38話 セブンズミラーの全容と、誇りをかけた叱咤
あたしとユエルとムエルニは朝食を終え、一息ついた。
ダリオさんはムエルニに会うと、ふざけた事を言ってムエルニを怒らせるも、そそくさとどこかへ消えていった。
どうして残っていたのかについては食事中に説明した。
リーシャ様の部屋で退室したあと待っているときに眠ってしまったこと、あたしの言う事なので二人は納得してくれた。
「けど本当、無事でよかったですね。自分心配してたんですから」
「あんたはグースカよだれ垂らしながら寝てたでしょ!」
「そんなことはないっすよ! こう、祈りを捧げていたらいつの間にか朝になっていたところにフェルが帰ってきたんすから」
「それが寝たって言ってるんでしょ!」
「二人とも心配かけて本当にごめんね」
二人に心配かけていたことに対してあたしは反省していた。
ムエルニはフンっと鼻を鳴らしてそっぽを向き、ユエルは「無事だったんだから平気」と言った。
「そういえば、あのギルドでルクスさんに会ったけど、ムエルニは会ったことあるの?」
「あーあの子ね。初めて会ったとき、なに考えてるのかさっぱりわからなかったわよ。私が見つめたら何故か逃げるように消えたわよ」
「ムエルニの顔が怖いっすからね。そら逃げますよ」
「なんですって!」
「ほはー、ほへー」
ムエルニは「全く」と言って、ユエルの両ほっぺを引っ張り続ける。
そんな光景に微笑ましくなり笑う。
ほっぺを離すと、ユエルは痛がる素振りを見せる。
「しっかし、この休みの日なにして遊びましょうか。自分せっかくなんで他のカジノギルド行ってみたいっす」
「ブラックローズね。他にもあるけど、あそこもうちと同じ大手ギャンブルギルドって感じかしら」
ブラックローズ、黒い薔薇って事かな?
なんだかカッコいい響き。
「そういえばセブンズミラーって名付けはリーシャ様だよね?」
「そうね。あのお方が立ち上げた際に名付けたって聞いたかしら」
「なんでセブンズミラーなんすかね? 七人がいるんすか?」
「名前の由来は聞けてないけど、上位七人構成のギルドになるって」
「七人……リーシャ様にライネス、ルクスさん、ラングレーさん、ムエルニ……五人しか見てないや」
「今は私が抜けてるけど。そうね改めて詳しく言った方がいいわね」
ムエルニは周囲を確認する。
宿にはあたし達三人しかいない。店主はいるが、察して離席してくれた。
ムエルニは指を一本ずつ立てて、説明し始めた。
1人目――リーシャ・ウーナ・サリエント。セブンズミラーのトップにて創設者。ギルド統括責任者。
2人目――ルクス・ルウェン。ギルド施設内、全体の整備担当かつギャンブルに関する魔法開発担当。ゴーレムや魔法石関連、ギャンブル台に使われる魔法など手掛ける。地下広間も空間魔法によって拡張しているらしいので、相当な手練れと言える。
3人目――ダリオ・ラングレー。ギルドの資金管理担当。現在は資材も含めて担当している。ギャンブルだから収支に関する統括。客に儲けさせすぎないための調整屋。
4人目――ライネス。ギルド内外の武力担当。内部で揉め事や暴力沙汰があれば出動して収める。外部でも揉め事、つまり裏切り行為や職員またギルドに関わる事があれば出動。
5人目――リベル・マリスター。王国騎士団長。普段は王国のために騎士団として活躍している。ただし、王都内に蔓延る悪を殲滅するために国王も活動を許可している。
6人目――クロウズ・ネスチャー。対外ギルド戦のメンバー、他ギルドとのギャンブル対決する際の一人。
7人目――現在空白(代行:ダリオ・ラングレー)。ギルド資材管理担当者。ギルドで使う備品、つまりテーブル、椅子、トランプ、コイン、ダイスなどを請け負う。ムエルニが以前イカサマに使った、ゲルムで作られた木のテーブルもそうなる。
それぞれが役割をもって動いているのがわかる。
「リベル様がまさか幹部の一人だなんて」
「あの時、リーシャさんと一緒にあそこで来たのも納得ですね」
ムエルニが驚きながら立ち上がる。
その際に椅子は後ろに倒れてしまった。
「あんたたち、あの人に会ったような言い草じゃないの」
「実際会いましたよ。ねー、フェル」
「うん」
「ちょ、ちょっとなんで会えたのか教えなさいな」
そう言いながら倒してしまった椅子を元に戻して座る。
あたしがここに来て、最初にスリに遭ってからバニーカジノでの起きた出来事を説明した。そこで王国騎士団のリベル様とリーシャ様が来た事、勝利までことの顛末まで話すと、ムエルニはウットリした様子で聞いていた。
「まさにパーフェクト! 流石リーシャ様! それに比べてその男は!」
「あの時は大変だったよ。そして次の日に冒険者組合に向かってユエルと会えたの」
「自分、直感だけは鋭かったので。あの時フェルに会えたのは運が良かったですよ。本当、遠くで見てたときは「何あの子すごく強い!」ってね」
「あたしも会えて嬉しかったし。こうして友達にもなれたのは嬉しかった」
ユエルはあたしに褒められるのが嬉しかったのか、照れながら頬をかいた。
「そして、薬草採取の依頼を受けているときに初心者狩りに遭い、ライネスが助けにきてくれた」
「あの馬鹿、出かけたと思ったらそんなことをしていたのね」
「その時、ライネスとのギャンブルをして勝利したんですよね。フェル」
「うん、あの時は上手く薬草の知識が役立って良かった」
「そのあとライネスに案内してもらってセブンズミラーに着いて、ムエルニに初対面。いやー、あの時のムエルニは生意気でしたが、今はおとなしくなりましたね。いや、まだ怒って」
「はぁ! 誰が生意気よ! あんたやライネスみたいなのがいるから苦労するのよ!」
ムエルニは恥ずかしそうにしながらも、ユエルの頬を思いっきり引っ張り、ユエルは自分の頭に指を二本立てていた。
二人の光景を見て思わず、ふふっと笑ってしまった。
当時の光景を思い出すと、本当にムエルニの印象は180度変わったと思う。
「ふぉういえば、へきがひきわくあいてるとひってひたけど、ふぉうきめるの?」
頬から指を離すと、テーブルの上に置いてあるコーヒーを一口飲んだ。
ムエルニは一息つくと口を開いた。
「選定戦よ」
「選定戦……そういえば、あの先輩職員の人も言ってたね」
「さっき言ってた私の席がフェル、あなたに負けて空いたのだけど、ここに座るために決めるための選考。それが選定戦」
「どうやって決めるの?」
「一言で述べるなら、ギルド職員によるギャンブルを行い、勝者の一人がそこに座る」
「まさか全員で?」
ムエルニは首を横に振る。
「自由参加。ただしセブンズミラーの席というのはそんじょそこらのものとはわけが違う。王国お墨付きであり、買い物をすれば優遇。高級なホテルにだって泊まれて、貴族とのコネクションも持てるし、王国行事への招待も受けれられる。相当価値の高いもの」
「自分、考えただけで頭がクラクラしますよ」
ムエルニは無視して続けるように言う。
「それだけじゃなく幹部なんだから、カジノ収益の一部分配、ギルド施設の専用フロア利用権、ギルド資源へのアクセス権など、このような感じ。わかったかしら?」
「とてつもなく……すごい偉い人になるってことぐらい」
「……間違ってはいないのだけど、なにユエルみたいなことを言ってるのよフェル」
「だってすごくてわからない……」
「はぁ……まあいいわ。これがルクス、ライネス、クロウズ、リベルさんの席なら誰も立候補しなかったでしょうね」
「確かにその四人なら専門外すぎて無理っすね」
「あんたはどこも無理じゃないの」
とにかくすごい人になれるってのだけはわかった。
そんな席に座り続けたムエルニはすごいんだろうな……。
あたしはそんなムエルニをギャンブルで負かし降ろした。
「あんたもしかして同情してるわけ?」
「ご、ごめんなさいそんなつもりは」
実施同情しているわけではない。だけどあたしの態度からしてムエルニの癪に触ってしまったのか、ムエルニはみるみると怒りの表情を見せ始めた。
「馬鹿にするのもいい加減にしなさい! あなたは私に勝った! 実力で! それを誇らないなんて、あなたは私を見下してるのと同じ!」
ムエルニは怒りに任せ机を叩きつける。
「あなたをライバルだと思っていたのだけど、私が間違いだった。私はあなたに失望しましたの」
そう言ってムエルニは立ち上がりあたし達から離れようとする。
そんな彼女の腕をあたしは掴んだ。
「まって……確かにあなたの言ったことは間違ってなかった。幹部特権を聞いて畏れおののいたのも事実。だけど、それ以上にムエルニが思っていたのに対してあたしが間違いだった」
「本当に?」
「うん……ただ思ってしまったのは事実で言い訳しない。それはごめんなさい」
「許してあげる」そう言いながら席に戻った。
「まっ、これで一件落着ですね。フェル、ムエルニ」
ムエルニは再び無視をしてコーヒーを手に取り飲み始める。
「そういえば選定戦なのだけど、これはどんなギャンブルで決めるの?」
「わからないわ。以前、私が参加したときはダイスを使ったゲームだったはずなの。中にはオリジナルではなく既存のギャンブルからも出されると思う。次の選定戦で何をやるかは確定はなく、やるギャンブルもまた変わると思うから、これと言った断言できる要素は答えられない」
「そっかー……ならサーティーンズ・デスみたいにオリジナルギャンブルが来る可能性があるんだ」
オリジナルが来たら、その場で考えなくちゃいけない。
だけど既存ギャンブル来たら、この前みたいに教えられながらだと不利。
ただオリジナルは……?
一つ確認しなくちゃならないことがある。
「サーティーンズ・デスって既存ギャンブルから応用したものだよね?」
「そうね。ポーカー、ブラックジャック、バカラを合わせたような感じ」
「ならあたしにギャンブルを教えて」




