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紅華~紅ノ華、赤ノ上二咲キテ~  作者: Riviy
第四陣 カクレンボ
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第四十七話 その動き、危険か



真っ黒な絨毯状態であった『眼』を殲滅し終わった大和、侑氷、京、千がちょうどタイミング良く後退してきた紅葉達と合流した。残りは一、ニ争う最強の少女と男性だけだ。疲労困憊な紅葉達に対し、二人は軽傷で余裕すら感じる。紅葉の片腕に鷲が止まる。


「あ、紅葉出したんだ」

「うん。()()にはあんまし効果がなかったんだけどね」


雛丸が鷲の事を云うと紅葉は苦笑した。鷲も「申し訳ない」と言いたげに表情を歪め、バサッと羽を広げた。


()()とは、言い切れませんよ?」

「はは、そうだね」


白桜がそう言えば、紅葉が嬉しそうに笑い、薙がなるほどなと頷く。警戒状態と緊迫感が彼らを包む。これだけの疲労困憊状態であの二人に勝てる確率なんてたかが知れている。あちらは軽傷、こちらは大和達を抜かせば中傷だ。出血多量で先にこちらが事切れる方が格段に早い。そう考えた薙がその考えを視線で雛丸に伝える。その動きに紅葉と白桜も把握する。つまり、此処は撤退するが吉!


「っあ、馬鹿者!戻らんか!」

「え?!」

「!?」


その時、京と千の兄弟が二人に向かって駆け出した。いち早くそれに気づいた侑氷が叫ぶが時既に遅し。少女と男性は標的をこちらに突進してくる兄弟に変更した。太刀と大太刀が少女と男性の首を狙って振られる。だがその一撃を二人は軽々とかわし、無防備となった兄弟へ逆に刃を向けた。まさかこれほどまでの瞬発力だとは思っていなかったのだろう。兄弟揃って目を見開いていた。今から飛び出しても間に合わない。そう踏んだ、いや既に確定している。雛丸と侑氷が白桜と大和を振り返るよりも早く、二人が叫んだ。


「〈絶対の壁〉!」

「〈三つの声(ボイス)〉!」


兄弟二人を巨大な石の壁と半透明の黒い膜が囲み、二人を弾き飛ばした。その隙に薙と侑氷が兄弟達を引っ張り、茫然とする兄弟達を無理矢理後退させる。そのタイミングを見計らって紅葉が腕に止まっていた鷲を弾かれ、後方に着地する二人に向かって飛ばした。鷲は素早くも美しく、紅葉の指示の元、飛んでいく。着地した二人の頭上にくるとクルンと一回転。途端、眩いほどの光と凄まじい煙が二人を包んだ。咳き込む音が辛うじて響く。その光と煙から逃れるように少女と男性は大きく跳躍した。そして、キッと紅葉達を睨み付けると晴れかける煙をその身に巻き付けながら姿を消した。恐らく、撤退したわけではない。これは()()を与えられたのだ。まぁとりあえず、今は大丈夫だろう。軽く、たまっていたものを吐き出すようなため息が紅葉からもれる。それを察したかのようにヒラヒラと紅葉の頭上から紙が落ちてくる。その紙をじゃれる猫のようにキャッチした雛丸が紅葉に「はい」と渡した。と、薙と侑氷に兄弟達が引っ張られて来た。戻ってきた兄弟達の頭を鬼の形相で大和が叩いた。早すぎて残像しか見えなかった。


「いっ?!」

「痛い!」

「馬鹿野郎共が!白桜達が最強(危険)だっつってんのになんで出て行った?!俺達がいなかったら死んでたぞ?!」


そう、大和の言う通りだ。白桜と大和の能力があったから良かったものの、もしいなかった場合、あの一撃を防げていたかと云うと可能性は低い。だって紅葉達でさえ、あの傷なのだ。実力を付け始めたばかりの京と千では難しい。千が叩かれた頭を軽く撫でながら大太刀を納め、言う。


「知ってるよそんな事。だから、行ってみたかったんだよ。ね、兄ちゃん」

「はい。助けてもらったと云うのもあるんですが、私達なりのお礼……と云うか…」


千が少し胸を張って自慢げに、京が少し苦笑しながら言う。兄弟達の言い分に大和は一瞬、は?と顔をしかめたが、その言い分に気づいたのはまさかの侑氷だった。袖口で口元を隠し、心底驚いたと云うように笑う。


「利用か。自らをこやつらのために利用したのか。ない頭でよくそこまで考えたものよのぉ」

「はは、ゆーくん酷いよ!でも、まぁそうとも言えるね……もう、()()()しないで()()のは、イヤだから…っ!」


千が震える声で言い、俯く。その震え様が見ていられなかったのか、兄である京が千の肩を抱いた。京と千にとって一番上の兄と親友をなにもせずに、ノコノコと自ら手を離してしまった事を悔やんでいたようだ。自分達がもう少し強かったら着いて行って状況を知れたかもしれない。強かったら、彼らは部隊へ行くことも、大和と侑氷が目的を差し置いて此処に残る事もなかったかもしれない。そう思えて千はならなかった。けれど、自分達が強くなかったら紅葉達と出会えなかった事も事実で。嗚呼、オレの頭はそんな難しい事を考えれるようには出来てないのに!と、京と千を影が覆った。何事だと兄弟二人が顔を上げるとそこにいたのは薙と紅葉だった。二人共、顔が悲しそうに歪んでいた。


「紅葉…?」

「……だからって、だからってそんなん、僕達が、君の兄さんや親友が望んでると思う?!僕達だって、彼らだって自らの意志で進んでる。君達の意志を無下にするわけじゃないけど、けど…自分の事もっと大切にしてよ…」

「!う、あ…ごめんね紅葉…ごめん」


今にも泣き出しそうな紅葉を見て千はハッとした。自分だけを見ていて周りまで見えていなかった。大和の言う通り、此処で死んでしまったら()()()()。『(化け物)』がいると云うことはそう云う事なのだ。自分はそれを知っていながら目を逸らしていた。千が両手を紅葉に伸ばす。震えるその手を紅葉が掴む。謝り続けながらも恐怖を思い出したのか泣き出す千。そんな千に胸を貸しながら紅葉は薙を見上げた。彼女はクスリと笑っていた。


「怖いのは、当たり前だから」


そう、自分がされた時のように優しく声をかけると千は頷いた。涙を拭いて二人は笑い合った。


「紅葉の言葉にはお主も入っているからな」

「え」


少し成長した弟を見ていた京に薙が言った。呆けたような声をあげた京を見上げ、薙は云う。


「妾達は、いつも危険と隣合わせだ。このご時世、そうなってない方が貴重。お主らはまだ、成長段階。それは妾達も同じ事」

「……ふふ、そうですね、そうですよね。助けてくれた恩人に、此処まで言われるなんて自分達の不甲斐なさを実感します」


薙の言葉に京はそう言って笑った。そして、すぐに悲しそうに表情を萎めた。もう、大丈夫と笑い合う紅葉と千を見て、感慨深げに言う。


「……だから、兄さんも彼も…」


その言葉に薙は何も答えなかった。


そっか、奇数日投稿にすると二日連続ってのもあるんですね!←忘れてた

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