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紅華~紅ノ華、赤ノ上二咲キテ~  作者: Riviy
第五陣 隠れた実力者
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第五十六話 稽古開始~紅葉vs燈梨~



上の階へ消えて行った彼らを見送り、燈梨がアークを離した。アークを離すと燈梨は両腕を組みながら紅葉と白桜を見る。どんな稽古にするのか考えているのだろうと云うことは容易にわかった。アークは火照った頬を自分の手で冷やしながらこちらにやって来た鶯に問う。


「鶯もやるか?」

「ん?いや、僕は遠慮するよ。僕は」


鶯がにっこりと笑って白桜を振り返った。優しく、温かく見守るような瞳が片眼鏡の奥から彼を見据える。と思った次の瞬間、鶯が白桜に向けて蹴りを放った。その蹴りを瞬時に白桜は両腕をクロスさせて防ぐ。何事だと顔を上げた白桜の額に向けて今度はヒールの踵が飛んで来る。白桜が仰け反り、そのまま後方へ後転するように落ちて行く。後方は階段だ。段に手をついて数段下の段に上手く着地する。バッと顔を上げると鶯が片足を上げた状態で踊り場に立っていた。


「兄さん!」

「こうやって奇襲形式が良いと思うよ」


紅葉が悲鳴にも似た声をあげると鶯はクスリと笑いながら燈梨を振り返った。それに彼女は「嗚呼」と愉快そうに笑った。その笑みに誰が始まらないと断言出来ようか。白桜は軽くなるほどと頷きながら帯に差し込んだ扇に向かって手を伸ばす。


「そういう稽古も宜しいと思いますよ?体験は、恐ろしいほどに力になりますからね」

「ふぅん。なら、白桜ハクさんは我の獲物で良いよなぁ?!」


壁を足で蹴り、跳躍すると階段の手摺や壁をジグザグに飛び回る。そして扇を両手に持った白桜に向かって機械の左手の拳を振り下ろした。機械、と云う事に気づいた白桜が数段一気に駆け下りる。アークの拳が階段に物凄い音を立てて食い込んだ。階段で稽古と云う名の戦闘、戦闘と云う名の稽古が開始される。紅葉は片手に瞬時に大鎌を出現させると警戒した眼差しで燈梨と鶯を振り返った。鶯はやらないとでも云うように手摺に体を預けている。油断させる魂胆なのだろうか?いやでもさっき遠慮するって言ってたし……彼もまた燈梨やアークのように強者だ。何もしない、と言いたげな表情をしておきながら相手の隙を窺っている…ように見えてならない。先程の行動や言動から鶯に警戒も視線も意識も集中してしまう。紅葉は大鎌の柄を握りしめる。ふと、汗ばんだ事でまさかと思考がクリアになる。鶯に意識を集中させて、本当の狙いは燈梨じゃ?そう思った瞬間、紅葉は大鎌を自身の胸元に引き寄せた。その瞬間を待っていました、と云うように燈梨が一歩足を踏み出しただけで紅葉の目の前に迫った。カキン、と金属が交差する音と腕に伝わる強い衝撃に自分の判断が合っていたと認識する。


「そう、そうだ。疑え、そして感じろ」


燈梨はギリギリと紅葉の大鎌の刃を紅葉の首元に押し付けながらニヤニヤと笑う。紅葉は軽く呻き声を上げ、背後を確認する。背後は壁だ。紅葉は大鎌に注いでいた力を抜いた。途端、燈梨の二つの刃が紅葉の首元を狙って振りきられる。その寸前に態勢を低くし、片足を顔目掛けて突き上げる。燈梨がその一撃から逃れるように少し後退した。その隙間を利用し、素早く回転すると背後の壁に足を着け、力強く踏み出し、踏み台にする。跳躍したまま横を通りすぎ、大鎌を振りかざす。が、それよりも早く燈梨の武器が大鎌の攻撃を防ぎ、そこを軸にもう片方の武器が紅葉に襲いかかる。空中で体を捻り、間一髪でかわすと二つの武器を押し返し、態勢を立て直す。燈梨はこんなん余裕と言いたげに余裕綽々としており、鶯は本当に手を出す気がないのか、興味深そうに紅葉と燈梨の稽古を見つめている。と、燈梨が鶯に視線を送り、顎で後ろを指し示した。それに鶯は少し呆れたように肩を竦め、階段をゆっくりと降りて行った。アークの手助けにでも行ったのだろうか?それとも様子見?けれど、白桜だって強いのだ。そう思った自分に紅葉は我知らず、微笑んだ。


「僕と一騎討ちって事だね」

「嗚呼、そうかもしれんな。今からおれはあんたを本気で狩るつもりで行く。だから、あんたもその気で来いっ!!」

「っっ!」


燈梨から放たれた凄まじいオーラと殺気。それに紅葉は一瞬、たじろいた。嗚呼、でも、自分は強くなりたいから、だから!ぎゅっと柄を握り締め、気合いを入れる。燈梨は二刀流でしかも武器は刀。薙で慣れた刀と雛丸で慣れた二刀流のコンボだ。まるで自分が相手にしているのが二人のように感じて、紅葉を昂らせる。燈梨が一歩、足を踏み出した。来る、そう感じ取った紅葉は敢えて方向転換をした。上への階段を登り始めたのだ。一踏みで先程まで紅葉がいた場所に到達した燈梨の片足が方向転換し、近くの壁を思う切り蹴り、跳躍する。紅葉は二段飛ばしで階段を駆け上がりつつ、後方を見やる。燈梨が物凄い勢いで背後に迫っている。薙達が消えて行った階を通りすぎ、もう一階、もう二階と階数を上げて行く。それにつれて燈梨の速度もあがって行く。別の踊り場に辿り着き、もう一階上がろうと足を踏み出した瞬間、上段から二つの刃が落ちて来た。かわす暇など与えないとでも云うように燈梨の刃達は紅葉を容赦なく襲う。大鎌で防ぎ、片手を彼女の腹に向けて拳にして殴る。がそれに気づいた燈梨が瞬時に後退し、そこから回転斬りを放つ。片腕が無防備な状態だった紅葉を容赦ない、殺気と共に痛みが襲う。回転斬りが通りすぎたと思うのも束の間。燈梨は左の刀を手首の上で回し、逆手持ちにすると紅葉の脇腹を抉った。


「っっいっ!?」

「おれはあんたに危害を加えないとは一言も言ってないからな。狩られたくなければ、抗え」


燈梨がクスリと笑いながら言う。ヨロリと後ろによろめいた紅葉。痛みで汗が吹き出して来る。けれど、どうってことない。いつも通りじゃないか。なら。キッと真剣な表情で顔を上げ、燈梨を睨む。


「舐めないでよね!」

「おっ」


脇腹を抉った左手首を痛む腕で掴むとそのまま自分を軸にして吹っ飛ばす。壁に背中からぶつかる、と云うところで体を捻り、壁に足から着地を成功させる。紅葉が素早い瞬発力で燈梨に接近すると大鎌を振った。ガリガリッと壁に大きな爪痕が刻まれる。燈梨は壁を走り、跳躍。手摺に着地する。バランスを崩したところに紅葉の大鎌が迫る。それを頭上へ飛んでかわし、着地すると再び大鎌の攻撃が燈梨をすかさず襲う。その一撃をいまだ逆手持ちだった刀で進路を変えるように防ぐと紅葉が次の行動に移る前に大きく空いた大鎌のリーチに滑り込む。紅葉がしまった、と表情を歪めた。そんな紅葉と少し距離を取り、燈梨が足元に向かって武器を振った。さっきとは逆の状況。紅葉は振られた刃の上に軽く指先を着け、やり返したと言わんばかりの表情をする。が燈梨は取られた一振りを投げ捨て、もう一振りを勢い良く紅葉の目を狙って突く。間一髪、顔を背けてかわしたが首元に浅く線が滲んだ。紅葉は両手首で大鎌を弄ぶと頭上へ引っ張った。なにか来るなと瞬時に悟った燈梨。紅葉は頭上で大鎌を回す。とその大鎌が姿を消した。紅葉が大鎌を背中に隠したのだ。そして、背中でクルリと回転させ、脇から刃を向けた。後退し始めていた燈梨は驚いたように目を見開いた。


「うん、なるほどなるほど」


納得したようにうんうんと頷く燈梨。紅葉は素早く回転し、大鎌を燈梨の首筋に向けたまま、態勢を低くし、その足を刈る。バランスを崩した燈梨がいつの間にか近づいていた上への階段に倒れ込む。そこに頭上へやっていた大鎌を頭目掛けて振り下ろす。ガラガラと土煙が舞う。紅葉がよし、と嬉しそうに笑う。


「え!?」


が、背後からの気配に驚愕したように振り返りかけ、首筋に冷たいものが触った。土煙が晴れた前方を見ると燈梨はおらず、崩れかけた階段があるのみだ。


「うんうん、良いよ、良いけど、油断は駄目だ」

「…むぅ。でも、まだまだ行ける、よっ!」


背後にいるであろう燈梨に向かって回し蹴りを放つ。余裕と云った感じでかわされてしまったが、それでもまだまだ紅葉はやれた。傷が痛むがそれはいつものことだから。燈梨を見据え、大鎌を構える。そして、大きく跳躍した。


投稿数が六十じゃー。そーしーてー?鍛練開始!

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