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エクス=ペリオーン-A

色々と初期設定から弄くってますので、一話から軽く流し読みをしていただけたらと思います

それを一言で表すならば、『巨大化した全身鎧の騎士』とでも言えようか。


「……ロボット?」


白を基調としたその巨大な騎士は、腕を組んだまま、少年を見下ろしていた。


「……確か、エクス=ペリオーンって言ったよな、俺は」


名を呼べと言われて咄嗟に出たのはゲームタイトルの名前。


登場するロボットの名称でも、ゲーム世界にも全く関係のない、何が由来だからわからなかったタイトル名。


しかし、少年を見下ろすこの巨大な騎士の名に、彼は自分で驚くほど『合っている』と思っているほどだ。



(――待っていた)


「えっ?……」


(この時を……――この俺を扱うに足る騎士を、俺は何百年も待っていたぜ)


「頭の中に声がっ……!?」


(この俺を呼ぶ者よ、この身は貴様の剣だ。貴様は俺を操り、その慟哭のままに戦え。その身を焦がす怒りが、俺を、貴様を強くするッ!!)


突如、タツヤとミリアルティを光が包むと、次の瞬間に二人は座席の上に座っていた。

座りなれたその感覚は、タツヤ達ががコックピットの中に居る事を瞬間的に理解させた。

「!……コック、ピット?ワープしたのか、俺」

膝の上にミリアルティを乗せた形のまま、タツヤはどうやら『エクス=ペリオーン』のコックピットに瞬間移動したらしい。


(さぁ、見せてやろうぜ相棒。オレとお前の産声を――)


タツヤは頭の中で無遠慮に話す存在がこの機体・・自身であることも肌で感じ取っていた。


膨大な情報が頭の中を駆け巡り、肌を撫で、身体中へ伝播していく。


「……やってやる、やってやるさ」

二つある操縦桿を握り、フットペダルを小刻みに動かしながらタツヤは微調整を済ませる。

動かし慣れたゲームと、現実との齟齬を噛み合わせるように。


「グルウオオオオォォォッッ!!」

だが、巨大なオーガはそれを悠長に待ってはいなかった。

砕かれた己の拳と、エクス=ペリオーンの拳を叩きつけられ歪んだ顔面がみるみるうちに再生していくが、オーガは己に酷い痛みを与えた眼前の敵が許せなかった。

怒りのまま咆哮をあげ、今正に掴み掛からんとしたとき、


「武器は、――無し。徒手空拳で戦えってか!!」

腕を組んでいた巨大な騎士が脚を振り上げオーガに蹴りを放った。

バキバキと骨を砕く音が上がり、オーガは絶叫とともに放物線を描きながら吹き飛ぶ。


(こんな雑魚どもに武器などいらんさ)

「そうは言うが決定打がないと……うげぇ、ほら、あいつなんか再生してるぞ?」

勢い良く蹴りあげたせいでくの字に折れ曲がったオーガの身体が、ビデオを巻き戻すかのように再生する。

僅か数秒で再生しきったオーガは再び立ち上がり、深いうなり声とともに巨大な騎士を睨む。


(呪術により半不死化されたモンスターか。ちっ、なら解呪ディ・スペルの魔法を使え。俺には搭乗者の魔法を強化する力がある)


「いやいやっ、魔法って言われても!俺、使えないぞ魔法なんて!」

(何ぃ?ちっ、……立つのはその腕だけってか。使えねぇ操縦者ランナーだ)

「あっ、カッチーン!あったま切れた、そう言う事言う?なら言わせて貰うけどお前こそさっきから聞いてりゃ何様のつもりよ。勝手に頭ん中でぐちぐち喋るし挙げ句人様を使えないだって?おっ前の方こそ剣の一つくらい標準装備で付けとけよ!今時ビームも使えないロボットなんて絶滅危惧種だっての!」

(んだと手前ェ……良い度胸じゃねぇかこのチビ助ッ!)

「言いやがったな!それを言ったら戦争だぞこの野郎!ロボットならロボットらしく内臓兵器くらい持っておきやが――うわぁっ!?」

タツヤとエクス=ペリオーンが言い争っていると、背後から強烈な衝撃が襲う。


「くそっ、二体目が来やがった……っ!」

騎士達を相手していたオーガが、騎士達を無視しタツヤとエクス=ペリオーンを狙ってきたのだ。


「二体相手でも負ける気はしないけど……再生を止める術がないと勝てる気もしないぜ」

(ちぃっ……俺様がこんな雑魚どもに……)

二体のオーガに挟まれる形になったタツヤとエクス=ペリオーンは悔しげに呟く。


ピンチかと思われたその時、タツヤの腕の中にいたミリアルティが僅かに身動ぐ。


「……話は、聞いていたわ。私なら、解呪の魔法が使える……」

「お姉さん!?大丈夫なの?」

「ええ、酷く頭が重く感じるけれど……身体の痛みも和らいでいる感覚がある。……恐らく、貴方のお陰かしら?」

ミリアルティが苦笑しつつコックピットを見上げると、エクス=ペリオーンは鼻を鳴らす。


(搭乗者を回復させるのなんざ、竜装機ドラグアーマーなら当然の機能だろうが)

「当然……どうやら貴方の知る竜装機と私の知る竜装機とでは大きく違うようね。意思を持ち、搭乗者を癒す機能など私の知る竜装機には無いわ」

(何ぃ?そいつはどういう――)


「くそっ、来やがった!」

エクス=ペリオーンを挟み込むようにしていたオーガが襲いかかる。


(おい小娘!解呪の魔法が使えると言ったな!)

「ええ、使えるわ。けど、君が私の知る竜装機とは違う以上指示を出してくれると助かるわね」

(そこのチビ助を膝に乗せろ!)

「このやろ――のわっ!」

「それで、次はどうする!?」

タツヤの後ろに回ろうと、タツヤを跨ぐミリアルティ。彼女のスカートの中の下着が、タツヤの目の前一杯に広がる。

その光景にタツヤは湯だった蛸のように顔が真っ赤になった。


(チビ助の手の上から操縦桿を握れ!そうすりゃ使えるようになる!)

「リンクすら必要ないなんて……わかったわ。……失礼するわよ?」

「あっ、うん。はい……!」

衝撃的な光景と後ろから抱かれるような体勢にタツヤは借りてきた猫のように態度を大人しくする。

男子中学生には少々刺激的過ぎたようだ。


(おいチビ助!呆けてるんじゃねぇ!来るぞ!)

「くそっ、懲りずに言いやがって……」

タツヤは煩悩を振り払うように顔を振り、コックピット前面のモニターに映るオーガを見据える。


「《72柱の神々よ、我が名ミリアルティ=サー=フレンティアナの名において古の契約に従い我が意を示せ》」


詠唱を始めるミリアルティ。それに呼応するようにタツヤはフットペダルを踏み抜いた。


「《其は解く者、結び閉められた呪いの紐を切り裂く御手にして言の葉の鍵》――『解呪ディ・スペル』!」

エクス=ペリオーンの両腕に魔法陣が一瞬だけ浮かび上がり、そして向けた腕から閃光が二体のオーガに放たれた。

その光は敵を打ち砕く力を持ってはいない。ただひたすらに、他者が築いた魔法の社を切り崩す事に特化した魔術。


ディ・スペルの光が二体のオーガを貫く、その瞬間、ガラスを割ったような甲高い音が響いた。


「これで、一つ!」


確かな手応えを感じたタツヤはエクス=ペリオーンを駆け出した勢いのまま片方のオーガへ向けジャンプさせた。

走り幅跳びが如く勢い良く空を跳ぶエクス=ペリオーンは、その運動エネルギーを拳に乗せてオーガの脳天へと叩きつけた。


10mはある鋼の巨駆、ただでさえ重く頑丈なソレが飛び掛かりながら突き出した拳。破壊力は、生半可な物ではなかった。


「うげぇ……二つ!」

飛び散る脳髄と頭蓋を見ながらタツヤは気分を悪くしながらも、機体が着々するや否や反転し、その勢いを利用し脚を振り上げ蹴りを放つ。


「グゴオアアアァァァッッ!?」

その蹴りは背後から迫っていたオーガの顎を蹴り穿いた。


その場に崩れ落ちる二体のオーガ。シンと静まった後、再びオーガが立ち上がる事はなかった。

6/26 ミリアルティの口調を統一

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