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紅華~紅ノ華、赤ノ上二咲キテ~  作者: Riviy
第七陣 真実の華
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第九十七話 決まった意思



カチコチ、カチコチと何処から時計の音が聞こえてくる。何処からだろう?辺りを見渡せば、四方八方、真っ暗だった。と、目にあるものが止まった。立派な時計があった。その時計の前にはある人物が座り込んでいた。その人物は、クスクスと笑っているような、しくしくと泣いているようなどちらかは分からない。ただ、こちらに背を向けているのだけは、暗い中でもわかった。その人物に向かって手を伸ばした。だが、その前にその人物がこちらを振り返った。


「これが、絶望だよ」


…一つわかったことがある。その人物は、()()()()()。まるで、知っているかのように。


…*…


気持ちが落ち着いた紅葉を囲むように座り込みながら彼らは話していた。


「帝の言うことが本当なら、妾達はどうするべきだろうな?」

「ボクは、真実が知りたいなーなんで紅は、過去に来たのか。なんで此処に現れたのか…気になるもん!」


ねーっと雛丸が白桜を振り返ると彼はそうですねと頷いていた。


わたくしも気になります。ねぇ紅葉。わたくし達は知りたがりなのでしょう?貴方が萊光様に申された事です。ならば、最期まで追い求めるのが筋ではありませんか?」


白桜が隣の紅葉の顔を覗き込みながら言う。紅葉は暫し、視線を誰とも合わせずに空中をさ迷わせた。紅に聞きたい事は山ほどある。雛丸が言った事もしかり。だから、嗚呼、自分は一瞬絶望したにも関わらず、すぐさま光を見出だせたのは君達がいたからだろう。そして、自分が「知りたい」と望み、少し興奮している事にも気づいていた。


「うん、知りたい、知りたいよ。紅が、未来の僕が何故こんな事をしたのか。理由が知りたいよ!僕は、今のこの場所を奪われたくない。もう、奪われたくないよ……」

「うん、そうだな。どんな理由であれ、妾達に牙を向いた時点で敵だ。一発殴る気で行こうぜ!」


紅葉の肩をポン、と叩いて薙が立ち上がり、握りしめた拳をもう片方の手に叩きつけた。その姿が()()()のように見えて、紅葉は眩しそうに目を細めた。そして、紅葉に向かって手を差し伸べられた手を取り、立ち上がった。


「うん!真実を知ろう!」

「ボクたちも一緒に、だからね!抜け駆け禁止ー!」

「『隻眼の双璧』を倒せたのです。わたくし達であれば、どんな敵にも勝てます」


ぴょん!と跳び跳ねるようにして雛丸が立ち上がった。それに続いて白桜も立ち上がる。全員が全員、真剣な表情をしていた。彼らはもう一度、手を重ね合わせた。これは、決意だ。どんな真実でも受け入れると云う。藍色の爪と牡丹色の爪、何も塗られていない綺麗な爪、そして黒い手袋がはめられた爪。四者それぞれの決意の表れが示された手だ。彼らはうん、と決意を秘めた瞳で頷き合う。


「紅を止めようぜ!」

「うん!」

「まっかせてー!」

「承知致しました」


そこにあるのは、強い絆で結ばれた四人。とその時、物音がし、紅葉達はその方向を振り返った。そこにいたのは萊光だった。萊光は落ちていた石を踏んだらしくそれで物音がしたようだった。萊光に至ってそんな小さなミスをおかすとは考えにくいので紅葉達に気づかれるようわざとやったのだと薙は瞬時に考えた。友人に近づいて行く紅葉を見ながら、萊光も帝と同じくらい、読めないなとさすが原型だと小さく笑った。雛丸も薙の心中に気づいたのか口元を両手で押さえてクスリと笑った。何がなんだが分かっていない白桜は軽く首を傾げていた。


「決まったみたいだな」

「萊光、どうしたの?」


紅葉が不思議そうに萊光に近づく。彼は吹っ切れたような表情の紅葉に安心したように小さく笑った。スカーフに口元を埋めながら萊光が言う。


「主殿に連れ戻せと言われてな。紅が再び襲撃する可能性が高い。そのためにも作戦を発表したいと云うんだ」

「っていうか、よく此処ってわかったね?」


紅葉のもっともな質問に萊光はクスリと笑った。その笑みがなんだが妖しくて紅葉は一瞬たじろいた。此処は自分達が進んで行った反対側にあった廊下を突き進んだ先にあった小さな部屋だ。以前は牢屋として使われていたのだろうか、所々にその名残のような途切れた格子が目立っていた。紅葉達はその部屋の出入口付近にいた。紅葉がほぼ全速力で此処まで来たとき、他にも部屋を目撃したため、萊光が何故此処に来れたのか疑問だった。部屋全てを捜索してから来たにしてはやけに早いし。そう首を傾げていると萊光は小さく笑って、「行こう」と促し、さっさと行ってしまった。説明してくれると思っていた紅葉は面食らい、目を大きく見開いた。


「ま、帝の作戦なら大丈夫だろ。行くぞバカ紅葉」

「だからー!それやめてってば薙ちゃん!」


ポン、と肩を叩いて薙が紅葉の脇を通って彼を追って行く。紅葉は片腕を振り上げながらそう叫ぶと薙を追って駆け出した。雛丸と白桜が顔を見合わせて、クスッと笑いを溢した。


「これだよねー」

「そうですね」


嗚呼、いつも通りだ。雛丸と白桜もその後をゆっくりと追った。


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