表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紅華~紅ノ華、赤ノ上二咲キテ~  作者: Riviy
第五陣 隠れた実力者
55/135

第五十一話 その知り合い、何者?



「あのね、此処にボクたちの知り合いがいるの」

「「………はい?/え?」」


突然の雛丸の告白に白桜も紅葉も面食らった。その二人の困惑した表情に雛丸はどう説明しようかと呻き声を漏らす。その様子を見ていた薙が腰に片手を当てて言う。


「前に一緒に仕事した知り合いがこの国、『創造華そうぞうか』に移住したんだ。どういう方法で移住したかは知らねぇがな。あ、移住って云うよりも帰郷した、か」

「な、なーんだそういうことか~てっきり大きな事件にでも巻き込まれてたのかと」

「んなわけあるか」


薙の言葉に紅葉が胸を撫で下ろすと彼女からそうツッコミが飛ぶ。けれど、二人の表情は知り合いがいると云うのに暗い。


「どうされました?」

「んー……此処、廃墟になっちゃってるから大丈夫かなーって」


思わずそう白桜が問えば雛丸は心配そうに顔を歪めた。知り合いがどのような環境下からこちらへ移動してきたかは知らないが、こんな状況だ。心配しない方が可笑しい。とりあえず、今にも崩れそうな廃教会から出る事にした。外に出て、彼らは再び息を呑んだ。廃墟、廃墟廃墟廃墟廃墟廃墟廃墟。廃墟だらけだった。微かに草が生えているところもあるがその命は明らかに短い。以前は道だったのだろう場所にはなにかを擦りつけたような変色したものが延々と延びている。この状況には薙も雛丸も驚きを隠せなかったらしく、軽い声が響いた。


「あ、でも空はキレイ!」


ふと見上げた空はこの凄まじい現状など見えていないと云うように晴れやかで澄みきっていた。雲一つない晴天で太陽は自身を大きく主張することなく、控えめに輝いている。その時、足音が響いた。トトト、トトトと駆けている。全員が一斉に警戒し、武器に手を伸ばしかけた。ドォン、と云う鈍い音がした方向を振り返れば、そこにあったのは巨大なハンマーだった。なんでハンマーが?そう頭に浮かんだ疑問はそのハンマーの上空を歩くように飛ぶ一人の少女によって掻き消された。少女は満面の笑みで両腕を伸ばしながら叫ぶ。


「薙姉!雛姉!久しぶりぃいいいいい!!」

「え?!」

「あれ!?」


そのキラキラとした瞳は明らかに薙と雛丸のみを写していた。驚く薙と少女と同じように嬉しそうに微笑む雛丸。少女が勢い良く薙と雛丸に向かって飛び込んだ。勢い余って二人が少女を受け止め、後方へ倒れ込んだ。


「薙ちゃん!?」

「雛様!?」


紅葉と白桜が慌てて駆け寄ると薙が大丈夫だと片手を挙げた。怪我はなさそうだ。後方が瓦礫とかじゃなくて本当に良かった。その事に兄弟は安心し、顔を見合わせた。二人の胸に飛び込んだ少女は兄弟の心情など知らん顔で嬉しそうに二人の手を取りながらキャッキャッと声をあげている。薙がそんな少女を雛丸に預け、紅葉に助け起こしてもらう。雛丸も立ち上がりたいようで少女に「立たせて!」と声をあげる。少女は「ごめんなさい!」と素早い動きで雛丸の上から退いた。白桜が心配そうに近づくと雛丸はバネのように起き上がり、大丈夫だと笑った。


「ねぇ薙ちゃん、もしかして」

「ん?嗚呼、そうだ。だg「待てって、言ってんだろ!!」ほら来た」


薙がニヒヒと愉快そうに笑い、クイッと顎で示した。その方向へ顔を向けると少女がやって来た方から巨大なハンマーを片手に持った男性がやって来ていた。薙の言い様から彼も知り合いなのだろう。しかし、少女の勢いについて来れなかったのか、額からは汗が噴き出し、肩は大きく上下に動いている。男性は少女のもとまでヨロヨロとした、如何にも疲れてますと言った足取りで近づくと片手に無理矢理ハンマーを握らせた。当然、少女は持ちきれず、ハンマーがコンクリートに沈み込むだろうと紅葉と白桜は思った。だが、その逆だった。少女は意図も簡単にハンマーを持っていた。


「………あのハンマー、軽いのですか?」

「多分軽いよー衝撃はその分大きくなるように設計されてるらしいけど」

「謎ですね」

「だよね!」


白桜の思わず出た疑問に雛丸が答える。雛丸もだよねーと白桜を見上げた。ハンマーを渡された少女は可愛らしく頬を膨らませながら男性に抗議を入れる。男性はポケットからタバコとライターを取り出すと火をつけ、タバコを吹かす。


夜弥よみ兄が遅いだけでしょー?」

「バッカ。沖田おきたのスピードが早いんだよ。ちっとは制限かけろ。年食った時、足にガタが来るぞ」

「大丈夫だもーん。そうならないもーん」

「後で泣いても知らんからな」

「大丈夫ですぅー!」

「ん?沖田?」


二人の言い合いの中に気になる単語を発見した紅葉がおうむ返しのように呟く。薙を見て、驚いたように首を傾げる。それは白桜も同じようで目をぱちくりさせている。一方、彼らの知り合いらしき薙と雛丸はどうかしたかと不思議そうにしている。と、自分達にとっては当たり前だが、彼らは初めてだったかと薙は納得したように思い出した。


「沖田ってあのs「関係ないぞ。関係ねぇからな?俺達も」…あ、そぉ?」

「てか先に言っとけよ久しぶり」

「今思い出した久しぶり」


紅葉の言葉を遮るように男性が一刀両断し、腰に片手を当てていた薙に言う。それと同時に少女の頭をこれでもかこれでもかと押す。少女は「背が縮むー!」と精一杯抵抗しているが男性の力には勝てない。だが男性は手加減しているようでケラケラと先程の仕返しだと言わんばかりに愉快そうに笑っている。関係ないのか。え、俺()もって?新たな疑問に困惑する紅葉を薙は愉快そうに見ていた。白桜はなんとなく理解出来たのか少し怪訝そうにしていた。


「え、えーと、薙ちゃんと雛丸の知り合いでOK?」

「うん!そうだよ!少女こっち沖田おきた 雨近うこんで、男性そっち近藤こんどう夜弥よみ!」

「二人共、こっちは紅葉と白桜だ」

「宜しく!」


薙と雛丸にそれぞれ紹介され、紅葉が挨拶をし、白桜が軽く頭を下げる。男性はタバコを吹かして軽く手を振り、少女はにっこりと笑い返した。


名前から見ても分かる。うん。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ