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紅華~紅ノ華、赤ノ上二咲キテ~  作者: Riviy
第八陣 最終決戦
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第百四話 新たな相方


紅葉に向かって跳躍してきた少女の攻撃は勢いがあり、その一撃がとても重かった。大鎌で辛うじて防いだ紅葉は片足を軸にして少女を弾き飛ばしつつ、投げ飛ばした。少女は飛んで行きながらくるくると空中で回転すると地面に足をついて速度を下げながら着地した。少女は虚ろな瞳で紅葉達を見つめている。次は彼女とか、と誰かが呟いた気がした。武器を構えた紅葉達に少女は愉快そうにクスクスと笑う。紅の話が正しければ、洗脳されているようだが……


「『勇使(片割れ)』は生き返らないよ!もうわかってるんでしょ!?」


雛丸が切羽つまったように叫ぶ。虚ろな瞳であってもきっと届く。そう思っていた。けれど、少女はコテンと無邪気に首を傾げながら云うのだ。


「分かってないのは、そっちじゃない?きっと、帰って来るって、言ってたもん…」


嗚呼、駄目だ。完全に呑み込まれている。そう思ったのは全員だった。紅葉達が武器を構えた。すると少女はクスクスと口元を押さえて笑い出した。その笑みがなんだが不気味と云うか、違和感と云うか嫌な予感がして紅葉は軽く片足を引いた。


「……なに笑ってんだ」


薙が恐る恐る聞くと少女はニィと嗤った。そして片手を横に突き出した。途端、地面から人一人が写り込むほどの鏡が突然現れた。その鏡は最初一つであったにも関わらず、いつの間にか三つ、四つと増えて行き、紅葉達が撤退しようとしたその瞬間を狙ったかのように鏡が彼らを囲んだ。ぐるぐると凄まじいスピードで紅葉達と少女の周りを回る多くの鏡。逃げ場を失った。そう思うのは自然だった。それでも、紅葉達は冷静に対処する。


「紅が言ってたから、あなたたち、()()()()ね」


その言葉に紅葉達は怪訝そうに首を傾げた。()()()()、とはどういう事だ?雛丸が白桜を振り返った。白桜は脳をフル回転させる。()()()()、キーワードはそれだ。だが、白桜が持つ共通能力に引っかかるものは一個もない。そして、彼女から漂ってくる能力の分類は、固有でも共通でもなかった。まさか…その考えに辿り着いた瞬間、白桜の顔が微かに歪んだ。それに気づいた紅葉が心配そうに彼を見上げた。


「兄さん?どうしたの?」

「なにか分かったのか?」


紅葉が見上げたことで薙も気付き、横目で問いかける。前方の少女を警戒しているようで睨み付けている。が白桜の異変に気付き、軽く目を見開いていた。白桜が言おうかどうか迷っていたが、意を決したように言った。


「あの方は紅のように変化した能力かと最初は思ったのですが、違いました。共通でも固有でもありません」

「……神子さんの予知みたいなってこと?」

「今まではわかりませんでしたが、帝の〈真実の眼〉ではっきりしました。神子様も帝も、そして彼女も恐らく、特殊能力保持者です」


白桜の説明に彼らを息を呑んだ。まさか、そんなことがあるのか?いや、多くの共通能力を持つためにそれを判別できる白桜が言っているのだ。間違いではない。実際、帝の〈真実の眼〉は固有でも共通でもなく特殊能力と云うのは『勇使』の中では有名な話であり、それゆえに間違いを犯した『アルカイド』の住人がすぐさま後悔したのはその効果にある。特殊能力とは共通能力や固有能力とは違い、特定の人物にのみ与えられる能力のことである。固有能力よりも能力の効果は絶大であり、固有能力よりも少ない特定の人物のみが保持するため、存在価値や希少価値はぐんと上昇する。そのほとんどが血筋によって受け継がれるものであり、その場合は威力が倍増されて受け継がれる事がある。また能力と云う形で受け継がれるのも稀であり、普通は白桜と紅葉兄弟のような形で受け継がれる事が多く、その場合は能力とは分類されない。本当に特殊中の特殊なため、その全貌は判明していない。


「……誰から特殊能力をもらったって云うの?特殊能力は必ず能力として受け継ぐ事は稀だよ?帝はほとんど確定してるけど…」

「はい、それは雛様の仰る通りです。ですが。元々は固有能力だったものが特殊能力として変化した、本当に稀に発生する能力のようです」

「…つまり?」


雛丸の問いに白桜が小さく息を吐いて告げる。それを告げるとまさかと思っていたことが本当になる気がした。けれど、これが真実であり、紅の次の脅威なのだろう。


「恐らく『勇使』から受け継いだものかと思います。血縁ではないのに受け継いだため、名の通り特殊な能力となっています」

「うっそそんなことあるの?!」

「えええ!?初めて聞いた!」

「……まぁ、紅の影響で異変が起きてんだ。あり得ないことじゃねぇよ」

「「なんでそんなに冷静なの薙ちゃん/薙!?」」


白桜の言葉に紅葉と雛丸が驚きの声をあげるのに対し、薙は納得したように頷いた。ほぼ真横で紅葉と雛丸の驚愕の声を聞いたので少し耳がキーンとした。それに薙が場違いだと思いながら顔をしかめると二人はてへっと笑った。白桜も苦笑していた。確かに薙の言う通り、紅と云う異空間パラレルワールドからの来訪者があり、その感情が異変として現れた事実がある以上、紅側は通常とは異なっていると言っても良い。紅葉達はその事実を頭に入れて改めて少女を見た。少女の傍らには先程の鏡と、今彼らを囲んでいる鏡と同じものが佇んでいる。『隻眼の双璧』よりも能力で云えば強者であろう。双璧は元々の身体能力が異常だった。目の前はどうだろうか?本当にこちらの常識が通じなくて困ってしまう。

少女は優しく鏡を撫で、愛おしそうに微笑む。


「あなたたちが()()()()、きーちゃんは戻ってくるの…」

「きーちゃん…?…!ってまさか!」


少女の言葉に薙が声を荒げる。雛丸もまさかと息を呑んだ。『勇使(二人)』の驚愕に、いや、いつか見たことがあるその様子に兄弟達は目を疑った。


「薙ちゃん、まさかだと思うけどさぁ、少女(あの子)って…」

「嗚呼、きーちゃんってのは『勇使』の中で最恐と恐れられた奴の事だろう」

「それが事実だとすると、彼女が特殊能力を受け継いだ相手と云うのは…!」


白桜が驚きの声を袖口で隠した。その先は言わなくても容易に分かった。恐らく、目の前の少女は最恐と恐れられた『勇使』から固有能力を受け継ぎ、その影響で固有はその名の通りの特殊能力となってしまったのだろう。紅がいたからかどうかなのかは知らんが。薙と雛丸が目の前の少女を睨み付ける。紅葉と白桜もそれに倣う。最恐『勇使』の片割れ、その実力は如何に。


「ノエ、それがあいつの名前だ。武器は鏡。だが、特殊能力となった今、その効果は不明だ」



物語も終盤ですが、スランプも次回作も色々大変です…もう秋ですよ…嘘でしょ…?

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