26話 運命のデックと、二枚の死神
「では5戦目を開始するわね。現在の戦績はあなたたちどちらも1勝ずつ。どちらかが勝ち上がれば勝者となり、引き分けなら延長戦に入るわよ」
配られた手札のカードは8、7、Qの合計27。
数値だけを見ればまだ守れる――。
フェルの視線がこちらに刺さり、心臓は早鐘のように打つ。
きっと冷静に私の心理を読もうとしているはず。
だけど両者コインもない。
それは相手も理解しているはず。
「カードの排出ターンよ」
今のカード合計は27、数字としては間違いなく安牌。
3枚追加すればジョーカーが手元に2枚来る可能性だってある。
だけど、下手をすれば来ない可能性だってあるし崩れて安全圏外に行く可能性も……。
下手に手を出せば即失策の究極の二択。
頭の思考が追い付かない、苦痛に顔が歪む。
これまでここまで追い詰められることはあったのか。
「3枚を……いえ、しません」
宣言した声に迷いはない、手が微かに震えている。自覚できるくらいに。
「あたしは……3枚追加で」
彼女の手札が増える瞬間、私の鼓動も増幅する。
頭の中で計算が走る。残り少ないデックから3枚引いて、ジョーカー2枚を同時に引く確率――理屈上は可能だが、その可能性は――……。
配られる3枚のカードを拾い上げ、視線をカードに注ぐと、彼女は笑う――その笑みは、甘くない、毒を含んだ花のよう。
まさか……。
「ではコインの宣言をムエルニ」
私の手は固まる――出せない。
コインは全部排出した。
「……ありません」
「そう、なら次はフェル・ラグンダルトあなたのコイン排出を宣言してちょうだい」
手札にはジョーカーもなく、ただの数字の入ったカードのみ。
もうコインもない。
私の手札にジョーカーがないんだからフェルだって回って来ないはず。
そうよ、きっとこないのよ。
このまままた引き分けを。
「あたしは……」
私はそこで思考が停止した。
彼女は2枚のカードを取り出して見せてきたからだ。
2枚のジョーカーを。
――私の中の時間が凍りついた。
「2枚のジョーカーでムエルニさん」
だめ……。
「あなたのカードを」
嫌……。
「2枚捨ててもらいます」
目の前で、2枚のカードが私の手からゆっくりと消えていく。
心臓が凍りつく。鼓動だけが、異常に早く耳に響く。
手札の重さが、指先にしっかり残る。
なにこれ……。
私は目の前がゆらゆらと波打つような揺れる感覚を覚えた。
頬を流れる熱い感触に私は涙を流しているのだと気づく。
「ムエルニ合計数7。フェル・ラグンダルト合計数38。サーティーンズ・デスはフェル・ラグンダルトの勝利」




