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紅華~紅ノ華、赤ノ上二咲キテ~  作者: Riviy
第六陣 全テノ決着ヲ
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第七十三話 作戦開始


古びた大きな建物。ネオンがギラギラ輝く宣伝用の看板を設置し、偽装しているようだが、周りの建物に人があまりいないことからその偽装は意味を持たないように思える。街丸々一個を本部としている組織。古びた大きな建物の隣に薙と雛丸含む人質が捕らえられた建物が建っている。その建物を遠目に眺めながら、紅葉はパチンと指を鳴らした。紅い葉が彼の手を包み、そこに大鎌が出現する。紅葉は大鎌をしっかりと握りしめ、ブンッと振った。胸元の怪我は神子の指示通り、固有能力で完全に治しているので支障はない。紅葉がいる場所は革命軍がいる村から少し離れたところにあるちょっとした丘である。此処からだと組織の本部である街がよく見える。もう少しで太陽が重苦しい空から退散し、それこそ真っ暗な闇が訪れるので街を一望できるのは今しかなかった。


「紅葉」

「!兄さん」


紅葉がその声に振り返ると白桜が立っていた。白桜も紅葉の固有能力で治療は終わっている。紅葉は白桜がいることに疑問そうに首を傾げている。


「兄さん、群青達と一緒だったんじゃなかったの?」

「ええ、そうでしたが一時期に作戦に参加するだけなのにあそこにいるのは少し、場違いな気がして」


頬を書きながら苦笑する白桜に紅葉はなるほどなと同じように苦笑を返した。今、二人がいる丘の反対側では神子達上位者とその側近ー護衛人らしいーが革命軍全員を集めて団結式らしいものをしている。紅葉と白桜の二人は「逃げている途中で相方が捕まり、人質救出のために一時期的に参加する兄弟」と云うことで話が通っている。神子曰く、『勇使』が来る事は言っていないそうだ。別の心配を与えたくないからと。そうなると予知でも余所から来たかどうかは分からないのかもしれないと考えた。まぁどう思っているにしろ、帝へ情報は絶対に行く。またその神子はやる気を上げるために演説をしているらしい。彼らによれば、これが成功すれば一気に平和へ近づくと云う。逆に、失敗すれば革命軍全滅と云う最悪のシナリオが待ち構えている。神子はそれも見越して革命軍の上位者数名を残す方針を取ったと云うが、「後から着いて来そう」だと笑っていた。それほどまでに信頼され、皆、平和を望み、救いたいと決意しているのだなと感じた。

白桜が紅葉の隣へ歩み寄って行くと彼と同じように街に目をやった。


「大丈夫ですよ」

「分かってるよ!」


白桜が何に対してそう言っているのかは多くて断言できないが紅葉には理解できた。白桜が紅葉の頭を優しく撫で、にっこりと笑う。紅葉がその優しい手付きに甘えたように頭を擦りつける。それにクスリと愛おしそうに白桜が笑った。嗚呼、でも、やっぱり足りない。そう思えてならない二人だった。絶対に助け出す。武器を奪われた可能性も視野にいれているし、他の人質と一緒の可能性が高い。神子の計画も頭に入っている。後は、成功を祈り、予想外の事が起こらないように願うだけ。


「あ、いた」

「?群青様?どうかされましたか?」


その時、群青がやって来た。群青は手元で二本の小瓶を弄んでいる。彼は兄弟の元へ寄ってくると「手、出せ」と顎で催促。不思議そうに手を差し出した二人の手のひらに群青は弄んでいた小瓶を一つずつ置いた。紅葉が小瓶を摘まんで自分の目線より上へ持っていき、下から覗き込む。小瓶の中身はオレンジ色をしたシロップで所々に粒々が浮いている。端から見れば、美味しそうなシロップだがあの作戦を聞いた後では素直に飲み込めない。


革命軍うちの〈錬金術〉って固有能力持ちが侵入のために作ったシロップ。作戦開始と同時に飲めよ。オレはそれを渡しに来た」


白桜の質問ともっともな疑問に同時に返答する群青。紅葉はそれを聞いて面白そうに小瓶を振っている。一方、白桜は〈錬金術〉と云う固有能力に興味津々だった。なんでも作れるのならば、それこそその人だけの能力であるし、革命軍は良い人材に恵まれたと云うことでもある。


「効果はー?」

「飲んでからきっかり二十秒、シロップを飲んでない者からは姿が見えなくなる。間違えんなよ」


ニヤニヤと云った笑みで群青が言う。それに紅葉は「大丈夫!」と胸を張った。薙がいたら「余計に心配だ」とか言っていたのだろうか。一瞬、そう思ってしまい、士気が自分でも下がったのがわかった。しっかりしなきゃ!パン、と両頬を叩いて気合いを入れる。


「白桜のさ、扇で切れるの?」

「お試しになられます?」


群青が疑問そうに、不安そうに尋ねる。武器が扇と云うのが此処にはなかったのか不安そうである。白桜は逆にクスリと妖艶に笑って帯から扇を一つ抜き取ると、素早い動きで群青に切りかかった。群青が慌てた様子で右の短刀を抜き放ち、その一撃を防ぐ。カキン、と甲高い音がし、群青はなるほど、と笑った。


「こりゃ使えるな」

「でしょう?驚かせてしまい、申し訳ありません」

「謝んなくて大丈夫なんだよ兄さん!煽った群青が悪いんだから!」

「そ……」

「そうだねー」

「アンタらもかっ!!」


納得した様子で短刀を収める群青に同じく扇を仕舞いながら白桜がそう謝罪すると、紅葉がそう言い、演説も終えた神子と花白もやって来てそれに賛同する。まさかの不利な状況に群青が叫んだのは悪くない。一時、楽しく笑い合い、暫くすると誰と言うわけもなく真剣な顔付きになった。それが作戦決行だと云う事実を教えてくれる。と、無数の気配を感じ、そちらの方を紅葉が向くと神子につられて来たのか革命軍が集合していた。神子は彼らを見渡し、力強く頷いた。


「さあ、平和のために」


低い声と共に、紅葉と白桜は小瓶のシロップを呷った。


…ブックマークがついていた。嬉しくて二度見しました。ありがとうございます!!読んでくださる方全てに感謝です!これからもどうぞよろしくお願いいたします!

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