第五十七話 稽古開始~白桜vsアーク~
アークの凄まじい威力から逃れるために階段を駆け下りた白桜は、土煙が覆う背後を振り返った。足場を確認し、二つの扇を構える。ガラッ、となにかが崩れる音がした。途端、土煙の中からアークが素早い反射神経で大きく跳躍すると天井を一度足場にすると、白桜目掛けて再び拳を振り下ろした。直撃は危ないと踏んだ白桜は周囲に視線を張り巡らせる。すると扉がない部屋を見つけた。そこへ滑り込むようにして駆け込んだ。再び、土煙が辺りを覆い隠す。白桜は壁に背をつけ、気配を消す。恐らく、アークは自分がこの部屋に逃げ込んだところを目撃している。普通に殴る込んで来るか否や。その時、ドゴォン!と大きな音と共に白桜から少し離れた壁が弾け飛んだ。鋭い凶器となった破片が部屋の中で弾け飛ぶ。
「なっ!?」
白桜が驚愕の声をあげる。あの機械の腕がこれほどの威力だとは想定外だった。土煙の中、アークが左腕をグルグルと回しながらやって来る。そして、白桜を見つけると口角を上げた。
「これは稽古だからって能力は使わないって言うんじゃねぇよな?いつも通りで来いよ、白桜さん?」
コキリ、と指を鳴らしてアークが言う。それに白桜はクスリと笑った。
「ええ、では、そうさせていただきましょう……〈花弁螺旋〉!」
白桜が両手の扇をばっちり広げ、手首の上で一回転させる。その隙にアークは跳躍し、彼の前まで一気に迫る。が違和感と気配を感じ、目の前で急ブレーキをかける。と白桜の右の扇に花の草が螺旋状に巻き付く。それをアークに向かって斬りかかった。アークは体を捻るだけでその一撃をかわす。が扇から離れた草がアークに向かって襲いかかり、機械である左側を集中的に締め上げて行く。しかし、アークは片足を自らの左側に向けて蹴り上げると意図も簡単にその草を引きちぎった。驚きを表情に隠す白桜に向かってもう片方の足で回し蹴りを放つ。扇で防いだ白桜の腕に尋常ではない痛み、痺れが走る。それに思わず顔をしかめた白桜。アークがその態勢の白桜に向かって左手を突き出す。視界の隅で左手の存在に気づいた白桜はもう片方の扇で防ぐ。力の押し合いとなるが態勢的にアークが不利だ。白桜はアークを二扇で弾くと踊るように斬りかかった。だがアークはまだ余裕と云うように後方へ華麗にステップを踏みながらその一撃をかわす。白桜はそのまま一歩踏み出し、アークの懐に迫り込む。
「〈光の弾丸〉!」
「?!」
共通能力を叫べば、白桜が扇を振り、それを避けた瞬間、アークの目の前に弾丸の如くの凄まじいスピードで光の球体が現れたかと思うと弾けた。目眩ましだ。発動者である白桜には効かない。それを利用して一気にアークとの決着をつけるべく扇を首筋に向けて振りかぶり、そしてもう片方を腹目掛けて振った。だが、二扇は空を切った。白桜は瞬時にかわされたと悟り、周囲を警戒する。と右側から脇腹に痛みが走った。そして続け様に背中に蹴りをお見舞いされ、近くの壁まで飛んで行く。足で速度を落とし、痛む脇腹を庇いつつ、前方を見やる。口元から垂れた紅い血を拭う事なく、アークが両足の機械の瞬発力を使い、白桜へ迫る。空中で回し蹴りが放たれ、それを扇を滑り込ませて防ぐ。腕に響く痺れに白桜は唇を噛み締める。アークが足を外し、軽く跳躍して白桜の頭付近の壁を蹴り、頭上から踵落としを食らわせる。それを避けた、が微かにかすったらしく肩がヒリヒリと痛む。背後に回り込み、二扇を振りかざす。がアークが一歩早く、彼の片足が白桜の左の扇を手元から弾き出した。片足を上げた状態のアークがクルリと回転し、白桜の顔を狙って再び蹴りを放つ。白桜はその凄まじい一撃を扇で防ぐ、とその足を掴み投げ飛ばした。空中で態勢を建て直し、アークが辛うじてついた足に力を込め、衝撃を利用して跳躍する。白桜は一旦、後退し、アークを見据えると言う。
「〈巨大剣〉」
扇を持っていない手の指先から糸のようなものが伸び、それらは巨大な剣となってアークに頭上から襲いかかった。そんなものが来るとは思いもよらなかったアークは慌てた様子で頭上に目をやり、前転しながら回避する。床に大きな傷痕を残し、アークのように床を抉ったその巨大な剣は姿を消し、逆に白桜が迫る。滑るように跳躍する間にもう片方に扇を持ち、アークが反撃する前に勢い良く、両腕をクロスさせて接近。首を絞めるかのようにアークに攻撃。そしてそのまま足を刈り、倒れていく彼に向かって追撃を与えるかのように扇を叩き込んだ。
「……ふぅ~ん。我、燈梨みてぇに判断とか苦手だし、良いアドバイスなんて無理だろうけど……でも、白桜さん、やっぱサイコー」
だが、白桜の足元にはアークはいなかった。素早い身のこなしで白桜の攻撃から間一髪免れていた。素早い動き、自分を遥かに上回るスピードに白桜は少し笑った。背後から来た蹴りをかわし、前方の壁を蹴り上げて一回転し、アークの背後を再び取る。しかしそんな事わかってると言わんばかりにアークは方向転換し、二人は向き合う。
「続きをお願いしても宜しいでしょうか?」
「我について来れるならな!」
ニィと笑ったアーク。脇腹や背中、体中がビリビリと電気が流れているかのように痺れて痛い。けれどいつものことだから。白桜は扇をもう一度握り締め、跳躍した。
…*…
二人の稽古を見ていた鶯はアークが壊した壁に背を預けながら、両腕を組んだ。背中には刺青があるため壁の冷たさや上下から来る激しい振動を直に感じる事ができる。
「…元から強いと感じていたけれど、それは違ったみたいだね」
壁から立ち上がりながら、鶯は稽古中の二人を見る。稽古を始めて早数時間が経過していた。燈梨やアークは良いだろうが、怪我を負いつつある紅葉と白桜にとってはそろそろ限界だろう。休憩を入れさせるために鶯は、跳躍した。その動きはまるで空を飛ぶ鳥のようだった。
好きな要素がキャラでわかってしまう…いや、好きなもの詰め込んだキャラとか最高ですけどね!?←突然




