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紅華~紅ノ華、赤ノ上二咲キテ~  作者: Riviy
第四陣 カクレンボ
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第四十四話 実力者の絆


自分に向かって突きつけられた、鋭い刃物をバク宙しながらかわし、背後の柱に両足をつける侑氷。ブンッと刃物を振る『眼』の攻撃を再び、『眼』の後方へ跳躍してかわすと侑氷は槍を突き刺した。柱に縫い付けられた『眼』が侑氷を横目で睨み付ける。それを鼻で嘲笑い、少し後方へステップを踏むと『眼』の頭目掛けて回し蹴りを放った。槍を容赦なく抜けば、柱に寄りかかるようにして『眼』が倒れていく。侑氷はその亡骸を見下ろしている、と背後から気配がした。侑氷が背後を振り返る事なく、横へずれるとそこに大きく音を響かせて、大斧が現れた。地面に刻まれた亀裂は重い一撃にもし当たったとしたら、一貫の終わりだろう。侑氷は槍を構え直し、地面から大斧を引き抜こうとしている『眼』に向かって跳躍した。胴体が大きい『眼』の腕へ飛び乗り、肩へと駆けると片足に力を入れ、跳躍。円を描くように『眼』の頭へと降下し、槍を突き刺す。が、胴体が大きいためか槍が上手い具合に突き刺さらない。一瞬にしてこれは危ないと感じた侑氷が頭から飛び降りるとそれをすかさず見つけた『眼』が飛び降りた侑氷に向かって片手を伸ばす。横目にそれを確認した侑氷は頭の上で槍を回し、その手を引っ込めさせる。その時、突然侑氷の腹に強い衝撃と痛みが走った。強い衝撃に軽く吹っ飛ばされ、ズザザザと後退する。痛む腹に手をやるとヌルッとしたものが手を覆った。血だった。ハッと顔を上げれば大斧の『眼』の死角を補うように少し小さな『眼』がナイフを得意気に回していた。その事実に侑氷は自分を嘲笑するように、相手を嘲笑するように口角を上げた。


「ハッ、舐められたものよのぉ。じゃが」


バッと一踏みで跳躍すると低い態勢のまま小さい『眼』の背後に素早く回り込むとその首筋目掛けて槍を横に振った。が、『眼』は間一髪でしゃがんでその素早い一撃をかわした。そしてそのまま侑氷の足に向かってナイフを振り回した。だが、こちらも反撃だと言わんばかりに侑氷は素早く槍を足元に振るとナイフを防ぎ、弾く。『眼』が弾かれた衝撃で後ろへよろめいた。態勢を立て直す『眼』の背後に刃物が気配もなく迫る。それに気づいた時は、もう遅い。背後を振り返ろうとしたがそれは叶わなかった。首筋辺りから真っ二つになったのだ。ゆっくりと侑氷の方へ倒れてくる『眼』の後ろにいたのは薙刀を構えた大和だった。大和と侑氷は目を合わせ、軽く頷き合う。


「侑氷、あのでっかいの倒すよ」

「分かっておる」


大斧が二人を狙って振り下ろされる。二人がそれぞれ後方へ跳躍し、弾け飛ぶ石や土の破片から身を守る。『眼』の数は少なくなっている。大和は後方へ跳躍し、その要領を使い、頭上へ大きく飛ぶ。『眼』よりも高い位置へ跳躍し、再び振り上げかけられている大斧を持つ『眼』の腕目掛けて片手を伸ばしながら叫ぶ。


「〈三つの声(ボイス)〉!」


ブオン、と鈍い音がして『眼』の腕を半透明の黒い膜が丸い形を描いて包む。その円は手首に近づくに連れて小さくなっており、数は三つ。大和の片腕にも『眼』と同じものがついている。落下していく大和に向かって大斧を振り上げていた『眼』の腕は突然重たくなったのか、地面にめり込んだ。押しても引いても全く動かない。大和の固有能力は結界であるが、それを応用し『眼』への拘束具としたのだ。結果、『眼』の腕には相当の効力=重さがかかっているのだ。


そこへ落下つつある大和が『眼』の無表情な顔面に迫る。薙刀を大きく振りかぶり、その顔面を切りつけた。残った片手を大和に向かって伸ばす。が、その腕へ侑氷が素早く駆け上がり、範囲が限られている槍を頭の上で手首の上で軽く弄ぶと槍を突き刺した。そしてそのまま槍を下へスライドさせて降りて行く。腕を駆け巡る痛みに『眼』が悲鳴をあげる。地面に着地した侑氷が容赦なく槍を抜き放つ。そこへ大和もやって来て二人は軽く視線を交わすと再び大きく跳躍する。『眼』が痛み、骨のようなものが見え隠れする腕を懸命に振り上げ、とてつもない速さで振り回した。その驚愕の一撃は大和を襲い、彼は吹っ飛ばされ、中庭を転がった。


「大和!」

「大丈夫、っ」


痛む体を動かし、片膝をつきながら大和が云う。体を強く打ち付けたせいか、腕の円が微かに瞬いた。そのため、一瞬でも軽くなった腕を『眼』は逃さなかった。『眼』は一瞬の隙に大斧を大和に向かって勢い良く振り下ろした。体中に微かな痛みが駆け巡り、即座に対応できなかった大和。苦痛の表情をしながら薙刀を痛む体で構える。そんな彼と大斧の間に侑氷が凄まじい勢いで滑り込むと槍を横にして防ぐ。それと同時に『眼』の腕がまた一気に重くなる。重くなった大斧に侑氷の腕が悲鳴を上げ、腹の傷が痛む。とその時、肩を背後から引っ張られた。防いでいたものがなくなった大斧はズドン、と音と土煙を上げて再び地面と出会った。土煙の中、侑氷は駆けて行く大和のその顔に浮かんだ表情にニィと口角を上げた。


「決着つけようぜ侑氷!」

「はっ。言われるまでもない。すでにそのつもりじゃ!」


駆けて行く大和が侑氷の頭を通り様に優しく撫でた。侑氷も大和のように駆けて行く。土煙を利用して二人は『眼』の背後に回り込む。と二人同時に足元を切り刻んだ。スパッと切られたため、後方へ『眼』が態勢を崩していく。押し潰される前に前方に回り込み、大和が能力を解除する。大和と『眼』の腕にあった円が消え、突然軽くなった腕が宙を舞う。大斧を蹴り上げる侑氷。そしてそのまま倒れ行く『眼』の心臓目掛けて大和が、片目だけになった目を目掛けて侑氷が武器を振った。見事命中し、『眼』は動きを止めた。すると徐々にその巨体が縮んでいき、二人が慌てて退避する。二人が退避し、『眼』を振り返るとそこに巨体はなく、普通、人間と同じ大きさの『眼』が横たわっていた。


「侑氷」


大和が彼を呼ぶ。二人は何も言わずに手首を軽く交差させた。大和は心配そうに紅葉達へ、侑氷は兄弟達へと視線を向けた。けれど、きっと大丈夫。


「俺達が認めた人材なんだから」


そう自身に向かって呟くように言ったその言葉はとても力強かった。それに侑氷も力強く頷いた。


とりあえず此処までー

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