風のリング
夜通し降り続く雪を眺めながら、男の子は困った顔をしていました。
「どうしよう。大雪の中飛び回っているうちに、大切な風のリングを落としてしまった。
もうそろそろ南の方へ向かわなくちゃいけない時間なのに…」
そう言ってうつむいた男の子の背中には、シオカラトンボのような透明な羽が4枚ありました。
オレンジの街灯に照らされ、思わず見とれてしまうほど美しいその羽でしたが、
所々に冷気によって傷つけられた跡が見られます。
「せっかく父さんから初めて仕事をもらえたのに。このままリングが見つからないと、
風を連れてくることができないし、罰としてまた掃除係に戻されてしまう…」
男の子は今にも泣きだしそうな気持ちでいっぱいでしたが、
お父さんと交わした『仕事中はどんなに心細くなっても、絶対に泣かない!』という約束を思い出し、
涙をグッと堪えて、雪の街に消えた落とし物を捜しはじめたのでした。
「やあやあ、君は風の精霊の子供だね。けど今夜は地べたを歩き回ったりして、どうしたんだい?」
意地悪なカラスが男の子に声をかけてきました。
男の子は親指と人差し指で円をつくり、滑り台の下で雪宿りをするカラスに聞きました。
「これくらいの大きさのピカピカな指輪を落としてしまったの。君は見なかったかい?」
「さあ、どうだろうね?おいら達はキラキラ光るモノに目がないから、使いもしないのに巣に拾って帰っちまうからな。
そしてある時、思うのさ。『あれ~?こんなガラクタ一体誰が持ってきたのよ~』ってな」
カラカラ笑いながら、カラスは雲のない空へ飛び立っていきました。
気がつけば東の空の色はすっかり変わっており、暖かな光が街に射し込んでいます。
「いけない、早くリングを見つけないと。あれはヒトの目でも見ることができる特別なものだから、
もし誰かの手に渡ったら大変だ」
慌てた風の精は降り積もった雪を急いで溶かしてもらうために、
傷ついた羽で太陽の精のもとへ飛んでいったのでした-




