表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紅華~紅ノ華、赤ノ上二咲キテ~  作者: Riviy
第三陣 事件、勃発
21/135

第十九話 四人の喜び、喜びの笑み



宿屋で朝食を済ませた一行は街に繰り出す事にした。紅葉が心配だったため、情報収集にも原因探しにも赴かなかったと云う。それを聞いて紅葉は少し申し訳なく思った。宿屋の両開きの扉を開けるとそこに広がっていたのは人の群れと賑わう街だった。


「賑わってるねー!」

「あ、紅葉!あれ、可愛い!」

「あ、ホントだ!」


可愛いものを見つけた雛丸が紅葉の腕を取って、二人してその店目指して人混みをずいずい進んで行く。それを呆れたように薙がため息をつきながら言った。


「女子か」

「ふふ、まぁ良いではありませんか?此処には多くのモノが揃っております。これから、過酷を極める事もございます。今だけでも、あのように楽しまれても良いでしょう」


楽しそうな二人を見つめて、白桜が云う。確かにこの後、過酷を極める事もあるだろう。一つ目の時のように簡単に行って、友人もできるような一石二鳥がこの後、何度も続くとは限らない。白桜の云うことはある意味正論かもしれない。薙はチラリと彼を見上げた。その拍子に彼の桜の髪飾りが目に止まった。


「お主は?お主も紅葉や雛丸みたいに小物、見ても良いんじゃねぇか?」


ある店でキャッキャッと楽しそうに商品を見ている二人を顎で示しながら薙が云う。それに白桜はキョトン、とした表情の後、柔らかく笑った。その笑みの意味が分からなくて薙は面食らった。と、紅葉がこちらに向かって大きく手を振っている。こっちに来て!と云う事らしい。白桜が何気なく彼女に手を差し出した。それを薙は再び面食らったように凝視していたが、ゆっくりとその手に自分の手を置いた。白桜はそのまま人混みを掻き分けて二人の元に移動した。紅葉と雛丸が見ていたのは薙の云うように小物だった。と云ってもアクセサリーが多いが。少し斜めに設置されたテーブルの上には可愛らしい小物から格好いい小物まで所狭しと並んでいる。やって来た二人に見せるように紅葉がある小物を指差す。


「ねぇ、これ、可愛くない?」


紅葉が指差したのはアクアマリンとサファイアで小さな雪の結晶を作ったネックレスだった。装飾はその雪の結晶だけでシンプルだが、そのシンプルさがかえってポイントになっている。薙は白桜の手から手を外し、紅葉が言うネックレスを見る。見ている時に自分のアクアマリンのネックレスを触っていたことに紅葉が気付き、可笑しそうに笑った。


「ほぼ妾のと同じだろ?」

「違うよ薙ちゃん!これ、サファイア使ってて雪だよ?!」

「同じ」

「違う!」


そんなよくわからない言い争いを繰り広げる横で白桜があるものを手に取った。雛丸が「なになに?」と興味深げに彼の手元を覗き込む。白桜が手に取ったのは空色の小さな球体の中に細かくも美しい雛鳥が彫られている髪留めだった。紐がついているので、髪を縛ってもいい。それを見て雛丸が声を上げる。


「可愛いー!白桜ってセンス良いよね」

「ありがとうございます。しかしこれは」

「?」


そう言って、白桜はその髪留めを隣に並んでいた雛丸の髪に軽く当てた。空色と髪色とが可愛いらしく合わさって、雛丸の髪に小さな雛鳥が止まっているようである。白桜はうん、と自分の目に狂いはなかったと嬉しそうに笑いながら言う。


「やはり、雛様にお似合いですね。雛様の髪色と合っています」

「…そ、そう?」

「はい」

「へへ」


褒めてくれたのが嬉しいのか、雛丸が満面の笑みをもらす。ネックレスで言い争っていた二人はその会話に言い争う気力を奪われた。紅葉は他のよさそうな小物を見つけては薙に報告して一刀両断され、時たまに褒められ。雛丸と白桜も似たような事をしていた。そのお店の人は彼らを微笑ましい表情で見て和んでいた。可愛らしいご一行様ですねぇ…と思ってたとか思ってなかったとか。


「なんか買うのか?」


薙がそう紅葉に聞くと、紅葉はたまたま手に持っていたルビーであろうものをひし形に加工したイヤリングを見、テーブルに戻した。今の今までやれこれ可愛いやら、やれこれ格好いいやらと小物を物色していた紅葉が商品を戻したのだ。薙は購入するつもりで物色していると思っていたので少し面食らった。紅葉は驚いている薙を振り返って笑う。


「見てるだけでも楽しいし。それにお金ないでしょ?」

「お金の心配は要らないと思いますが?」

「だってさー通貨違うかもじゃん!?」


横から白桜がそう言うと紅葉がそう反論する。確かに世界共通で同じ通貨が使われている可能性は低い。そこまで考えていたのかと薙は思いながら、一度懐を探った。金はあるにはある。しかし…そう考えていると白桜に薦められたアクセサリーを少し残念そうに雛丸がテーブルに戻した。雛丸の表情に白桜も悲しくなったのか、お店の人に問う。


「お尋ねしますが、通貨は?」

「通貨?あんたら旅人かい?だったら困ってるのも頷けるがなぁ……此処、『シーリィー』の通貨はガラトだよ。他の街じゃあ物々交換もあるらしいがな」

「そう、ですか。ありがとうございます」


白桜の問いにお店の人はそう快く答えてくれた。とりあえず、旅人と云うことにしておこう。移動しているので間違っているわけではないので否定しない。この国は総面積は不明だが一番大きいと云うらしいし。国や都ごとに商品の売買は異なる。お店の人が言ったような物々交換のように。ガラトは紅葉達がいた国とは違う通貨らしい。それを聞き、ガックリと雛丸が肩を落とす。それを励ますように白桜が雛丸の頭を優しく撫でる。薙も残念だと云うように懐から手を抜く。お店の人も彼らが旅人だからしょうがないかと肩を落とした。どうにかすれば此処ので通貨を稼ぐ事も可能だろうが、そこまでやる余裕はない。


「しょうがないね。行く?」

「そうだな。雛丸、白桜、行くぞ」

「はーい……」

「そのように落ち込まないでください。またの機会にでも致しましょう」


お店の人に軽く頭を下げながら、彼らはその店から離れる。何処に行くと云う目的もないが、これだけ大きな街だ。情報を売って生計を立てている人くらいいそうだ。彼らはそう考え、少し人が減った通りをとりあえず東に向けて歩いた。


嗚呼~この子達が可愛すぎます~もうほとんど自分の好きなものを詰め込んだと云っても過言ではありません(どやぁ)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ