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紅華~紅ノ華、赤ノ上二咲キテ~  作者: Riviy
第二陣 新たな意味
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第十三話 朝日が合わせるのは、



静かだなぁ。誰も、()()()()()()のかな?それでも、良いや。それにしてもあの人達は神で良いのかな?妖怪であるこっちとは全然違うし、雰囲気も、オーラも何もかも違う。神とも違う感じがするし……まぁ、いいや。今は、眠っていたい……


…*…


結局、紅葉達はこちらが迷惑をかけたと言うことで一泊することになった。自分達がいることが街の人々に知られないかと心配だったが、家から出なければ問題ない、と云うことだった。落ち着いた姫鞠は「迷惑かけてごめんなさいね」と謝って来たが、彼らは大丈夫だと告げた。化け物化しつつある事が悲しいのか、それとも恐ろしいのか落ち込む姫鞠を励ますように雛丸が持参していたマニキュアで彼の爪を綺麗に塗った。その好意に姫鞠は嬉しそうに頬を染めていた。一方、白桜紅葉兄弟の側で眠ってしまっていた双子は眠気眼を擦りながら起きて来た。かと思うと何が気に入ったのか、阿形は白桜に、吽形は紅葉にくっついたままとなった。阿形は白桜と仲良くしたいのか否や、初対面の時とはうって変わって色んな話をしていた。吽形は喋れないのでずっと紅葉の話を楽しそうに聞いていた。薙は八意を探るように観察していたが、時たまに別の部屋に行って帰って来たと思ったら女体ではなく男体で出てくるので、その仕掛けが気になって珍しく薙から質問をしていた。それを見た紅葉に薙はからかわれたが。


そんな夜と夕食を済ませた彼ら。そんなこんなで朝がやって来た。


寝室として提供された客間。アクアマリンのネックレスを付けながら薙は隣の布団で気持ち良さそうに眠っている紅葉を見た。彼女は紅葉を見て柔らかく笑う。薙の反対側には寝相が悪く、片足を薙が使用している布団に投げ出し、寒いのか暑いのか布団から半分体が出ている雛丸がいる。と、視界の端で白い人物が見えた。白桜だ。薙がゆっくりと彼を見上げた。


「おはよう」

「おはようございます、薙様」


ニッコリと優しい笑みで白桜が薙に挨拶した。そして白桜は寝ている雛丸の近くの両膝をつき、彼を起こすために体を揺らし始めた。その微かな揺れに雛丸が小さく呻く。薙も紅葉を起こそうと手を伸ばした。その時、何処かの誰かさんのように襖をスパーンッ!と開け放たれた。その音に雛丸が寝惚けた様子で、ノロノロと起き上がった。紅葉に至っては驚きすぎて飛び起きた。その驚きように薙は耐えきれずに吹き出し、腹を抱えて笑い出した。それに寝起きの紅葉は首を傾げるばかりである。大きな欠伸をかます雛丸の隣で白桜は襖を開け放った人物にあきれたように視線を向けた。


「おはようございます、阿形さん。もう少し、静かに開けて欲しかったのですが」

「んなこと言っても、起きない人は起きないし。ちょうど良いじゃん」


そこにいたのはドヤ顔をした阿形とその背後に隠れるようにして苦笑している吽形だった。はぁ、と軽くため息をついた白桜はまだ寝惚けつつも寝るために脱いだ軍服を求めて手を伸ばす雛丸のその手に枕元にあった軍服を手渡した。


「薙ちゃん笑いすぎだよ!」

「声大きいうるさい」


朝一番の大きな紅葉の声に薙がそう返す。が、まだ笑っている。よほど彼の驚愕の様子が面白かったらしい。それかツボにはまったか。不機嫌そうに頬を膨らませた。阿形は呆れたようで、吽形はクスリと笑いながら二人を見ていた。


「朝飯、食ってくでしょ。早くしろよ。吽形、行こ」


朝食が出来た事を伝えに来たらしい。ついでに寝坊助を起こしにか。阿形は吽形の手を掴んで廊下に消えて行った。早く朝食が食べたいのか、覚醒した雛丸はさっさと着替えを済ませて背伸びをする。紅葉も寝癖がついた髪を手櫛で直しながら準備を始める。その間、薙と白桜が布団を畳んでいる。片付けを済ませ、準備が整った彼らは朝食へと部屋を後にした。朝食は昨日、一時的ではあるが使用していた客間で、テーブルには暖かな湯気がたっている和食が並んでいる。見るからに美味しそうだ。既に席について双子は朝食を摂っている。八意は見当たらなかったが、部屋が繋がっている台所にでもいるのだろう。姫鞠も朝食を摂っていたが朝は苦手なのか、こっくりこっくりと船を漕ぎながらの朝食である。


「お兄さん、起きて!」

「ん…ぅわぁ…雛丸ちゃん、おはよう…」


席につきながら雛丸がクスリと笑いながら言うと姫鞠は一瞬目を開けて微笑んだ。が、またすぐさま目を閉じそうになっている。無駄だと思ったらしく、雛丸は目の前の美味しそうな朝食に意識を戻した。既に紅葉は朝食を平らげており、薙が「いくらなんでも早すぎる」と顔をしかめていた。白桜はゆっくりと朝食を堪能しており、薙もまた美味しそうに朝食を食べていた。紅葉も薙も美味しいのー紅葉は美味しかった、だがーか頬を染めている。それを不思議に思いながら雛丸はお味噌汁を口にした。そして、驚いたように身を引いた。美味しい。それが顔に出ていたのか阿形がニヤニヤとしているのが目の端に入り込んでいた。


「ごちそうさまでした!」

「お粗末様」


パンッ!と両手を叩いてそう叫ぶと奥から八意の声が聞こえて来た。何をしているのかは知らないが彼女ーいや、彼?ーの分がないところを見るに食器でも洗っているのだろう。紅葉はふぅーと息を吐きながら後方に体を仰け反らせ、両手をついた。そして、ふと視界を窓に向けた。此処からは窓の外の風景がよく見える。賑わっている街中。余所者だから外には出られないが、きっと街は豊かで鮮やかなのだろう。そんな事を思っていた紅葉の()()()|が突然、警報を鳴らした。自分でも分からない胸騒ぎに紅葉は体を起こした。途端、割れるような悲鳴が響き渡った。船を漕いでいた姫鞠の意識がその悲鳴で飛び起き、台所にいた八意も飛び出してくる。


「何事だ?!」


薙が緊迫感を孕んだ声で中腰になりながら刀に手をかける。紅葉も反射的に膝立ちになっている。八意が動くなと手で彼らを制止させると先程まで紅葉が見ていた窓に駆け寄った。そして窓から外の様子を窺う。外の様子を窺っていた八意の表情がみるみる青くなっていく。その意味に気づいたのは、八意と共にいる姫鞠と双子だった。姫鞠はテーブルに置かれている湯呑みを手に取ると勢い良く煽った。ダンッ!と湯呑みをテーブルに叩きつけるように置くと立ち上がり、八意がその音にハッと彼を振り返り叫んだ。


「!姫鞠!やめて!本当に『影石』になるよ!?」

「それだったら、誰かを救ってから死にたいわ!それに八意、ここでは()()()()()()()()()()()()()()()()()()。そういう決めごとでしょ?阿形、お願いね」


姫鞠の言い分に八意の表情が曇り、苦痛に歪んでいく。紅葉達にはなんのことだがさっぱりだが、なんとなく昨日の姫鞠から考えるにこの状況は恐らく、ヤバい。阿形が姫鞠の言葉に頷き、懐を探る。昨日のあの薬でも入れているのだろうか。そして立ち上がると姫鞠と一緒に飛び出して行った。昨日のように怯えた様子で阿形にしがみついていた吽形は行かないでと言うように、駆けて行く片割れに手を伸ばす。苦痛な表情になっていた八意がハッと我に返って叫んだ。


「ちょっと!?二人共!」


八意が玄関へとーいや、多分外に出たー二人を追うように窓から離れた次の瞬間、窓の外に怪しい影がうつった。その影に八意が気づいた時には窓を突き破り、八意に襲いかかろうとしていた。吽形が声ならぬ悲鳴をあげる。紅葉が跳躍しようとすると何故か薙が止めた。抗議するように振り返ったその瞬間だった。


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