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紅華~紅ノ華、赤ノ上二咲キテ~  作者: Riviy
第二陣 新たな意味
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第十六話 異変との攻防戦弐



阿形が雛丸と白桜の助太刀に行った頃には、化け物の蜘蛛の足が数本、消えていた。雛丸が二つの刃を携えながら顔を覆う化け物に向かって駆ける。雛丸の前に白桜に顔面を攻撃され、片目を潰されていたのだ。だが化け物は雛丸の動きが読めたと言わんばかりに顔を覆っていない片手から蜘蛛の糸を放つ。それを片手のナイフで絡め取り、そのまま駆ける。驚く化け物の背後から白桜が迫る。扇を無防備な首筋に当て、横に引いた。が、化け物の首は繋がったままだった。途端、背中の蜘蛛の足が白桜を捕らえようと蠢き出す。白桜はその足から逃れるように雛丸が迫って来ている前方に回り込む。そして全ての蜘蛛の足を白桜に向ける。四本となった足の切っ先を白桜に向けて突き刺しながら、片手から放った糸を回収する。白桜は切っ先が尖った足を二つの扇で弾き、防ぎ、かわしていく。と、化け物の動きが止まった。人間の腕であった片腕が突然消えたのだ。化け物が横目に確認するとその片腕は糸を回収していた方だった。驚く化け物の残った目がその正体を捕らえた。白桜が前方に回って来た事で視界から外れた雛丸だった。白桜が化け物の顎目掛けて足蹴りを放つ。途端に化け物の視界が歪んだ。その隙に雛丸が残った人間の腕を切り落とす。切り落とされた腕は影に消えていく。


逸っていた顔を前方に戻し、化け物が蜘蛛の足を動かす。そこにいたのは白桜でも雛丸でもなく、阿形だった。新手の登場に化け物は心底驚いたようで残った片目が大きく見開く。阿形が悪戯っ子のように笑い、驚く化け物の腹に向かって回し蹴りを放つ。前のめりになった化け物の背中にある蜘蛛の足が阿形を捕らえようと蠢く。後退しようとした阿形の服に蜘蛛の足が貫き、地面に固定する。慌てる阿形に向かって残った蜘蛛の足が迫る。が、笑ったのは、阿形だった。


「〈分身攻撃〉」


途端、誰かが化け物の後頭部を蹴った。グルン、と残った目が背後を睨み付ける。がそこには誰もいない。心底不思議そうな化け物の蜘蛛の足に雛丸が攻撃を仕掛ける。阿形を捕らえていた蜘蛛の足に短刀を突き刺し、そして横に引く。先に影に返した足よりも固いらしく、切り払うことは出来なかった。それでも刃のように尖った切っ先を欠けさせる事は出来た。阿形と共に後方に跳躍すると、化け物が逃がすかと言わんばかりに蜘蛛の足を大きく広げ、後方に飛ぶ二人を捕らえようと迫り来る。阿形の目に蜘蛛の足が突き刺さりそうになる、が雛丸が彼の手を引っ張って自身の背後に隠すと二つの刃物を交差させ、防ぐ。阿形が雛丸の背後から抜け出し攻撃しようと足に力を入れた。


「あ!ダメだよ!」

「は?なんでだよ?」


突然、雛丸に止められた。阿形が怪訝そうな声を出しながら、跳躍しかけていた足を地面につける。蜘蛛の足が雛丸の防御を掻い潜り、阿形に向かって迫りかける。が、それを雛丸が二つの刃物で蜘蛛の足全てを弾くと刃物を手首で弄び、阿形目掛けて迫っていた足を防ぐ。そして、バッと振ってそれを跳ね返すと阿形の手を再び引っ張って後退しながら叫ぶ。阿形はなにがなんだが理解出来ていないようだった。


「薙!紅葉!」

「あ、これ!?」


屈強な化け物を相手していた紅葉が雛丸の声に反応する。そしてたまたま隣にいた姫鞠と顔を見合せる。姫鞠には紅葉と雛丸の言葉で通じたらしい。目の前にいる屈強な化け物の腹を紅葉は大鎌の柄で、姫鞠は蹴りで攻撃する。二人分の攻撃で化け物の体がズザザーと後方に移動する。その背後には先程まで雛丸達が相手をしていた化け物。そこで阿形は紅葉と薙が言っていた()()の片鱗を垣間見た。雛丸は驚く阿形に向かって笑いかけながら、白桜に視線を向ける。それを感じ取ったかのように彼らの背後にいた白桜が閉じていた瞳を開け、片手の扇を背中がぶつかり、折り重なるようになっている化け物達に向ける。


「〈絡め棘〉、〈鎖ノ牢獄〉!」


白桜が踊るように扇を手首で弄ぶように回すと、その扇から無数のトゲがついた棘と重々しい鎖が放たれた。それらは白桜の腕を一瞬、包むように鮮やかに、それでいて不気味に動くと化け物を縛り上げた。無数のトゲが化け物二体の体に食い込み、鎖が身動きが取れないほどまでに強く食い込み、体力を奪っていく。その後は誰がなにかを言うよりも早く、紅葉と薙が駆け出し、走りながら身動きが取れない化け物二体に向かって武器を振った。大鎌が地面をも削り、刀が鋭く化け物を狙う。ズバリ、と風が切れる音がしたかと思うと化け物は縦に横に真っ二つ、バラバラに切り刻まれていた。化け物達は、それはそれは嬉しそうに残った顔の部分だけで微笑んだ。そして、影の中に消えて行った。紅葉が薙を振り返り、ニカッと笑う。


「やったね薙ちゃん!」

「嗚呼」


紅葉が片手を挙げ、それに薙が片手を叩きつける。ハイタッチだ。二人は嬉しそうに笑う。白桜が雛丸に向かって軽く頭を下げながら言う。


「お見事でしたね、雛様」

「うんん!白桜のおかげ!」


イエーイ!と雛丸が笑顔で白桜に両手を挙げる。それに白桜が優しく笑って二人も軽くハイタッチ。と紅葉が白桜の背中から体当たりのように激突した。誉めて!と云うようだ。驚いた様子だった白桜は背後を振り返りながら紅葉の頭を撫でる。


「さすが兄さんだね!」

「ふふ、紅葉もですよ」

「むぅー!作戦考えたのはボクだよ!」

「さっすが雛丸!」

「付け足し感がハンパないんだけどな紅葉!」


雛丸が膨れっ面でそう抗議すると紅葉が可笑しそうに笑った。それにつられて白桜も柔らかく笑った。それを見ていた薙に至ってはあきれている。右半分の尋常じゃない疼きが収まった姫鞠が阿形と共に安心したように笑う彼らに近づく。此処に彼らがいたら、安全だと安心して出てきた街人に目撃されてしまう。ただでさえ、余所者を好んでいないと云うのに。と、そこで姫鞠は紅葉が頬に怪我を負った事を思い出した。慌てたように立ち上がりつつある紅葉に近寄った。


「紅葉ちゃん!頬の傷…」

「へ?」


呆けたような声を出しながら振り返った紅葉の頬を見て、姫鞠は首を傾げた。そこには確かに、一線が入っていた。その頬を心配そうに彼が見ているにで薙が紅葉の背中を叩いた。はたかれた紅葉は一瞬、なに?!と云う感じだったが、薙が此処と頬を指差すので、嗚呼と分かったようだった。そしてスッと頬に手のひらを滑らせた。すると優しくも暖かい光が仄かに残留を残して消え、傷も消えた。


「それ、能力かしら?」

「うん!軽いやつだとこんくらいなんだけどね!…姫鞠さんの病気は治せないんだ…ごめんね」

「!良いのよ!その気持ちだけで嬉しいわ!」


姫鞠は安心したように、紅葉の心遣いに笑った。奇病が共通能力や固有能力で治らない事は承知の事実である。治ったら良いが、そんなに簡単にはいかない。伸び縮みしていた爪が普通の長さに戻っていく。それを安心したように眺め、「ありがとう」と紅葉と薙にお礼を言う。二人は「いいえ」と笑って返した。


「!?吽形と八意は?!」

「あ!置いて来ちゃった!」


阿形がそう叫ぶと雛丸がそれに答えた。「なんで置いて来たんだよ?!」と云う文句を叫びながら阿形が自分達がいた家を振り返った。と突然、ガクンと両膝をついて横に倒れ込んだ。突然の事に誰もが固まってしまったが、すぐにその緊迫から解放された白桜が倒れた阿形に駆け寄った。


「阿形さん!?大丈夫ですか?」

「まだ敵がいるのか?!」

「ウソ…ウソよ。だってもう近い人はいないh」


白桜が阿形に近寄り、呼吸をしている事を確認し、ホッと胸を撫で下ろした。と云うよりもこちらの心配など知らんと言いたげに、規則正しい寝息をかいている。それに少し、白桜が呆れたように笑った。その時だった。紅葉の隣にいた姫鞠も崩れ落ちるように倒れ込んだのは。紅葉が慌てて支えるが彼の方が身長が高いので紅葉が倒れそうになる。倒れた姫鞠の反対側に回り、薙も支える。二人はゆっくりと姫鞠を地面に寝かせる。突然の事に雛丸は驚愕した様子でありながらも、納めたはずの武器の柄に手を置き、警戒するように四方八方、視線を巡らせている。紅葉が心配した様子で姫鞠に声をかけようとし、それを薙が口元に人差し指を置いて、閉ざした。そして、ゆっくりと落ち着けと促す。姫鞠は、眠っているだけのようだった。紅葉がそれに気付き、まさかと白桜を振り返ると彼が紅葉の考えに気付き、頷いた。そして彼らは武器を手に、警戒を露にした。突然、倒れた二人。姫鞠がいないと言っていても敵がいるのは明らかだ。二人を守るようにして彼らが周囲に視線を巡らせる。と、そこで静かすぎる空間に雛丸が怪訝そうに声をあげた。


「街の人達は?」

「!……彼らも眠ってしまったと考えるのが妥当でしょう」


雛丸の言葉に白桜が冷静に分析する。確かに化け物が倒れたならば出て来ても可笑しくはないし、友人であろう姫鞠と阿形が倒れたのに出て来ないのも可笑しい。白桜の言う通り、全員が眠ってしまったと考えるのが妥当だろう。だとしたら、その原因は一体なんだと云うのか?吽形と八意は無事だろうか?自分達を匿ってくれた、見えぬ彼らを心配する。街全体が眠ってしまったかのように静かで、彼らがする呼吸音だけが異様に大きく響き渡る。紅葉が大鎌の柄を両手で握り締めながら言う。


「どうするのこれ?」

「どうするもこうするも……何もできねぇだろこれはよ!!」

「薙落ち着いて!」


薙が苛ついたように叫びながら刀を見えない敵に向かって抜刀する。雛丸が「抑えて!」と宥める。彼女が苛つくのももっともだ。紅葉達の中で誰かが確認しに行ければ良いのだが、正体が不明な以上、むやみやたらに動くのは危険だ。だから、なにもできない。心配と緊張、緊迫感が四人の間に張り巡らされていく。どうしようかと、誰もが頭を回転させる。その時、白桜が何かに気付き、声をもらした。


「……もしかして、これは」

「白桜?どうかしたの?」


雛丸がそれを聞き逃さずに彼を見上げる。いえ、と白桜は軽く首を振ったが、なにか確信があるようでその瞳はいつもの優しさはなく、鋭く尖っている。


「なぁに?教えて」

「それでは失礼して。恐らくですが、眠った正体、共通能力でございましょう」


その答えに全員に戦慄が走った。白桜は他の三人よりも共通能力が多い。普通の人よりもその数は多く、彼らでも全てを知ることはない。そんな多くの共通能力を持つ白桜がそうだと言った。共通能力を持つ者は固有能力を持つ珍しい人材よりも遥かに多い。その共通能力を使って、何故街全体を眠らせたのか。目的はなんなのか。原因が分かったにしても正体は依然として不明。まるで奇病の原因のようだ。再び、警戒態勢に入った彼らをなにかが襲った。



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