死ねないよ」
「姉御逃げよう。俺ノースリープにされたくない」
「逃げることには賛成ですが、理由それですか」
僕の黑玉が形を変えた。pという形に。それが、チョンと車に触れる。
「ピアニシモ」
「ゲ」
「?…あれ。この車スピード落ちてきてる」
車のスピードは一気に落ち込み、遂に時速一キロほどとなった。
「逃げますよ!!」
「お、おう」
「スタッカート‼」
二人は、ドアを蹴破り外へ。横に薙いだスタッカートは彼女のアホ毛以外に当たらなかった。
彼女にとっては大打撃だろうか。
「私のチャームポイントが!!」
「それチャームポイントだったんだな」
「……殺人未遂、処刑執行!!」
「じゃあこっちも、作曲開始だ」
ベルフェゴールSide
このデカい拳を掴んでみたはいいが…‥
くっついて離れない。このイチゴの匂いと、触った感触から、‥‥ガム。
恐らく能力は‥‥‥あいつと同じか。ハズレくじ引いた。
天音Side
かかった。
成神が言っていた通り、ホントに拳を掴んできた。能力はバレるかもって言ってたけど。
(何で分かったのかしら)
まぁ、そんなことはどうでもいい。こいつを気絶させれば、だいぶ楽になるって言ってたし。
「一時眠ってなさい!!」
その拳を二つに増やし、殴りつける。巨大な拳を、その青年は両足で受け止めた。
「!!」
如月が左手を大砲にし、光弾を放った。
ベルフェゴールSide
「一時眠ってなさい!!」
この子たち解ってないと思うけど、此処から落とされたら一時じゃすまない。
そして、あの男の子、目がヤバい。殺人鬼の目だ。やっぱハズレくじ。
巨大な拳が迫るが、両足で受け止める。手がいつまでたっても離れない。
これでは、延々嬲られるだけだ。
「!!」
彼の腕が大砲に変化する。
(あんな能力もあるのか。覚えとこう。忘れるけど)
彼の腕から砲弾、いや、光弾が放たれる。恐らく、生命エネルギーを塊にして打ち込んでいるのだろう。それなら、そう何発も撃てないだろう。その光弾の前に、〝自分のくっついている右手〟を持ってくる。
「なっ!!」
「これで自由だ」
そこそこ痛いな。利き腕を千切るのは。引き千切れた今だくっついている腕を取っ手代わりに掴み、その腕を踏み台に、車に飛び移り彼の頭をサッカーボールの如く蹴り上げる。
「がぁ!?」
更に、〝能力〟を使い、彼の頭を引き寄せ、横っ腹を蹴り飛ばし、時速80キロも出ている車から
道路へと叩きつけられる。
「如月!!」
「一時眠ってろ」
後はこの子だけ。
ちなみに
ベルフェは、清道が自分たちの車に何か細工を施したことは、分かっており、
また清道も、ベルフェが車に触れていたことは目撃している。
彼らが車に引き寄せられるように飛んできたので、〝触れたものと自分を引き寄せる能力〟
ではないかと推測する。
明との一芝居の後、携帯端末の電話機能を使用し、指示を出した。粘着性を高めた拳でぶん殴れと。
清道は、天音たちの車に手が届かない程度に吹き飛ばし、拳に掴まらせる。そうすることで、標的を確実に仕留められる。