45話 市場投資ギャンブル《トレンド・マーケット》とルール説明
「【トレンド・マーケット】。つまり投資と言う役割、一定時間で数値はどんどん伸びていく。長期的に見ればどうあがるのか下がるのかを見極めて賭けるというわけだ」
「おい、それだとよくわからんぞ。もう少し詳しくわかりやすく言えよ殴るぞ」
「言うから勘弁してくれ。数値の変動には“注目度”が必要で、その対象はこのセブンズミラーのギャンブル台全てだ」
広間がざわつく。
「注目度とは、客がその対象物の視線によって数値化され、それが映像によって出されるわけだ。実際に見せたほうが早いな」
映像には数値と実際に対象の台の名前が各種だされている。
各台の下に数値が表示され増減して、即座に反映している様子だった。
「このように君たちが見ている台の数値がここに表示されているわけだ。スロット台の今は▲30の数値、あ、▲100の数値まで上がった」
「私も初めて聞いたときはまさかこんなことができるとは思わなかったぞ。流石はルクスだ」
「い、いやぁ」
リベル様がルクスさんを褒め讃えてる。
そんなルクスさんは顔は見えていないが、声からして嬉しそうなのだとわかる。
ルクスさんがこの仕掛け作ったんだ。すごいなあ……。
「とまあ、参加者はこのギャンブルで各種の台に資金を賭けてもらう」
「まさか、この数値が動いてるのでチマチマするんじゃないだろうな?」
「ライネス……残念ながら正解だ。君はこういうのには向いてないから話だけ聞いてくれ」
ライネスは頭をかいた。
「勝利条件と敗北条件は、単純に資金をできるだけ多く稼いだチームが勝利。資金が底を尽きたり、時間までに稼げなければ敗北だ」
「どうやってその資金増やせるのか教えろ、ダリオ」
「賭けた数値が基礎となり、数値が増加すれば賭けたときの資金は増え、逆もまた然り」
「単純だな」
「そうでもないさ。市場は動くつまりは数値も動くから、下手をすればすぐ資金が底を尽く」
ライネスは難しそうな表情で聞いている。彼女の性に合わない話が続いているのだろう。「面倒くさいな」と呟き、ライネスはもう一度頭を頭をかいた。
「次に操作画面の方法を教える。画面には数字を増加させる+、-、出資、回収の計ボタン4つ。これで操作してタイミングよく押して、エントリーさ」
「ほーお、それを押せばどうなるんだよ」
「+で出資額の増加させ-で減少。出資した金額が投資額として確定すると、画面には『エントリー確定』と表示が現れる。ただし連続で押すことはできない。そして、回収ボタンを押せば、今投資している額を回収することができる」
「おい、なんだかよくわからんが、要するに賭けて増やせばいいんだろ? 細かいことは後で考える!」
「その考えで間違ってはないよ。例えば全資金が100持っていたとして、90出資して投資開始。残り10は余剰資金となって、この数値は実質命綱。数値が10変動した場合、余剰資金に10増え、減れば0。それ以上減ればゲーム終了」
「あん? 余剰資金と資金は違うのかよ、ややこしいな」
「一緒って認識で問題ない。ただ資金=余剰資金だから底を尽きれば負けだ」
「ほう、余剰資金ってのがある状態で数値が増えてるときに回収がいいんだな!」
ちょっと、こんがらがっちゃって難しそう……でも本当にあたしにできるのかな。投資なんて村にいた時は考えたこともなかったし。
けど皆がいるから、皆と共有して戦略立てていけばいいよね!
「なに茶番してるんですかね、ライネスは」
ユエルは冷めた目で見ていた。
「とまあ、ここまでルール説明は済んだけど他になにかあるかな?」
「まだ大事なことがあるじゃないか。開始時刻と終了時刻、ゲームの初期資金」
「あー、確かにそうだった忘れてたよ。さすがリベル、頼りになるな。そうだな……各チーム共通でゲーム初期資金1000でいこうと思う」
「なるほど、確かに1000なら数値の乱高下が発生しても、よほど資金投資してない限り問題ないというわけだね。ただ資金が仮に1000投資して上手く100儲けたあと全額回収したらどうするんだい?」
「そのときは1000に100の利益が含まれるから1100となって余剰資金と使えるわけだ」
利益は増やせば増やすほどいいってわけね。
「そして時間なんだが。朝から開始して夜中に終了する。参加者は別室でやってもらうので、鐘は聞こえないだろう。そこで画面に12個に分かれた球がある、それが一つずつ無くなっていく。最後の一つが無くなると終了と言うわけだ」
ダリオさんの言う通り、画面に映し出されたのは、羅針盤のように12個の球が等間隔で置かれた円だった。左上から順に、上、右、下と、一周するように光が消えていく。やがて、左の1個が消えた。
「最後にこのゲームの要であるダイス説明をするぞ」
画面にダイスボタンが押されると1つのダイスが現れた。
ゆっくりと回転しているが、なんの変哲もない6面ダイス。
「このダイスは情報ダイスと言うもの。使用すれば、出た目が1〜3だった場合、ライバルチームの投資情報が自分の画面に公開。4〜6だった場合、市場の今後の動向が公開される。市場は確実なものじゃないから、そこだけは注意。あと、どちらも開示時間制限があるからその間に覚えといてくれ。そうだな試しにしてみようか」
ダイスが回転、しだいにゆっくりとなり2に止まる。
するとエラー表示が現れた。
「あれなんでだ? ルクス教えてくれ」
「そ、それは。他に対象者がいないから」
「あーなるほどね。なら市場情報っと」
ルクスは再度ボタンを押して球を転がすも、1~3ばかり出るせいかエラー表示の荒らし。
次第に顔がムキになると、リベルが代わりに押した。
すると5が表示されるも、エラー表示が現れる。
「なんでだよ!」
「そ、それは。まだ設定していないので」
「なら先に言ってくれよ……当日はちゃんとできるんだよな?」
「う、うん。余裕」
「ってなわけで、ここまででトレンド・マーケットのルール説明は終わり。参加者は紙に書いて提出するんだぞ」
上空に映った映像は音もなく消えた。
残るは職員達によるざわめき。
「すごかったね」
「そうですね。自分ルールはさっぱりわかってませんでしたけど。とりあえず資金を増やせば勝ちってことですよね」
「そうなるね。ミランはどう思う?」
「……相場が難しい」
「あー、注目度だもんね。確かに人気の台と不人気の台があるから、上手く投資しないと損してお金減っちゃうからね」
「それだけじゃない。客は参加者を見ることが多いからすぐに変動する」
「あーなるほど。ギルド全域に映し出されるって言ってたから、ポーカー台でやってる人たちでも、そっちに注目しちゃうよね。確かに難しいね……ムエルニはどう思う?」
なにかを考えているのか、ムエルニは反応せずに黙り込む。
「……え? ああ、そうね。確かに相場の動きは不明ね。ただ人気の台なんかは比較的、想像がしやすいの。ただ変動という点に置いてはミランが言っていた通りかしら」
「とりあえず自分はわからないので、そういうのは3人に任せるっすよ」
「あたしも正直自信ないから2人に任せちゃうかも」
「……大丈夫……ムエルニさんがなんとかしてくれる」
「はぁ……そうなるわよね」
ムエルニは飽きれるようにため息をついた。
喜び意気込んているあたし達は気づかなかった。
本当の勝負はこのギャンブルのあとだと言う事を。
ただそれに気づいているのは、この場で一人を除いては。
「あの馬鹿、本当にえげつないことするわね。性格が出ているの」




