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紅華~紅ノ華、赤ノ上二咲キテ~  作者: Riviy
第四陣 カクレンボ
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第四十九話 不穏



結論から云えば、案外大丈夫だった、うん。あの二人から逃れるように木々が生え、少々入り組んだ脇道に滑り込んだが、いくら待っても少女も男性も来なかった。


「え、本当に撤退した?」

「そんなわけないでしょー?……多分」


予想外の状況に驚きが隠せない。ただの猶予を与えられていると思っていたのは勘違いだったのか?誰もがそう思った。けれど、これで友人の大和達への被害は絶対にないであろう。そう思っていた時だった。大和達に被害が絶対及ばないであろう場所まで移動した瞬間、少女と男性が突然現れたのだ。二人も無用な人は巻き込みたくないのか、はたまた標的は彼らだけだから気にもしていないのか。兎に角、好都合過ぎる。


「闘わないに限る!今は絶対に嫌だ!」

「薙様に賛同致します!」

「見事なフラグ回収!」

「いや予想は誰でもできてたけどね!」


物凄い勢いで彼らに迫ってくる二人から大急ぎで逃げ惑う。今のさっきで中傷だったのだ。今やったら確実に重症になって色々ヤバい。今の紅葉達には大和達に被害が及ばない事が最優先だった。そんな彼らの心情など知った事かと標的狙って少女と男性が刃物を向ける。長剣を紅葉が、脇差を白桜が辛うじて防ぎ、弾き飛ばす。


「薙ちゃん!」

「わかってる!」


紅葉が切羽つまった声で後方を振り返りながら叫ぶ。弾き飛ばされた二人が態勢を立て直し、こちらに向かって来る。紅葉と白桜が武器を構え、二人の攻撃に備える。大きく振りかぶってきた少女の一撃。少女とは思えないほどの力が紅葉の持つ大鎌から彼の腕へと振動を伝える。その強さに改めて目の前にいるのは最強と呼ばれても無理はない相方なのだと気づく。横目に白桜を確認すると男性がいなかった。驚きつつも少女を弾く。その時、白桜の背後に男性が突如として現れた。白桜が瞬時に気付き、扇を振った。それでも気づいたのは脇差が白桜の首筋に刺さる、と思われた瞬間でほぼ間一髪だった。少女の位置を確認し、紅葉は大鎌の柄の先を力を籠めていく男性に向かって突く。男性が紙一重で紅葉の一撃を顔を横にずらしただけで避けると頭上へ飛び、木の枝を掴み、少女の元へと一旦後退した。


「兄さん、無事!?」

「ええ、なんとか。助かりました紅葉」


白桜の無事を確認し、兄弟二人は時間稼ぎのために、相方を守るために武器を構える。木々の根っこが彼らの足を取る。こんな足場だ。薙の固有能力の発動が少し遅くなるのは無理もない。それでも、まだ自分は弱い。分かってる事であった。けれど、今回はそれを浮き彫りにさせられた気がしてならない。あの二人によって。唇を噛み締めながら呻くように呟いた。


「……強ければ…」

「そんな事、分かりませんよ」

「!」


紅葉の呟きに白桜は吐き捨てるように言い放った。その言葉に紅葉が彼を振り返った。その瞳に宿るは()()()と同じ。失いたくないものは、確かに存在する。それが少し力になって、弱くなる気がした。


「紅葉!」

「白桜!」


その時、背後から薙と雛丸の声が聞こえた。準備が終わったのか。紅葉が横目で薙と雛丸を振り返った。その時、視界にあるものがうつった。薙の足元に仄かな光が現れ、五芒星を描く方が早かったか。それとも少女の長剣が紅葉の大鎌をかすった方が早かったか。今となっては分からない。白桜が紅葉(自分)を抱き締めるようにして後方へ引っ張る。背後で薙と雛丸が「早く!」と声をあげている。迫る少女と男性の背後に()()がいた。あの時と同じ、()()、悪寒に紅葉は我知らず、白桜の服を握りしめた。薙や雛丸は気づいていない。けれど、白桜は…いや恐らく白桜もだろう。紅葉の心配を余所に彼らは光に包まれて消えた。勢い余って彼らがつい先程までいたところに顔から突っ込んでしまった少女は、悔しそうに、それでいて愉しそうに嗤う。


「先回り」

「オッケー♪」


男性の冷静な言葉に少女はテンション高めに答えた。そして二人の姿は、突然消えた。彼らのように。いや、彼らとは()()()()。残されたのは多くの木々のみ。しかしその木々はまるで怯えるようにざわめく。ざわざわと、「助けて」「逃げて」「早く」と云うように。警告するように助言するように。と、突然、木々がざわめくのを止めた。何故、突然止めたのか。きっと分かりっこない。だが、これだけは確かだった。微かに木々の隙間に、()()()()()()()()が残っていた、その事だけは。



とりあえず今日でこの章を終わらせます。

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