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純白のギャンブラー~王都カジノの少女賭博録~  作者: レブラン
4章

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42話 休日の終焉と、戦いを告げる訪問者

※この話は作中34話と35話に登場したゲームの流れを載せるもので本編は一切進みません。

「今日が休みの最終日ですね~」


 ユエルが暇そうにあたしの部屋の床で胡坐をかき、ゆらゆら揺れている。

 あたしはベッドに座って、手の届く所にユエルの頭があったので撫でた。

 されるがままにしているが、ただ撫でられるのには嬉しそう。


「そうだね~」とあたしは応えた。


「フェルは昨日からご機嫌そうですね~。なにかあったんですか~」


 マヤ姉と会えたのだ。嬉しさは次の日まで続いていたのか、表情に出ていたのかはわからない。


「ん~、そんなことはないよ~」


 嘘だった。大切な友達に話したいが、マヤ姉は言っちゃいけない雰囲気があったので言えない心苦しさもあった。ただはぐらかすしかなかった。

 あの時マヤ姉が言っていた「組合にも手が及び、あたしの仲間にも……」と。マヤ姉の言ってたことが本当だとしてもユエルは違うと信じたい。


「そうですかね~」

「あのねユエル、ちょっと聞きたいことが」


 そのとき扉が開くとムエルニが突如、入ってきた。

 手にはコーヒーカップと受け皿を持ち、部屋に備え付けの椅子にドカッと座る。

 ズズズと音を立て、お上品と言うにはほど遠く、眉間に皺を寄せ苛立ちを募らせていた。

 なにかあったのかが伺えるが、あたし達は無視をして雑談を続けた。


「そういえばフェル~」

「どうしたの?」

「昨日すっごい情報あるんですよ~」

「どんなのこと?」

「え~とですね~、とあるカジノで女性客がいたんですが~、その人なんとブラックジャックを当てたんですよ~」

「へ~」

「それもダブルダウンという荒業で~それを聞いてまるでフェルみたいだな~ってなりました~」


 あたしは撫でてる手を止めた。

 昨日のカジノの条件が当てはまるからだ。

 やっぱりマヤ姉の言ってたことは……。

 あたしの中で疑念が渦巻いてしまう。


「へ~……それってすごいの?」

「いや~どうでしょう。知り合いが言うには久々に見た~とか言ってました~」


 知り合い……それってユエルは知らないってことでいいよね?

 安易に友達を疑っちゃだめだよね。

「そっか~」そう言って、あたしは再度撫でるのを再開する。


 ムエルニはコーヒーを飲み終えると、カップを置いて部屋を出た……かに見えて、すぐに戻ってきた。銀ポットと空のコーヒーカップ三つを魔法で浮かせて、ゆっくりとテーブルの上に置いた。

 確かあのコーヒーカップは以前、ムエルニが所持していた物なのを見たことある。

 再び座ると、ポットからコーヒーをカップに注いだ。

 それからムエルニの隣にはもう1脚の椅子もあった。

 各部屋には椅子が1脚だけ備え付けられているのだけど、ユエルを座らせるのかな?

 ただなにも言わず、無言で今度は音も立てず上品にコーヒー飲んでいるんだけど。


「あのムエル」


 なにか聞いてほしいのかなと思い、あたしがそう呼びかけようとしたら再び扉が開く。

 そこにはミランがいた。


「ミランどうしたの?」

「フェルを探していた」

「そっかー……あ、ミランもそこに立ってないで入ってきなよ」

「……いいのか?」

「うん!」


「わかった」そう言い、部屋に踏み込むが立ち止まる。

 ムエルニがミランを注視していたからだ。

 一挙手一投足、観察しているのだろうがムエルニは何も言わない、互いに無言。

 そしてスルーしてあたしの隣に座る。

 すると、ムエルニはコーヒーを置き「ミラン」と声をかけ、隣に置かれた椅子の座面にポンポンと叩いた。

 事前に椅子を準備していたのは、こういう時に誰か来るのを予見していたからなのかな。

 無言の圧力に屈したからか、ミランはベッドから立ち上がると椅子へと座った。

 座らされたミランは表情に出さないものの、どこか困惑している様子なのが見えた。

 代わりにムエルニは満足して、コーヒーを(すす)る。

 しばしの沈黙。


「流石にちょっと狭かったね」


 沈黙を破るようにあたしは皆に語りかけた。


「この部屋に四人もいますからね~」

「……仕方がない。大勢がいる想定にはなっていない」

「そうだよね。あたしもこれだけ人が来るなんて予想してなかったし」


 ムエルニが空のコーヒーカップにコーヒーをそれぞれ注いでいる。


「わあ、美味しそう。ムエルニ、もらってもいいの?」

「ええ」

「皆、いただこう」


 立ち上がろうとした矢先、三度扉は開かれた。


「おーおー、こんな所にお前らいたのか」


 ズカズカと入ってくるのはライネスだった。

 巨斧は持っていないが、体が大きいためか入ったら部屋に圧迫感が生まれた。


「狭っ苦しいなぁここは。ん? お前、ダリオの女か。ここにいるってことはフェルと仲良くなったのか」


 ライネスの圧にミランは固まっていた。

 目を揺らし、対処もどうすればいいのかわからず、混乱している感じだ。

 助けを求めるようにあたしに視線を向ける。

 まあそうなるよね。


「ミランはあたしたちの友達だよライネス。それにこの前、ミランとも会ったよね」

「あー、そっかそっか。あ、喉渇いてたんだったわ。この匂いはコーヒーか、まあいいわ貰うぞ」


 許可ももらわず、コーヒーカップを手に、水を飲むように一気に飲み込んだ。

 そのままベッドの上に座り込んだ。

 ミシっと嫌な音が聞こえたと思ったが意外と耐えた。


「ちょっと、ちょっとライネス。フェルのベッドの上に座らない。壊れたらどうするんすか」

「まあ壊れたら壊れたで新しいの買えばいいじゃねえか。それぐらいあるだろ」

「いや、ダメでしょ」


 ライネスの勢いにあたしはなにも言えずにいた。

 ただ代わりに烈火の如く怒る人物が一人。


「あ”あ”あ”ー、ライネス! あなたねえ! あなたのせいで昨日からイライラしっぱなしなの!」

「そうか……ムエルニお前がそんなに怒るなんてって、まあいつものことか」

「ここに来てからも思い出してイライラしてたけど! ようやく落ち着いたと思っていたのに! あなたが来るのだから! 煩くて怒りも爆発しますの!」

「まあ、俺様はお前に嫌われてるからな」


 ガハハと笑うライネスに対してムエルニは地団太を踏むように怒りを表す。


「せっかく落ち着いて、皆様とお茶……いえコーヒーを飲んで語らいたいと思っていたのに!」


 深呼吸して落ち着かせると冷静に聞き返した。


「それで、なんであなたはここに来たんですの? あなたは来る必要性がないじゃないの」

「なんだムエルニ。お前察しが悪くなったか?」


 沈黙するかのように考え込むと、すぐにハッとした表情になる。


「まさか、選定戦の詳細がわかったとか?」


 ライネスはニヤリとした表情をした。


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