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死刑からの転生  作者: 87(ヤナ)
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プロローグ

初投稿作品です。

拙い点が多々あると思いますが、許してぇ~

 グツグツといい音を奏でる鍋。その中には牛肉、白菜、春雨、こんにゃくなどの具がキレイに配置されている。その鍋の正体は「すき焼き」。白ご飯と生卵も忘れてはいない。

 

 その「すき焼き」を今まさに食べようとしているのは、1人の男。この男の顔を見ると、どこか違和感を覚える。この男の顔には、生気がまったく感じられないのだ。目は暗く、ただじっと鍋を見つめており、顔も疲れているのか、かなりやつれている。しかし違和感を覚えるのは男だけではない。その男がいる部屋もおかしい。部屋には窓が1つしかなく、その窓にはとて頑丈そうな鉄格子が取り付けられている。窓から入る光以外の明かりといえば、小さな電球が1つしかなく、そのせいで部屋はとても薄暗く、不気味な雰囲気を醸し出している。その部屋にある唯一の扉は鉄でできており、とても頑丈そうだ。この不気味な部屋は普通の部屋ではなく、いわば「牢屋」なのである。よく見ると男の格好は囚人服のようなものを着て、足には枷がつけられているのがわかる。

 

 しかし、ならなぜ、囚人である男が、「すき焼き」などと豪華なものを食べているのか?それはこの男が「死刑囚」であり、この「すき焼き」が男の最後の晩餐だからにほかならない。「死刑囚」には死刑の前の食事にはせめてもの情けと、自分の好きなものを頼んで食べることができる。さらには肉親などの身近な人が最後の別れにと、この晩餐をともにすることができるのだが、男にはそんな人が1人もいなのか、部屋にいるのは男だけであった。男はそんなことは関係ないかのように、もくもくと食べている。


 なぜこの男が「死刑囚」になったのか?この男が起こした事件について語ろう。

男が犯した罪は殺人である。ある一家を皆殺しにし、騒ぎを聞きつけた隣の家の住人も皆殺しにし、計10人もの人を殺害した。使われた凶器はナイフ一本で、被害者の体には首にある頸動脈を切られた傷しか無かったため、すべての人間を一撃で殺すという人間離れした殺人事件であった。警察が駆けつけた時には被害者の血で真っ赤になり、凶器であろうナイフをもった男が突っ立っており、その場で現行犯逮捕となった。男は自分が無実であることを主張していたが現場には男の指紋が多数ついており、それ以外にも数多くの証拠が見つかったため男の主張は聞き入れられず有罪、「死刑」となってしまった。


 1人で10人もの人間をナイフ1つで、なおかつ一撃で殺せるのかと、疑問に思うかもしれない。しかしながら男には可能であると、考えられていた。その理由は男の家系にある。男はとても有名で、由緒正しい剣道の家に生まれた。小さなころから両親に剣道の英才教育を受けており、男はその教育をまじめに受け日々自分の技を磨いていた、その結果、大人になった頃には「剣の道で敵なし」とまで言われるほど強くなっていた。その強さを買われて警察に剣道の指導をよく行っていたため、男の強さは警察内で知らないものはいなかったのである。そのこともあり、この事件を起こせるのはこの男しかいないと、警察側も判断したのだ。


 裁判が終わった後も無実を主張していたが、聞き入れられるわけもなく死刑当日になり、男はこの「すき焼き」を食べてるのである。


 男が食べ終わったと同時ぐらいに部屋の扉が 

   ギィギィギィ 

と大きいな音を出して開き始めた。開いた扉から出てきたのは、4人の警官。警官が近づくと男はどこか諦めたようにスッと立ち、両手を警官に差し出す。警官は差し出された手を見た後、手錠を取り出し男の手にはめる。


 いつの間にか警官4人が男を取り囲むように立っており、男はすぐさま扉の先へと連行された。扉の先には長く薄暗い廊下があり、その奥には部屋にあったのと同じような頑丈な扉がある。男は連行されながら、自分が犯したと思われている事件について考えていた。逮捕されてからずっと考えていたことだが、答えが見つからない問題。誰がなんのために男をはめたのか、である。


 事件の日男は、殺人など犯してはいなかった。友達の家に呼び出されて行っただけであった。

チャイムを鳴らそうとした時に、家の中から悲鳴が聞こえ、すぐさま家の中に入ったところ、家の住人は殺されていたのである。男が家に入ったのを見計らっていたかのように、すぐさま警官が入ってきて、取り押さえられた。そのときにナイフなんて持ってはいなかったし、服にも血なんてついていなかったはずだが、警官の証言では持っていることになっていたし、押収された服には血がびっしりとこびりついていた。考えれば考えるほど、男にとってわけのわからないことばかりが起こっていると痛感する。


  ギィギィギィ  

と先ほども聞いた扉の開く音を聞いてハッと我に返る。扉が開いて中の様子がうかがえた。部屋の中は(先ほどの牢屋ほどではないが)薄暗く、部屋の中央にはベットが1つあり、その右側には薬品が入っているであろう管が三本ほどあった。今の死刑の仕方は電気椅子などでは無く、薬品でまず眠らせてから、毒で死刑を行うのが一般的であると男は聞かされていた。部屋の中に入れられるとベットに寝かされて手錠と足かせが外され、すぐさま今度はベットについてある拘束具に手足がくくり付けられる。ベットの上で仰向けになり大の字のような体制で身動きが取れなくなる男。


 そうなると警官の中の1人が男に対して言った。

 

 「最後に言い残すことはあるか」


その言葉を聞き、男は今まで散々言ってきた言葉を返した。

 

 「俺はやっていない」


と。それを聞いた警官は、あきれた顔をすると部屋にいた白衣をきた男に合図する。白衣の男はベットに駆けつけると薬品が入った管を男にとりつけ始める。数分後、取り付け終わったのか白衣の男が警官に合図を出すと、警官は手元にあるスイッチ押した。すると、管のなかの1つの薬品が男の体へと流れていく。薬品が男の体に入り始めてまもなく、男は急激に眠気を感じ始め、瞼が重くなり、意識が遠のき始める。


薄れゆく意識の中で最後に男が見たのは、不気味に笑う白衣の男の姿であった。




週1程度でのんびりと投稿していきたいと思います。



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