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紅華~紅ノ華、赤ノ上二咲キテ~  作者: Riviy
第二陣 新たな意味
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第五話 新しい地を踏む意味



あっけらかんと、片割れはしていた。その事実に、驚きを隠せない。握られた()()()は、二度と離れる事はない、と云いたげに繋がれている。目の前の化け物は失笑している。それが余計に苛立たしい。それでも、片割れは真剣な表情だった。そうして、化け物達を嘲笑う。


「そんな事も理解できないなんて、哀れで、馬鹿だな」


見下す表情、蔑む表情。化け物達が怒りを露にする。片割れの手を握った。そして、走った。何処までも続く森の中。何処までも続く木々の中を。此処を嫌でも突っ切れば、八意やごころさんのところに着く。あそこは、あの『病』が発症してからいけ好かなくなっちゃったけど、それでも、助けてくれる。八意やごころさんやあの人がまとめて、率いてくれる。あそこは、きっと、化け物と『病』に犯された此処での唯一無二の安らぎの地。だから、急がなくちゃ。片割れが言ったように。片割れを、君を。


前方に化け物が回り込んで来た。案外速いな、とか内心思っちゃって。片割れに戦う能力はあるけれど……足手まといは嫌だなぁ……そう思っていた時だった。一体の化け物の上に何かが突然乗っかった。乗っかったと云うよりもぶつかった、とかの方が良い表現かもしれない。化け物はその重みで影に消えて行ってしまった。消えてしまった化け物の上にあったのは、地面に突き刺さった大きな鎌だった。


…*…


五色の光が晴れた時、目の前に広がっていたのはいつもの風景ではなかった。見渡す限り、木、木、木、木、木である。ちなみに頭上は木々のせいでほぼ見えないが、微かに見える場所があり、微かなオレンジ色の光が差し込んでいる事から夕方だと思われる。時間帯さえも違うのか、そう思いながら紅葉はクルンと回る。雛丸が紅葉と一緒になってぐるぐる、ぐるぐるとその場で回る。当然目が回る。


「ふぇ~」

「なにやってんだお主ら。バカか」


薙が心底呆れたと云う表情で二人の元にやって来る。白桜はニコニコと笑ったままである。気が済むまで回った紅葉は今度は物珍しそうに辺りを見渡す。


「で、此処どこ?」

「あーはいはい!白桜、あれ見せて」


紅葉の素直な問いに雛丸が手を挙げて答える。白桜が懐から幾つにも重なった紙の束を取り出す。どうなって入っていたのかと気になる量だが今はどうでも良い。その束を白桜は雛丸に手渡す。雛丸はそれを受け取り、お目当ての場所までページをペラペラと捲る。紅葉が気になったのか、雛丸の手元を覗き込む。それを白桜が弟の肩を掴んで止めた。


「?兄さん?」

「駄目ですよ紅葉。機密事項です」

「えー」


駄目駄目と、雛丸から遠ざける白桜に紅葉は抵抗して見たい見たい!と彼の肩越しに見ようとしていたが白桜の身長によって断念し、薙を振り返りながら頬を膨らませた。薙がドンマイ、と云うように彼の肩を叩いた。と、ペラペラ捲っていた雛丸の手が止まった。そして「あったよ~」と云う。お目当ての場所らしい。白桜がいまだに気になって雛丸の方へ行こうとする紅葉を制するのを横目に見ながら薙が訊く。


「で、此処は何処だ雛丸」

「うんとね、ボクたちがいた国…じゃなかった都が帝がいる地下ところの真上だったから、その真横にボクたちは移動したみたいだね。だから此処は『神妖界樂かみようかいらく』って云うところ。説明はしなくても名前分かる通りに神と妖が暮らす国だよ!」


雛丸がそう答えながら束を一つに重ねた。この世界は壁や海などで幾つもの国や都に分かれている。国、都と云うのは帝が決めた事である。世界共通の単語として使われており、簡単に言ってしまえば国と都の違いはそんなにない。細かくすれば、発展した文明による、と云ったところだろうか。そんなに深く考える必要はない、うん。白桜に雛丸が束を自然な動作で手渡すと彼も自然な動作で懐にしまった。本当によく入る。しかも外から見ても膨れていないので、中に入っているだなんて夢にも思わない。それを不思議そうに見ながら紅葉が問う。


「帝が言ってた異常はどうなの?」

「此処で活動してる『勇使』の情報が確かなら、原因と思わしき病だけは分かるよ」

「マジで!?」


紅葉が驚いたように雛丸を見ると雛丸は明らかにドヤ顔を決めていた。薙がさっさとしろと手で促す。それに雛丸は悪戯っ子のように口元を隠して笑う。


「薙は要らない情報は覚えないもんねぇ」

「妾はそう云う主義でな。てか早くしろ」

「はいはい。『奇病・宝石凍化ほうせきとうか』。肌が宝石のように固くなり、最終的には命をも凍らせる奇病だよ。これが異変(化け物)の原因なんじゃないかって、活動してる『勇使』は考えてるみたいだよ」


雛丸の言葉に紅葉は震え上がった。そして、両腕で自分を抱き締めた。肌が宝石のようになって、最終的には命を失ってしまう……自分はそんなのにかかりたくない。雛丸の情報に白桜が「あの」と軽く声をあげた。それに一番最初に気づいたのは紅葉で首を傾げながら兄を見上げる。


「兄さん、どうしたの?」

「いえ……雛様、宜しいですか?」

「ん、なぁ~に白桜」


白桜が少し困ったような表情で言うと雛丸は紅葉の腕に抱きつくようにしながら言った。紅葉の腕に抱きつくようにして、白桜の方に軽く身を乗り出す。雛丸に許可をもらった白桜が気になった事を告げる。


「病が原因と仰られておりますが、その病が深刻化した病人が異変を引き起こす(化け物となる)、と云うことでしょうか?」


白桜の疑問に紅葉と雛丸はん?と顔を見合わせて首を傾げた。何か変な事を言っただろうかと不安そうな白桜とは裏腹に、薙は彼の言いたい事が理解出来たらしく声をあげた。


「あーそう云うことか。帝が言う異変は、狂暴な化け物の事だもんな……病が異変と本当に関係しているのかは、この国の奴に聞かなきゃわかんねぇだろうな。関係してたとしてもその原因もだし」

「この後の方針決まったね!」


紅葉が薙の言葉の続きを言う。この後の方針が決まったならば、後は人を探すだけだ。何処へ行こうかと全員が全員、進行方向を考えた。


書き溜めていたのが多くなっているので二話ずつ投稿にしようと思っています!

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