虚無
僕の座っているベンチに男が一人座っていた…
「…。」
その男は動かない。
寝ているのだろうか。
考えているのだろうか?
もし、考えているのなら、何を考えているのだろうか
はたしてそれは、自分に関係するのだろうか
自分の家族、親戚、そして、薄っぺらい映像の中で見た人、
そしてこの文を光の集合体で見ている人に、関係するのだろうか
わからない、けれどこんなちっぽけなことは、宇宙から見ればただの砂粒にしか感じられない。
本当に、本当にそうなのか?
たとえ、砂粒でも、確実に、確かに存在する。
何億、何兆とそれは、変化を繰り返し、たとえ元の形がわからなくなるまで、
バラバラに、変形して言っても、たしかにある
石も、人も、命も、同じ「1」として数えられる
絶対に「1」が「0」に返還されることはない
そのことに変わりは、ないのだから・・・
その男は、音もなく立ち上がり、
ただ黙って
上を向いた・・・