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紅華~紅ノ華、赤ノ上二咲キテ~  作者: Riviy
第五陣 隠れた実力者
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第五十九話 稽古の間、兄弟の絆



「〈陰陽魔杯いんようまはい・陽〉」


紅葉は固有能力を自分と白桜に使い稽古に出来た傷を治療していく。兄弟二人の稽古相手である燈梨とアークは掠り傷一つもついていない無傷である。一方、兄弟は出血したり、痺れたりと重傷よりの中傷が多い。それだけで相手がどんなに強者であるか、実力者であるか、知る事が出来た。あと、悔しい。数分前、「休憩を入れよう」と鶯が言いに来たが、それがなかったら紅葉も白桜も倒れていたかもしれない。とても助かりました。そして今、彼らは薙達がいる階とは別の階の部屋で休憩をしていた。

白桜が治療されて行く感覚に身を捩る。とその隣に座っていたアークが心配そうに彼を見上げた。


「えーと……我、やり過ぎた?」

「大丈夫ですよ。稽古なのですから、これくらいの傷は当然です」

「そう…?」

「アークって心配症なの?」


痛みが和らいだ紅葉が回復し終わった片腕を擦りながらアークの方へ身を乗り出しながら聞く。それにアークは困ったと云うか、少し心配そうに視線をさ迷わせた。その動作に一瞬、聞いてはいけないこと聞いてしまったかと紅葉は思ってしまったが、燈梨がアークの背後にやって来ると突然、背後から抱き締めた。その抱き締め方は俗に云うあすなろ抱きである。アークは驚愕したようで両手を軽く挙げかけた。話を聞いていたのだろう燈梨がクスクス笑いながら言う。


「アークは心配症って云うよりもヘタレだもんなー」

「なっ?!ち、違うし!」

「あと弱虫。あ、心配症とも云うのか」

「ち、違うってばあああ!」


燈梨がからかうようにギュッとアークを抱き締めれば、彼は慌てたようにそう叫ぶ。そして一気に顔を紅くする。それが面白くて紅葉と白桜は顔を見合わせるとクスリと笑った。するとそこへ鶯がゆっくりとやって来た。ふと、紅葉は燈梨のあの実力は何処で手に入れたのだろうと思い、いまだに真っ赤なアークを抱き締める燈梨に問った。


「ねぇ燈梨さん。どうやってそんなに強くなったの?」

「え?うーん……ずっと稽古してたらこうなったとしか言えないんだよなぁ」

「ていうか、燈梨は可笑しいんだよ。強さ依然にスピードが」

「それはアークもでしょー!」

「我はほら、機械もあるから」


アークが軽く胸を張って言う。そんな彼が愛おしく思ったのか、燈梨はアークを抱き締める腕に力を込めた。「ふぇ!?」と変な声を出しながら、再び紅くなるアーク。恥ずかしいなら、抵抗くらいすれば良いのだが、そうしないのはその空間や燈梨が彼女と同じように愛おしいからなのではないかと白桜は思った。まぁただ単に抜け出せないだけかもしれないが。


「差し支えがなければで宜しいのですがアーク様。何故、機械に?」


白桜が躊躇気味にアークに問う。聞いても良い話題か心配だったのだ。けれど白桜の心配とは裏腹にアークは普通の表情で、快く質問に答える。様、と言われて一瞬驚いたようだったが。


「『神獣』にやられちゃったんだ。その時の応急措置として機械を体に繋ぎ合わせたんだ。我はこれで満足してるし、それに体が機械ってさ、ある意味かっけぇよな?だから白桜ハクさんは気にしなくても良いぜ?」

「最後のかっこつけ」

「さすがおれの嫁~♪」

「だ、だからぁああああああ」


せっかく最後、良い具合に決まったと思ったのに、鶯と燈梨のからかいで意図も簡単に崩れてしまった。愉快そうに笑う鶯と燈梨につられて紅葉と白桜も楽しそうに笑う。当の本人であるアークに至っては膨れっ面であったが。『神獣』と云うのが此処での異変、化け物であろう。彼らが二人に深く語ろうとしないのは『勇使』同士の情報交換会が絶賛開催中だからであろう。

鶯は紅葉の隣に腰を下ろすと話し始めた白桜達に混ざる事なく、何故か紅葉を膝の上に頬杖をつきながら見た。心の奥まで見透かされそうな瞳に紅葉の肩が震える。


「…えーと、鶯さん?僕に何か用?」

「ん~?鶯で良いよ?」

「鶯、何用?」

「聞いても良い?」


何を聞いても良いのか、紅葉には疑問だったが、うん、と頷いた。視界の端で燈梨が鶯の問いが気になったらしく、こちらを興味深そうに見つめていた。白桜とアークもなんだと云うようにこちらを向く。


「二人共、腹違いだって言ってたけど…」

「おい、鶯!」

「あ、良いの良いの!受け入れてるし、気にしてないよ!僕達の家族ってちょっとした事情もあったから仲良かったんだよ?」


燈梨が「何聞いてんだ」と鶯を軽く嗜めると紅葉は大丈夫!と笑顔で手を振った。アークが不思議そうに白桜を覗き見ると彼も気にした様子はなく、逆に懐かしそうに微笑んでいた。あの時、自分も思わず直感を信じて言ってしまったが、受け入れているんだなと改めて思った。それは、「稽古をつけてくれ」と頼み込んで来た時、紅葉と白桜が「唯一」と口にしていたからだろうか。紅葉がそう言い、「そうだよね」と白桜を笑顔で振り返った。それに白桜は紅葉の頭を撫でながら同意する。


「はい。わたくしの母親…お母様は紅葉のお母様をお姉様と呼んで慕っておりましたし、それに紅葉のお母様もお母様を本当の妹のように可愛がっておられました。わたくしも紅葉のお母様をお姉様と呼んで慕い、可愛がってもらいました。良い思い出です」

「ねー!幼い(ちっちゃい)頃の記憶だけど、とっても仲良しだったよね!僕も兄さんの母さんをお姉ちゃんって呼んでたし!いっぱいお菓子くれたぁ~」

「ええ。わたくし、あの時はお母様が取られないか心配でした」

「僕もそうだった!やっぱり僕達、兄弟だねー兄さん」

「ふふ、そうですね紅葉」


楽しそうに笑いながら、兄弟は手を繋いだ。その繋ぎ方がもう離さないと言わんばかりで、まるで鎖で手を結んでいるかのようで、その後に起きたのであろう二人の悲劇を連想させた。それでも、二人にとっては思い出だった。家の事情でずっと一緒にはいられなかったけど、それでも幸せな家族だった。今はもう、二人っきりになってしまったけれど。話題を変えるように鶯が言う。仲が良い事は良い事だ。だが問ってしまった本人は心の何処かで申し訳なく思っていたようだ。彼らが受け入れていたとしても。


「お茶でもどう?僕これでも淹れるのは得意なんだよ」

「鶯、この前雨近にそれでおじいちゃんみたいって言われてなかったか?」

「お願い燈梨それやめて一応気にしてるんだから」


鶯が心臓辺りの服を掴んで痛むフリをすれば、燈梨がケラケラと愉快そうに笑い出した。それにつられてアークが笑い、紅葉も笑った。白桜と鶯も笑い、暫く、楽しそうな笑いが響いた。そして、再び、自分を変える稽古が始まった。


なんか、ウチが作る兄弟ってなにかあるような…

あと燈梨の嫁発言はなんか考えてたら出てきました。まんざらでもない、んじゃないかなアークよ…

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