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マジックカラーズ

作者: ぐまうす
掲載日:2026/05/18

頑張って書きました




 二五八年前、百年続いたペンタード大陸全土を巻き込んだ覇権戦争が終結した。

 それから二五七年間毎年、初代シュヴァルツ皇帝クロの生誕祭が五の月二の日を中日として五日間行われる。

 そして今から生誕祭中日の最大のイベント、エキシビション魔法戦が行われようとしていた。

『それでは今から選手の入場です!』

 帝都の至る所から男性の声が響き渡る。

 帝国軍魔法部隊が離れた試合会場から魔法を駆使して帝都に男性の声を送っているのだ。

『まずは白の魔法使いアスプロ選手』

 試合会場の様子を映し出している光集板を見る大衆は訝しげに白を基調とした服装の少女を観る。

『えー、アスプロ選手は立候補して今回の五色試合に出場したここ数年珍しい選手ですね』

 観衆のそこかしこから失笑や冷笑が聞こえる。

『立候補なんて出来たんですか?』

 女性の声が響く。

『本来なら色々な要素を踏まえて選出されるんですけど、白の魔法使いだけは立候補する事が出来るんです よ。この試合を物心ついた頃から観戦してますが、立候補して出場した白の魔法使いは一人いたぐらいで数十年ぶりぐらいになります』

『そうなんですね。でも、どうして白の魔法使いだけ立候補が認め―― あ……』

 どうやら気付いたようで、女性の言葉は途中で切れた。

 仕切り直すように男性のわざとらしい乾いた笑い声が響いて次の選手を紹介する。

 赤の魔法使いコッキノ、黄色の魔法使いキトリノ、青色の魔法使いブレと続いた。

 アスプロ以外は、それぞれの出身地が同じ観客が歓声を上げていたが、黒色の衣装を纏った女性が現れると、都全てから上がったと思える程の大歓声が起こった。

『三年連続黒の魔法使い代表者に選ばれ、今年も選ばれた黒の戦乙女の異名を持つマヴロ選手の入場だー!』

 実況をしている女性の黄色い悲鳴が上がっている横で男性が紹介する。

 五人の少女達が出揃ったが、しばらく歓声が止まることはなさそうなので仕方がなく男性は試合のルールを説明する。

『試合は例年同様に五人の選手によるバトルロイヤルになります。内容としましては、魔法のみの使用になり武器の使用は認められませんが、試合会場内の自然物を使った攻撃は認められています。勝敗は試合続行ん不能もしくは試合放棄により最後の一人になるまで行われたます。優勝者には白金貨百二十五枚と賢者の称号が与えられます』

 一応ルールを聞こうとしているのか、少し音量が下がった中で説明が都に響く。

『なお、基本的に殺すのは禁止されていますが、故意でない限り殺しても罪には問われません』

 内容の厳しさよりも、もうすぐ試合が始まる緊張感で段々と静かになっていく。

『それでは、去年の敗退順で森に入っていただきましょう』

 映し出される試合会場は家が三百軒は入りそうな程広く。選手がいる所には森が広がっているが池や小山、砂漠地帯など様々な環境が用意されている。

『では白の魔法使いアスプロ選手中に入ってください』

 時間を五分ずつ置きながらコッキノ、ブレ、キトリノと入って行った。

 そして最後にマブロが森に足を踏み入れる。


『さてどういう試合になると思いますか?』

『まぁ恐らくは例年通りかと思われますね』

『赤、黄、青の魔法使い達が共闘しての黒の撃破ですね』

『そうです。過去黒が優勝しなかった試合で行われた内容のほとんどが共闘による黒の撃破ですからね。しない手はありません。まぁたまに一色で立ち向かって行く選手もいて、それで勝てないと言うことではないんですがね。それで力尽きて他の二色に負けてしまい、優勝を逃すのが殆どですから、する理由は皆無ですね』

『それだけ黒の魔法が強いということですね。流石最強と名高い黒色魔力です』

『そういうことです』

『さて今映し出されているのはマブロ選手だけですが、そろそろ仕掛けて来ますでしょうか?』

『そうですね。準備が終わった頃でしょう』

 そう男性が同意すると同時に巨大な火柱が立った。

『一番手は赤の魔法使いコッキノ選手ですね』

 猛烈に燃え盛る炎から黒い球体が現れて火柱を消し去る。

 黒球体が消えると平然と立つマブロが現れる。

 束の間、人ひとり大はありそうな岩が次々と投げ込まれる。

『黄の魔法使いキトリノ選手の追撃ですね。先程の火柱は目眩しだったんでしょうねー』

 マブロは次々と来る岩を黒い魔力で覆った拳で殴り砕いていたが、流石に全てを捌け無いと思ったのか後ろに跳んで回避した。

 チャプ。

 水溜まりに足を踏み込む音がする。

 つい足下を見てしまった一瞬の隙をついて水が這い上り体を覆おうとする。

 マブロは素早く反応して対応しようとしたが、上から雷が落ちた。

 雷による体の硬直、本来なら魔力で生まれた雷はマブロの魔力が抵抗し威力を抑えられるのだが、水を伝わることによって、十分な威力となってマブロに効果を発した。

 そして、トドメとばかりに飛んできた岩が囲うと、一瞬で砂となって埋める。

『おおーと、なんという連携でしょうか!』

 女性が叫ぶ。

『ええ、見事な連携でしたね』

『解説をお願いします』

『そうですねぇ。炎による目眩し岩による誘導、そして水の罠に誘い込んでの、拘束。が一連の流れですね。詳しく解説しますと、炎と雷、水は用途は隙を作るでしょう。赤の魔力は炎や雷を生み出したり動作を速める効果がありますからね、加速度だけなら五色で一番です。なので視界を覆う程大きな炎と攻めに移させない様にする事が出来ます』

『雷もそういった用途だったのでしょうか?』

『雷は水との合わせ技と言った所ですが、補助の側面の方が強いですね。雷を受けると人の体は硬直しますから、青の魔力の特色を効かせる為の時間稼ぎですね』

『水の罠は特色考えると、足止めと言った所でしょうか?』

『そうですね。青の魔力は赤の魔力と反対に動きを遅くさせる特色がありますからね。水を生み出すことも得意ですから、無形の水による行動阻害が目的ですね』

『そして、砂による拘束を行うという事ですね』

『はい。黄の魔力は維持や固定の特色が有ります。それに赤の魔法と青の魔法は黒の魔法とは相性が悪いですかが、黄の魔法は黒の魔法との相性は悪くありません。その事を踏まえてもキトリノ選手は凄いですよ。黄の魔法使いは形造る事が得意なのですが、砂を使って岩を作り出すのは至難の業です。恐らく見本の岩があってそれの魔力を完璧に再現したのでしょう、それもあれだけの数を作り出したとなると正に天賦の才ですよ』

『ということは、今年はもしかしたら?』

『いやー、それは何とも言えませんね』

『砂に完全に埋まった状態ですが、抜け出せる方法があると? 脱出は黒の魔力の特色では無理だと思われますし、それにキトリノ選手がマヴロ選手を覆う砂を増やしつつあり重量と呼吸の阻害の危険性を考えますと、マヴロ選手の意識の有無に関わらず審判が戦闘不能の判断を下してもおかしくない状況だと思われますが』

『それは黒の魔力の特色へ認識が甘い考え方ですね』

『それは……』

 女性が質問しようとした時に、砂山から黒い魔力が滲み出始める。

 黒い魔力は砂山の頂上の上で集まると砂を吸い込み始めた。

『これは……?』

 女性が戸惑う。

『黒の魔力の特色はよく勘違いされやすいのですが、収集です』

『吸収ではないんですか?』

『それも間違いでは無く黒の魔力の一番有名な使い方でそう認識されやすいんですが、正しくは集め収めることが特色になります。ですので今行われているのは黒の魔法で砂を集めているという状況になります』

 解説がなされる中、三人が動く。

 キトリノが地面に手をつくと砂山の四方が捲りあがり覆被ろうとしコッキノが赤の魔法で動きを加速させる。そしてブレは集まろうとしている砂に青の魔法を使うことで移動する速さを押さえる。

『……凄まじいですね』

 男性がそう言うが、それは三人の事ではなかった。

 黒の魔法が降下し始め、青の魔法に妨害されてるにも関わらず吸収される速さは変わらず、集めようとする力によって岩盤が徐々に崩されて吸い込まれていく。

 そして吸収する量が多くなる程力を増した。

『これは……、どういう事でしょうか……』

 女性の声に僅かな畏怖が混じる。

『簡単に言いますと、マヴロ選手のポテンシャルが三人を上回っているという事です。いくら最強の魔力と言われる黒の魔力とはいえ、三人の高ランクの魔法使いを同時に相手取るのは無謀です。ですが、無謀どころかむしろ勝っている。わたしの理解の範疇を超えていますよ、わたしに言えるのはあの三人よりもマヴロ選手の方が強いということだけです』

 その解説に街中から歓声が上がる。

 三人は砂の拘束が無くなっていくのを眺めているだけだった。


「確か第十三回目の魔法試合で当時の黒の代表者が負けた時に使われた戦法だったかしら?」

 マヴロがキトリノに話しかける。

「……よく知ってんね。先生は黒の魔法使いは他色に負けることは恥で記録に残さ無いって聞いてたけど」

「黒の魔力至上主義者にはそういう人はいるけど、普通に過去の闘いの研究はするでしょ。とは言えこの程度の稚拙な方法の対策を研究する必要なんて無いのは確かだけど」

「ぅんなら! これはどうだ!」

 コッキノが風を操り、瞬く間に竜巻を作り出した。

 竜巻は周りの木々や砂利を飲み込んでいく。

「黒の魔力の特色で竜巻はどうにか出来ても! 高速で移動する木片と石には意味が無ぇ、激流に飲み込まれろ!」

「考えが浅い。貴女達が先程まで向けてきた砂が私の管理下にある事忘れているのかしら?」

 砂を吸い込んでいた黒の魔力がマヴロの前に壁の様に拡がり高速で飛来する木片や石を受け止める。

 黒い魔力に触れた竜巻は勢いが弱まっていき、コッキノの攻撃は霧散した。

「ああもう! マヴロにみすみす力を与えてどうするのさ。これだから赤の魔法使いは!」

「うるせー! ならお前ならどうにか出来るのかよ、ブレ」

「見てな!」

 ブレが叫ぶと、地面から水が吹き出した。

 吹き出した水は水柱となり、側面から高速でマヴロに向かって噴出した。

 マヴロは表情も変えずにコッキノと同じ対応をするが、すぐに表情を変える事になった。

 黒の壁を貫いてマヴロに直撃しそうになったからだ。

 咄嗟に避けた予想外の事にマヴロは少し驚いた表情になったが、すぐに笑みに変わった。

「マジかよ……」

 この僅かな出来事にコッキノは信じられないものを見たかの様に呟いた。

「驚いてないでアンタ達手伝いな! コッキノは赤の魔法で射出速度を上げる! キトリノは出来るだけ硬い粉状の物を見つけ出して水に混ぜる!」

 二人は言われた事を素直に聞いて、ブレに協力する。

 二人の協力を得られたブレの魔法は、矢の様に射出するだけだったのが、一本の糸の様に途切れなく出され続け、それが幾本にもなり黒い壁を通り抜けてマヴロに襲いかかる。

「どうなってんだよこれ!」

 コッキノがブレに聞いた。

「……はぁ、あんまり手の内晒したくないけどまあいいさね。水を圧縮して高速で打ち出すと物を撃ち抜く矢になるんだよ。とは言っても水だからね、硬すぎると無理だけど金属の粉とかを混ぜると貫けるようになるさね。単純に高速で削り取って穴を開けてるだけなだけど、使う粉の硬度が高くなればなるほど、貫けない物は無くなる。で、常時射出し放しにすると、なんでも断つ剣になるってね」

「いや、それにしても黒の魔力の影響受けてないのはなんでだよ」

「アンタの竜巻よりも速いんさ、単純に。黒の魔力は五色の魔力で一番遅いし、それに魔力は射出までしか関わってないから、黒の魔力最大の強みを発揮させられないんだよ」

「そうか圧縮して射出する魔法だから、出した後は魔力が関わってないんだ。だから黒の魔力の塗り潰し、相手の魔力を取り込むことが出来ないんだ」

 キトリノの言葉にブレが頷く。

「そう言う事さね。魔力の特色は概念的な物だけど、それを指向的に使おうとするには、使用者の思考が必要になる、だけど水の矢は速すぎるから集めるにしても魔法の対象にするのが間に合わないんさ」

「スッゲーじゃんブレ。流石最年長だけはあるな」

「ちょっと待ち、三人の中ではワタシだけど、一番年上はマヴロさね!」

「ほう、私が年増だと」

 攻撃音は続いているのに、沈黙が落ちた。

「コッキノ!

 ブレ!」

 二人は同時に非難する様に叫んだ。

「貴女達の健闘を讃えて戦乙女の二つ名の由来を見せてあげましょう」

「来るわよ!」

 キトリノの言葉と共に、前に跳び出した。


『蹂躙、でしたねー……』

『ですねぇ……』

 試合会場上に流れる白い雲を眺めつつ、先程まで繰り広げられていた闘いを二人はそう表現した。

 結局の所、どれ程強力な攻撃でも当たらなければどうということは無いのだ。

 マヴロがしたことは接近戦ただそれだけだ。

 だがそれが三人の魔法使いには効果が抜群だった。

 黒の魔法使いは黒の魔力の遅さゆえに、近づいて闘う傾向にあったが、それでも速い遅いが関係無くなるぐらいに近づいて魔法を放つという状態での近づいて闘うということだ。

 だが、マヴロは徒手空拳での戦闘が得意だった。

 そんな相手に遠距離攻撃が主体のそれも戦闘職では無い三人が敵う筈がなかったのだ。

 魔力の研究は長い歴史がありマヴロの様な魔法使いも幾人もいて対策も研究されていたが、マヴロの様な魔法使いは希少でほぼ机上の空論に近く使う機会がない技法を知っていても、使った経験がなければ役に立つ訳も無く。当然ながらその対策もマヴロは研究対策をしていた。

 マヴロはまず始めに射出台の水柱に近づいて使われていた魔力を奪取、自分の魔力に変換した。

 この時点で三人の戦法は崩壊した。

 接近された事により幾つもある選択肢を選ぶ時間を与えられない状況になり、咄嗟に出る行動は慣れ親しんだ魔力で構成された魔法だ。

 当然、魔力は奪われる。

 こっちは使えば減るがあちらは使っても減るどころか増えてしまう事さえあるという理不尽。

 勝てる筈が無い。

 三人が健闘している様に見えたのは、試合が早く終わっても三人の活躍が全く無くてもつまらないだろうというマヴロの気遣いだった。


「さてと、後一人だけど……。こーさーんーするかーい!」

 マヴロは大声で言った。

「する訳無いじゃない!」

 白い少女が森から出て来た。

「いいね、その威勢嫌いじゃ無いわ」

「ふん、その余裕、わたしに倒されても続けられるかしらね!」

 白の少女のあまりな強気の態度にマヴロは目を瞬きさせる。

「ふっ、ふはははははははっ! 良いね貴女。控え室の時から話をしてみたいと思っていたけど、試合後よりも今聞いた方が面白そうだわ。貴女、立候補したらしいけど、それは何故?」

「金の為に決まってるでしょ! 賞金と名誉、それに最強あんたを倒した実績あるあたしの魔法でとれる公開料、贅沢三昧よ!」

 マヴロは盛大に笑う。

「いやいや、こんなに笑ったのは生まれて初めてかも、最弱と呼ばれる特色が何も無い白の魔力でそこまで言い切れるなんて、怒りとか呆れとか通り越して貴女の事気に入ったわ。これが終わったら貴女を飼ってあげる、贅沢させてあげるわよ?」

「あんたからの施しとかいらないわよ。ま、そんなことにはならないし」

「そう、ああなんて怖いのかしら……本気でやらないと」

 マヴロがそう言うと、黒い魔力が体を包み鎧になった。

 手にはハルバートの形になった黒い魔力が握られている。

 本気の戦闘態勢から放たれる威圧に場が張り詰める。

「ふっ、ふん。どっからでもかかってきなさいよ!」

 圧力に多少怯みながらも白い少女、アスプロは威勢を張った。

 マヴロが駆け始めの姿勢になり、一歩を踏み出すと大地が砕け、馬よりも速いスピードでアスプロに近付いた。

 たった数歩でアスプロを黒いハルバートの射程内におさめる。

 遅いと言われる黒の魔力を使われているのか疑問に思ってしまうほどの速さでふり下ろされた黒いハルバートに向かって、アスプロは白い盾を作って受ける。

 その光景に誰しも白い盾が砕かれ地にふした少女を幻視したが、そんな結果は訪れなかった。

 むしろ想像すら出来ない事が起きた。

 黒いハルバートが後ろに弾かれ、持っていたマヴロは後ろに引っ張られ冗談の様に飛んで行った。

「こわ」

 恐怖がアスプロから溢れる。

 が、すぐに正気に戻って、高笑いをあげた。

「はっはっはっー! どうよわたしの魔法は、遠くに飛ばしてやったわー!」

 誰しも目を疑った、マヴロも呆然とする。

「何をした」

 普段ならしないであろう事をしてしまう。

「えー、分かんないんですかー、黒の賢者様がー」

 アスプロが煽るが、顔が紅潮してるのを見るに、興奮しすぎて何を言っているかわかっていない様だ。

「そうだな、驚きすぎて口が滑ってしまった。分からないことは自分で調べないとな!」

 再び近付いて黒いハルバートを振り下ろす。

 白い盾が弾いたが先程の様に後ろに飛んでいかなかった。

「今の感触は……衝突によって弾かれると言うより、逆方向に向きを変えられたと言う様な……。そうか、反射か」

「うそ、たった二撃で?」

 アスプロは人では無い何かを見る様にマヴロを見た。

「大発見だよ、君! 魔力はどの様に使うか意識しないとその力を発揮しない、特色が見つからない訳だ。放つでは反射は起こらないし、受けるでは受け止めるに意識がなっているから反射は発動しない。魔力だけの特色効果は意思が乗っているかいないかで変わってくるから、今まで誰も気付かなかったのか」

 マヴロの目が研究者のソレになっていた。

「貴女はどれだけ白の魔力の真実に近づいたんだ、それを見せてほしい」

 アスプロはたじろいだが、ひきついた口角を上げながら不敵に微笑んで見せる。

「全部知れるのは、あんたが負けた時よ」

「それは楽しみだ!」

 数十分間それは闘いと言っていいか分からない物だった。

 マヴロが知る全ての魔法を放ち、アスプロがそれを迎えうった。

 経験の差、実力の差、才能の差により、アスプロが反射出来ないこともあったが、それでも普通なら村娘程度では数分も持ち堪えられないだろう魔法の数々を凌ぎ切る。

 空の雲が厚くなった頃、マヴロを始めとして、試合を観る者全てがおかしい事に気付く。

 アスプロの魔力が尽きないのだ。

 そして、マヴロの魔力があり得な程に減っている。

 マヴロはその異常性に既視感を覚えて、すぐその正体に気が付いた。

「ま……、まさか、私の魔力を吸収している……?」

 その言葉に誰しもが息を飲む。

「残念でしたー、不正解」

 アスプロの返答に、安堵した者が息を吐いた。

「とはいえ、見ようによっては正解なんだけど」

「馬鹿な、白の魔力に関して見落としがあったのは事実、数多の研究者がそれを見逃し続けるなんて」

「いや、これはどんな賢者でも分からないって、それに気づけたあたしが天才だった言うこと。とまぁそれは置いといて、やっとあんたを倒せるだけの魔力が集まったわ。気付かれたらどうしよってヒヤヒヤしたわぁ」

「私を倒せるだけの魔力? 確かに今の私は貴女より魔力は少ないけど、この程度はハンデに過ぎないわ。貴女程度を倒すには十分よ見くびらないでもらおうかしら」

「あー、なんか勘違いしちゃってるけど、さっき言ったじゃない、吸収は間違いだって」

 アスプロは空を指差す。

「空? 何も無いけど」

「何を見てんの? あるでしょ」

 そう言って指を下ろすと、雲が降りて来た。

「雲? いや……え、嘘、でしょ……」

「やっと分かった? あれは白の魔力に変わったあんた達の魔力の塊。感知されにくいぐらいの高さに上げてように雲に見せかけてたの」

「あれが全部……。でもどうやって、白の魔力の特色が反射なら、反射で他者の魔力を奪える訳が無い」

「今種明かしするのは勿体無い気がするけど、どうせ、後で広めるんだし言っちゃおうか。知ってる? 色って光が反射してるから見えるんだよ」

 アスプロがいうがマヴロは応えない。

「でもそれって一つの反射なんだけど。もしそれが複数の反射ならどうなると思う? 規則性が無くメチャクチャに乱れた反射、あたしは乱反射って呼んでるけど、乱反射するとどうなると思う? 白になんの。つまりあたしがやってることは他色に乱反射っていう現象を付加して白色にしているって訳。だから同じ強奪だけど吸収じゃなく支配が正解」

「しかし、黒は光を吸収するはず」

「魔力の優位は魔力量と意思がのってるかでしょ。白の魔力は特色が無いけど、速さだけなら五色中で最速。つまり、黒の魔力に意思がのる前に意思がのった白の魔力の侵食を受けてるって訳。さて攻撃力が低いと言われている白の魔力でも、これだけの量があればどうなるんだろーねー」

 マヴロは愕然としたが、残っている黒の魔力を全て出して壁を作る。

「勝負!」

「いっけー!」

 黒と白の魔力が激突する。

 マヴロは少しでも魔力を吸収しようとしたが、白の魔力の侵食が速さに耐えきれず白の魔力が全てを飲み込んだ。


 その日歴史上初めて白の賢者の誕生した。


「お姉様」

 黒の戦乙女が白の賢者をそう呼ぶ。

「え……あの、おねーさんの方が年上じゃないかと……」

 緊張を紛らわせる為にキャラを作っていた少女は素でそう言う。いや若干恐怖が混じっているか。

「私を倒せたんですもの、私より強い人はお姉様です」

「いや、意味が……」

「私小さい頃から決めていたんです」

「な、何を……」

「私を負かせる者が現れたら、身も心も捧げようって。一緒に王宮で暮らしましょう」

 白の賢者は全力で逃げ出した。


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