47話 選定戦当日と緊迫の地下会場
ついに選定戦当日がやってきた。
日の出とともに起き、身支度を済ませ、朝食を食べ、ユエルやムエルニと共にお喋りをして、時間になると宿を出る。道中でミランと合流し、4人でセブンズミラーまで向かった。
何も変わらない日常。いつもと同じ道を歩く。皆とお喋りをしながら向かう。変わらないはずなのだが、どこかしら緊迫感が漂う。空を見上げると今日は雨の降りそうな曇り空だ。
従業員用出入口から入ったあたし達は、案内人に呼ばれた。
「あなたたち4人は選定戦のメンバーとなります。各自参加資格として、このバッジを制服の胸に付けてください」
渡されたのはギルド紋章。
バッジを胸につけると、そのまま地下に案内された。
地下一階でやるのかと思いきや、扉はスルー。
廊下をそのまま進むと、さらに地下へと下りる階段があった。
上に上る階段ではなく地下2階へ進む専用の階段っぽい。
道理で以前探しても気づかなかったわけだ。
「こっちに来るのはあたし初めてかも」
「自分もです」
「……私もだ」
「私はこれで2回目かしら。多分以前と同じところでやるのかしらね」
地下1階と変わらない窓のない廊下。
壁に埋め込まれた魔法石が淡い光を放ち、昼間のような明るさなのは地下1階とも変わらない。
少し進むと両開きの扉があった。
あそこの先が会場なのだと直感で判断できた。
案内人が開けると、そこはだだっ広い空間。
第一印象は“簡素な独房”と思えた。
シャンデリアも無く、壁や床は長方形の石畳み、窓も当然ない。
だけど視界は良好で奥まで見えている。
入口とは違い、奥には扉が一つ、高台のように見下ろせる場所、その上に教壇が1つ乗せられていた。
「意外と人数多いですね」
あたし達と合わせてざっと20はいそうな感じだった。
先に会場に入っている人達は、数人で固まっている者や一人でいる者など。
この人達が申し込みした時の人なのだろう。
あたし達はこの人達と勝負するんだ……。
「ユエルそれは違うわよ。意外と少ないですの」
「そうなんすか?」
「ギルド職員はこの10倍以上はおりますの。何かしら参加しない者がいる。このギルドの幹部になるかもしれないのに、それをミスミス逃がすなんてありえませんわ」
「……全てはムエルニさんと同じとはいかない」
反論するようにミランは言った。
「そうかしら? まあ怖気づいてしまうって人もいるでしょうけど」
ムエルニの言葉は、まるで周囲の参加者達を嘲笑うかのように響く。その傲慢な態度は、彼女がこの舞台に立つことにどれほどの自信を持っているかを示していた。
「それは仕方がないこと。誰しも持ち合わせていない」
「誰しも持ち合わせてねえ……それは、あ、な、た、みたいな人がいるからでしょ!」
「ただ私は事実を言ったまで」
今にも喧嘩が始まりそうな険悪な雰囲気を出す二人。
だけどそれを察してかユエルが止めに入った。
「ちょっとちょっと、今は互いに喧嘩しちゃだめっすよ」
「そうだよ。落ち着いて二人ともなんで……」
「……ッッ。ふん! 私、時間になるまであなたたちと離れておきますの!」
そういってムエルニはあたし達から離れていった。
今朝は仲良さそうにしていたのに、どうして……。
「……すまない二人とも」
「ううん、大丈夫」
「そうっすよ。ムエルニはただ単にお腹が空いててイライラしていただけっすから」
「ユエル、それは違うと思うな」
「……ただ、彼女の言葉に同意できない部分があったのも事実……すまないが一旦一人になって冷静になる」
ミランはそう言ってあたし達から離れた。
「どうして……」
「と、とにかくフェル。自分たちは二人が戻ってきたら仲直りする作戦考えましょう」
「ユエル……」
そうだよね……。
ここで落ち込んでても仕方がない。
二人が戻ってきたときに、あたしとユエルがしっかりしなきゃ。
「そうだね。あたしたちが二人を仲直りさせなくっちゃね」
あたしとユエルは気合を入れるように腕を掲げて意気込んだ。
すると1人がこちらにやってくるのが見えた。
「大変だったね」
声の主に顔を向けると、あたし達と同じ参加者が話しかけてきた。
「いえ、ムエルニとミランは互いに主張したかったことを言ったので、間違ってはいないと思います」
「だけどあの二人、性格的に結構きつい所あるよね」
「まあそうですけど、二人は信念持ってるのでかっこいいですから」
事実を言えばこの人にも、ムエルニやミランが本当はそうじゃないってのが分かってくれるはず。
「そ、そうか。ちょっと話変わるけど、今回のギャンブルどう思う?」
「難しいっすね。自分は聞いててさっぱり」
「そうか、それで君は?」
「ん~、同じ意見で確かに難しいなって言うところはありますが、お客さんが来れば来るほど注目度があがるわけだし、その時に賭ければ儲かりそうな気がします」
「まあ、そうなるよね。だったらどこが儲かりそうかってあの二人から聞いてない?」
「聞いてませんね。あの二人に直接聞いたらどうですか? もしなんでしたら、あたしたちが間に入りますよ!」
気難しいけど、話をすればきっとわかってくれるはず。
「い、いやいいや。ごめんね変なこと聞いちゃって。まあお互い頑張ろう」
「はい! お互い頑張りましょう」
あたしは話しかけてくれた参加者の人に手を振った。
「ユエル、どうしたの?」
「なんでもないですよ。フェルはそのままいてくださいね」
なんだか呆れられてるようなそんな気がして、あたしは?を思い浮かべた。
その後、何度か別の参加者に話しかけられたが皆に同じような対応をしたが、誰も断るように逃げていく。その度、ユエルに暖かい目で見られるのは気のせいなのか。
しばらくして、会場には人数増えたのか約30人ほどになった。
そして、奥の扉が開かれ、入ってくる人物に会場にいる皆が驚愕した。
教壇の前にリーシャ様とダリオさんが立っていたからだ。
「リーシャ様! よくご無事で!」
「ムエルニ、あなたも予想通り参加していたのね」
「はい、勝ち上がって絶対返り咲きます!」
「ふふ、期待しているわよ」
リーシャ様は視線を会場にいるあたし達に向けていた。
人数の確認なのか、期待の眼差しなのかはわからない。
「さて、ここにセブンズミラーギルド主催による選定戦を開催を宣言します」




