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紅華~紅ノ華、赤ノ上二咲キテ~  作者: Riviy
第八陣 最終決戦
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第百十三話 準備は整った



帝は相手の攻撃をもろに受けてこちらに吹っ飛んできた双子の首根っこを空中で上手い具合に掴むと、そのまま双子を引っ張りながら後退する。


「「《《なにするの主さまー!》》」」


双子が帝を見上げながら文句を垂れると、帝は胴体に引っ掻けるようにして持つ弓矢の位置を調整しながら叫んだ。


「なにするじゃねぇわ!もう貴様らぼろぼろじゃねぇか!一旦退くぞ、萊光!」

「「《《大丈夫なのにー》》」」


低い声と高い声が文句を垂れながらも帝にしぶしぶと云った感じに従い、後退していく。その語尾に最初の時の元気がないことに全員が気づいていた。萊光は帝に呼ばれ、目の前で対応していた分離する鎌の一つを思いっきり頭上へ吹っ飛ばした。吹っ飛ばされた鎌は空中で一回転すると紅のもとへと戻って行く。彼が後退したのを皮切りに他の『勇使』達も一時退避する。ズルズルと、傷だらけになってしまった固有能力での双子を安全な場所まで連れて来ると帝は再び弓を引き絞った。矢の先にいるのは余裕綽々と立ち尽くす紅。彼の三つに分離する鎌も固有能力も攻撃の大きな障害となっており、こちらの体力がただただ減っているだけである。インカムからの情報で洗脳されていた『勇使』は半分以上、回収されたようだ。残っている『勇使』は中傷から軽傷程度に済んでいる『勇使』が対応している。化け物も九割五分いなくなっているが、いまだに殲滅は出来ていない。


「主殿、どうする?このままだと持久戦に持ち込むことになるが」

「んなことしたら負けんのは俺達に決まってんだろ。なにか策は…」


帝の元に後退してきた萊光が言う。その後に考え込んだ帝の表情が笑っていることに気付き、萊光は度肝を抜かした。まさかだと思うが、帝は此処まで予測していた?嗚呼、なんとも頼りになり、敬愛する幼馴染であろうか。我知らず、萊光の口角もあがって行く。足元には肩で息をする双子の片割れが横たわっている。もう片割れは空中で息を整えている。彼らを今一度、紅に突撃させるのは厳しい。だとしたら。萊光は紅に聞かれぬよう、帝の耳元で囁いた。


「何を企んでいる?主殿?」

「ふ、はは。やっぱり、貴様には分かるか」


クスクスと愉快そうに帝は笑った。そして、真剣な表情で言う。相手に聞こえぬよう、低く、小さな声で。


「あの紅が未来のやつだとしたら、今待っているのは誰だと思う?」

「……紅葉か。自分と同じ紅葉なら、全て分かってくれるとでも思っているのか?」

「多分、そうだろうな。未来と現在、全て違うのにな」


帝が紅に矢を向けながら言い放つ。そう、未来と現在は全くもって違う。未来が孵化した蝶なら、現在はまだサナギだ。矢の先にいる紅は余裕綽々と云った様子で自分の回りにいる三つの鎌に手を差し伸べている。待っているのは紅葉達だろう。彼らに任せれば、紅を倒せるだろうか。五分五分だ。けれど、帝は彼らに任せる気でいる。何処まで知っているのか、いや、()()()()()のか。嗚呼、本当に、恐れ入る。


「じゃあ、紅葉達が来るまで待つか」

「嗚呼……その必要はないようだぞ」


帝が萊光に後ろを見ろと促す。けれど見なくても萊光には理解出来た。こちらに近づいてくる足音がまるで、勝利への音楽に聞こえてくる。


「帝!」

「待ってたぞ貴様ら!」


帝の隣に滑り込むようして駆け込んで来た紅葉達。紅葉達の姿を視界に写した途端、前方にいる紅の顔に笑みが広がった。だがその笑みはどこかいびつだった。


「帝、紅に聞きたいことがある。妾達に倒させてくれ」

「はっ、勝算でもあるのか」


帝が()()()()()()()()、問う。それを知っているのは萊光だけだが、彼は小さく微笑んだ。帝の挑発的な物言いに薙と雛丸が上等、とでも云うように口角を上げてニヒルに笑ってみせた。それが答えだ。紅葉と白桜も任せろと笑っている。それに帝は軽く瞳を伏せると足元と空中で息を整え終わった双子と周りで傍観しつつ、警戒している『勇使』に向かって視線を向けた。


「援護しろ」


ピョン!とウサギのように立ち上がりながら双子が少し不機嫌そうに、それでいて少し嬉しそうに表情を歪めながら集まりつつある化け物と『勇使』に目掛けて大きく跳躍した。紅と交戦していた『勇使』も何も聞くことなく、自らの行動に移る。素晴らしく、美しくも取られた連携プレー。萊光は頑張れよと云うように紅葉を労うと帝と共に一瞬にして消えた。その事に目を見開きながら驚くが、目の前に立ちはだかる真実に顔を引き締める。


さあ、彼の者よ、真実を語れ。


今日は二つです!

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