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紅華~紅ノ華、赤ノ上二咲キテ~  作者: Riviy
第二陣 新たな意味
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第六話 訪れたのは、異変



暫く考えていると、ふと、紅葉は遠くの方で地響きのような声を聞いたような気がした。その方向へ顔を向けると彼の腕に抱きつくようにしていた雛丸が紅葉を見上げて首を傾げた。


「紅葉?」

「………気のせい?」


んー?と首を傾げる紅葉。だが紅葉が聞いたその声は、間違いではなかった。一瞬の間の後、今度は大きな地響きのような叫び声が響き渡った。足元から地震を起こすような叫び声、いや雄叫びに反射的に全員が耳を塞いだ。足元が震える。雄叫びが止むと白桜が困惑した声で言う。


「なんでしょうか……此処での化け物でしょうか……?」

「可能性は高いな……ん?てかあれ!」


薙が何かを見つけて叫んだ。薙が指差したその先にいたのは、異形な、それでいて少し人間のような動きを持った化け物達から逃げている二人の少年だった。化け物達は何故か怒り狂っているのか、先程聞いたような雄叫びを小さくあげながら二人の少年を追い回している。少年達が化け物達に反撃しないところから攻撃できないのかもしれない。誰かが何かを言うよりも早く、紅葉はパチンと指を鳴らした。途端、彼の隣に大鎌が現れた。大鎌には何かが微かにまとっていたが、今はどうでも良い。紅葉はその大鎌を手に取ると今まさに前方に回って少年達を襲いかからんとしている化け物に向かって大鎌を力いっぱい投げた。大鎌は木々を上手い具合に避けながら回転をつけて飛んで行き、化け物に突き刺さった。いや、ぶつかったと云う表現の方が正しいかもしれない。大鎌が突き刺さった化け物は影に消えて行った。突然の大鎌の登場に逃げていた少年達も化け物達も驚愕で動きを止めている。


「っバカ紅葉!何勝手な事してんだ!」


薙がハッと我に返ると紅葉に向かって怒鳴った。紅葉は軽く目を丸くした。だって、怒鳴られるとは思っていなかったから。薙の言いたい事は分かる。彼らにとっては未知の領域で、勝手に行動を移す事が何に繋がるか分からない。だから薙は怒っているのだ。だが、その反面、薙は片頬の口角をあげて微笑んでいた。誰があの二人を見捨てると云う考えを思い付いただろうか。いや、誰も考えてなどいなかった。薙が抜刀し、白桜が肩を竦めながら帯に差し入れていた扇を手に取る。雛丸もニコニコと笑いながら腰にあるナイフと短刀を手に取る。自分と同じだった事に紅葉は安心すると共に笑った。


「探す手間が省けたと思えば良い話だよな」

「ついでに情報も手に入るしね♪」

「くれぐれも無理はなさいませんように」


三人の言葉に紅葉はうん、と力強く頷くと大きく跳躍した。


…*…


突然現れた大鎌に逃げていた少年達も化け物達も動きを止めていた。が我に返った一体の化け物がこちらに背を向けている少年達に向かって襲いかかった。その時、風のようなものが吹いた、気がした。化け物の前に立っていたのは少年達ではなく、紅葉だった。紅葉は近くの地面に刺さったままになっている大鎌に視線を向けると指を鳴らす。すると大鎌は勝手に地面から抜け出し、空中に浮いた。紅葉が右腕を驚愕で止まった化け物に向けて振れば、大鎌も同じように横に振られた。そして、化け物の体を真っ二つに分断した。化け物は影に消えて行った。大鎌がゆっくりと紅葉の手中に収まった。化け物達が少し腰を後方に引いた。ちょうどその時、紅葉の背後に他の三人が現れた。薙は紅葉の背後にいて、目をまん丸にしている少年達を見やり、言う。


「雛丸、そいつらの事、頼む」

「うん、良いよ!」


雛丸が「はーい」とナイフを持った手を挙げて返事をする。目の前でたむろっている化け物達はやはり怒り狂っていたらしく、目であろう部分が美しく輝いている。そして、標的を彼らに移した。


「紅葉」

「はーいはい。薙ちゃん」

「白桜、無茶はダメだよ。二人をお願い!」

「承知致しました、雛様」


彼らが余裕綽々と云った感じで化け物を前に相手を労う。それが化け物には別の意味で癪に障ったようだった。怒りが軽く上昇する。目の前の化け物達は皆黒一色に染まっており、武器であろうものが宝石のように多種多様な色合いを表している。姿形こそは人間にそっくりだが、目の部分は様々な場所についているし中には腕と足の位置が逆なんて云う気色悪い化け物もいる。そんな化け物達を軽く観察し、彼らは大きく跳躍した。一拍遅れて化け物達も彼らに向かって駆ける。


薙が一体の化け物に狙いを定め、その懐に潜り込むように迫る。化け物が肩から伸びる角のような鋭い刃物を懐に潜り込んで来た薙に向かって振り下ろす。それを紙一重でかわし、まるでステップを踏むかのようにその角の上に跳躍する。と刀を振り下ろした。パキン、と音がして角の片割れが根本から消える。慌てて腕を伸ばす化け物。薙が何かに気付き、化け物を蹴って跳躍。薙が嘲笑うかのように叫ぶ。


「甘いんだよ!」


と、その途端、背後から別の化け物が大きな斧を振り下ろした。大きいため一度振り下ろしたら制御が効かないのだろう、仲間の頭に食い込んだ斧は仲間を首と胴体から真っ二つに切断してしまった。その化け物は慌てたように斧を引く。斧の刃に食い込んだ頭が不気味な声をあげた。かと思えば、その胴体が化け物に向かって投げつけられる。いつの間にか化け物達の真っ正面に薙がいた。薙は刀を容赦なく突き刺すと振り上げた。化け物達の体が見事に真っ二つになり、影へと消えて行く。それを無感情のまま見つめていると横から別の化け物が一撃を加えてきた。一瞬、考え事に勤しんでいた薙の反応が少し遅れた。軽く目を見開いている。化け物、というよりも蜘蛛の足を持った人間のような生物に近い化け物は鋭く尖る蜘蛛の足を薙に伸ばした。


「ふふ」


が、近くで笑い声が響いた。その笑い声は優しく穏やかだ。次の瞬間、化け物の蜘蛛の足が両腕を合わせて四本にまで一気に減った。突然の出来事に放心しつつも痛みの奇声をあげる化け物の目の部分を何かが通り過ぎた。


「慢心は敗北に繋がりますよ?」


途端に広がる痛み。その正体は白桜だった。白桜はその化け物の前に舞い降りると回し蹴りを放ち、吹っ飛ばす。吹っ飛ばされそうになった化け物は辛うじてそれを防ぎ、残った足を攻撃に向ける。が、白桜がバッと片腕を振った。するとそこに二つ目の扇が姿を現し、化け物の凄まじい攻撃を一つ一つ丁寧に防いで行く。そして、トン、と一踏みして化け物の顔面にまで跳躍するともう片方の目の部分を蹴り上げ、二つの扇で切り裂いた。白桜が背後の化け物を横目で確認すると化け物は影に呑まれて行くところだった。


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