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紅華~紅ノ華、赤ノ上二咲キテ~  作者: Riviy
第六陣 全テノ決着ヲ
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第八十一話 片目の影踏み


二つの扇を重ねるようにして放った共通能力は、リンに効いたのか否や。白桜は軽く心配しながら、目の前のまばゆい光に目を凝らす。雛丸も武器両手に睨み付けている。その時、ゾワッとした気配が二人を襲った。雛丸が勢い良くナイフを後方に振った。カキン、と甲高い音がしてそこには脇差だけが浮いていた。いや、正確に云えば、脇差を持った黒い手。影のような。はっとして足元を見ると雛丸の足を覆うようになにかが蠢いていた。咄嗟に白桜は雛丸の手を引くと影のような黒い手もろとも、足元のなにかを扇で切り裂いた。すると、突然、そこからリンが現れた。かと思うと攻撃を加える隙を作らせずに白桜へ攻撃して来た。片方の扇でそれを受け流し、もう一扇で切りかかる。リンは受け流された脇差を素早く引き入れ、その一撃を防いだ。そして、もう片方の手を柄に当て、クルリと回し、持ち手を変える。防いでいたものがなくなった白桜のその手首を掴み、肩を手っ取り早く外そうと試みる。が雛丸が頭上からリンに迫った。ガン、と持ち手を変えた脇差に雛丸の短刀がぶつかり、軌道が少しずれ、白桜がバッと片足を振り上げ、リンを後退させる。一歩、よろめくように後退した彼へ雛丸が一蹴で迫ると両方の刃物を振った。脇差を横にしてそれを防ぐリンは雛丸が武器を振る際に腕を振りかぶった隙を素早く突き、そこに蹴りをお見舞いする。少し後方へ下がった雛丸だったが、間髪いれずに追撃を加える。目を狙って突き出された一撃を背後に反るようにしてかわす。


「〈白き花の言い伝え(ホワイトシークレット)〉!」


後方へ後転するような形で着地したリンに白桜の共通能力の一つが襲いかかる。バッと縦に切るように振られた扇の道筋、リンの頭上から白い大きな花が迫る。驚愕するように片目を見開くリンに向かって雛丸が懐へ潜り込み、花の定位置へと押し出す。だが、リンは脇差を軽く振った。途端、その花は花びらとなって突然散ってしまった。何が起こったと驚愕する番になった雛丸と白桜。驚愕する雛丸にリンの影から波のように浮き出た刃物が襲う。雛丸はハッと我に返り、足元から迫る攻撃を防ぐ。それと同時にリンも跳躍し、脇差を振り下ろした。上段からの攻撃をナイフで、足元からの攻撃を短刀で防ぐ。だが相手は男だ。力の差は歴然だった。ガッと足元からの攻撃を弾き、短刀を脇差との間に滑り込ませる。それでも力の差は歴然としていて、一向に動く気配がない。雛丸は敢えて、後退し、軽く前のめりになった背後に回り込んだ。そこへ白桜が扇を振るう。だが、リンは態勢を低くすると脇差を手首で回転させ、逆手持ちにすると雛丸目掛けて突き刺した。


「危なっ、いなぁ!」

「(……外したか)」


辛うじてナイフを脇差との間に滑り込ませ、間一髪で回避した。白桜がすかさず、再び扇を振り下ろし、隙を与えずにもう片方も振り下ろす。リンは上へ跳躍してそれら全てを回避させると空中で態勢を建て直し、白桜目掛けて落下した。白桜がかわすのは間に合わないと踏み、二扇をクロスさせた。ちょうどそこへ頭上から降ってきた脇差が物凄い勢いで白桜に襲いかかった。物凄い圧力が白桜を襲い、手が痺れる。すると突然、リンが空中へ飛び、くうを切った。なんだ?と首を傾げた次の瞬間、白桜の体に縦に一線、刻まれた。何が起きたのか理解出来なかったがそれでも白桜は扇を横に振った。その扇を空中で回転しながら足でガードするリン。着地した瞬間に回し蹴りを放てば、腕でガードされる。すかさずそれを軸に片足を振り上げる。そしてそのまま、二扇も横に振り切る。ガードしていた腕に浅い爪痕が刻まれたがリンは気にすることなく、背後に回り込んでいた雛丸の攻撃を紙一重でかわす。脇差を振り返り様に振るが、感触は浅く、死角を突いているのだと直感的に理解した。そのため、脇差を再び逆手持ちにし、雛丸がいるであろう方向に突き刺した。感触、あり。半回転し、その方向を向く。ナイフが槍のように突き出された。続いて、もう一撃!と云うように雛丸は短刀も突き刺す。リンと同じように半回転しながら彼の前に躍り出る。二つと脇差が交差し合う。ギリギリと攻防戦を繰り広げる最中、リンの首筋を狙うように白桜の扇が突きつけられた。


「〈手槍(スピア)〉、〈羽ばたく鳥(バード・バード)〉」


扇から放たれたのは手槍だった。首を傾げる要領で間一髪かわしながら雛丸の武器を絡め取る。そして、片手を白桜に突き出した。拳であったその片手を先程刻んだ傷に捻り込むように突き出す。苦痛に歪んだ白桜の表情にリンはミオが狂気的までに嗤った意味が理解出来たような気がした。その時、白桜が笑っている事に気づいた。


「ナイス白桜!」

「チッ」


思わず漏れた舌打ちと共に白桜から慌てて身を引く。が先程絡め取った雛丸の武器がまるで接着されたかのように動かない。横目で見ると羽のような紋様が脇差を空中に固定していた。固定された脇差を踏み台にして雛丸が駆け上がり、上段から武器を素早く振った。だが、再び、リンは消えた。その途端、着地をどうにか成功させた雛丸を凄まじい痛みが襲った。流し目で影を確認すれば、一つ、影が可笑しな動きをしていた。白桜がそれに気付き、立ち上がる影に向かって跳躍した。


「白桜!貸して!」

「お望みとあらば!」


雛丸が痛む体を叱咤し、白桜に向けて手を伸ばした。それに白桜は答えながら影に切りかかる。影、次第に姿を現したリンは脇差で防ぐ。白桜が防がれた扇ではない扇を振る。気配を読み取り、リンは振られた扇をかわすと脇差で扇を突き刺した。白桜の武器である扇が一つ持っていかれてしまった。だが白桜は慌てず、もう片方を一旦閉じ、振り下ろされた一撃を防ぐ。片足を振り上げ、そのまま踵落としを食らわせるが素早い動きで避けられる。悔しさに顔が歪むが白桜は叫んだ。


「〈交換チェンジ〉!」

「〈乱舞・ダブル〉!」


すると、目の前にいたはずの白桜が突然、雛丸に変わった。そして、藍色の瞳をまるで獣のように鋭く尖らせながら隙のない動きでリンに攻撃して来た。先程の攻防戦を軽々と押し退け、リンを圧倒して行く。全てが全て、素早くて防ぐだけで精一杯だ。先程のように影を使う手もあるが、攻撃が凄まじすぎて手が出せない。異常に、血が逆流するかのように興奮した。嗚呼、こんな風な相手を待っていた!その口角を上げた笑みに雛丸の背筋が凍った。その殺気と自分の体に感じた痛みに雛丸は一旦後退し、白桜と合流した。トントン、と片足をリズミカルに叩いて、調子を整える。


「雛様、大丈夫ですか?」

「うー…ちょっと痛いけど、大丈夫!ありがとう白桜」

「いえ、雛様のお望みを叶えたまでです」


痛みを我慢しながら笑う雛丸に白桜も笑った。前方を睨み付けるとリンが不敵に笑っていた。真っ黒な脇差の切っ先を向けながら、低い声で言い放つ。


「……楽しみが増えたな。残念だけど」

「ふーんだ!ボクたちが勝つもん!」


雛丸が挑発するように、意気込みを叫ぶ。相手の行動力、もといスピードは褒め称えるしかない。影を使うのは以前の戦いから予想はできていた。時間をかけてでも良い。相手を分析しろ。そうすれば、弱点は自ずと見えてくる。そこが自分達のチャンスに繋がる。

そして、睨み合ったまま彼らは、誰と云うわけもなく相手に向かって跳躍した。


次回作が溜まってきたぁあ…バトルも起こってますぅう

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