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純白のギャンブラー~王都カジノの少女賭博録~  作者: レブラン
2章

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20/25

18話 4戦目信頼と不安

「再びユエル・タニア」


 1巡したからか、ユエルから始まる。

 ユエルが配られた手札を見てムムムと難しそうな顔をしていた。

 そんなユエルにあたしは先に聞かなきゃいけない事がある。


「ユエル」ユエルはあたしを見る。

 それはいつものキョトンとした表情で。


「改めて聞きたいんだけど、あのラウンジで話してた事は本当?」

「はい、ここに入団できれば最高ですよ!」

「わかった。なら……あたしを信じてくれる?」

「よくわかりませんが、フェルの事ならなんでも信じますよ」


 ユエルの即答に、あたしは決心するように頷く。


「ありがとう……ユエルの手札をこの場で見せてくれる?」

「なっ! 手札を公開ってそれは反則でしょ?」


 あたしの言葉に当然ムエルニさんは台を勢いよく叩いた。


「どうして? ルール説明には手札公開してはいけないなんて一言も説明されてませんよ?」


 あたしは冷静に淡々と述べた。

 ルール的にも間違っていないはず。


「確かに説明はしていない。けど暗黙のルールと言う物があり、手札を見せないからこそ面白い醍醐味があるんですの」

「そうね。進行役として私もそこまで堂々と、通しのイカサマ宣言をするのは認められないわね」


 リーシャ様もムエルニさんのことに同意した。

 当たり前だよね。あたしでさえそんな事を言った人をいれば苦言を言うかも。


「そう、ですか……残念です」


 わざと落ち込むように声を小さくし、表情も落ち込ませた。

 そしてそのまま台をトントンと2度ほど叩いた。


「イカサマできてるこの台が可能なら、あたしの意見も通ると思ったんですが……」

「そ、そんな嘘を通じるわけがありませんの! 負け惜しみ! 勝てないと思っているから私をイカサマしたといっているんですの」


 声を荒げたて、あたしの言葉にムエルニさんは睨みつける。

 明らかな動揺を見せていた。


「イカサマなんてそんな下劣な……っ!」


 そのままあたしに突っかかりそうな勢いで、更に声を立てて抗議しようとすると、リーシャ様に制止させられた。


「続けてちょうだい」


 リーシャ様に止められたムエルニさんは、苦虫を嚙み潰したような表情で席に大人しく座った。


「はい、この台の役割がなにか。そして三巡目にて使われたとあるカード」

「ふぅん、どう言う事かしら?」

「台と言うよりも使われてる木ですかね。ゲルムと言う特殊な木。通常の地表とは違い、魔力濃度が濃い地域の近くに生えるといわれているとか。村にいた際に来ていた商人の人にこれと同じ材質の木を見せてもらったんです。この木は魔力を通しやすくする材質で出来ているんでしょ?」


 あたしは視線を向けた。

 向けた先の視線は誰かは明白、続けるように言う。


「ムエルニさんが特注品と仰っていたので、これぐらいなら朝飯前かなって」

「仮にそうだったとしても、それがどうしてイカサマとなるのか説明してくれるかしら。たまたま私はあなたの言う良い材質だったから選んだまで」


 まあこうなるよね。

 証明をしなくちゃ多分この子は納得しないし、この場にいるみんなも納得しない。


「ならリーシャ様。この回はやり直しでしてもらってもいいでしょうか? もしだめならあたしの証明不足でこのゲームは敗北で構いませんので」


 証明しなければ証拠にならない。


「構わないわ。代わりに証明できなかったら、この試合はフェルあなたの敗北でムエルニとユエルの再試合となるわよ」


 ゲーム進行者かつ責任者のリーシャ様が許可をだした。

 ムエルニさんは反論を言おうにも押し黙るしかなかった。


「ありがとうございます。ではジョーカー1枚を台の上に置き、残りの配ってない束はそのまま置いてていただけますか? あと手持ちにジョーカーがあればデックの中に入れて下さい」


 ジョーカーを取り出し台の上に置かれ、ジョーカーは出てこない。

 デックの中にもう1枚のジョーカーがあるようだ。


「予想通りなら……」


 そう呟きながらあたしは台に手を置き魔力を注ぎ込む。

 すると、ポンっ!と小さい爆発とともにジョーカーのカードが宙に舞う。

 ユエルはそのまま落ちてきたジョーカーを上手くキャッチして、興奮気味にあたしに見せてきた。


「なんすかこれ。なんすかこれ! デックの中のジョーカーは少し浮かびましたが、台の上に置いてあったジョーカーは空に飛びました!」


 興奮気味だったユエルは次第に落ち着きを取り戻し、ジョーカーを手に首を傾げた。


「ジョーカー以外のカードは反応がないですよね?」

「ガンかけね。カードについた魔力で反発し合ったって所かしら」

「リーシャ様の言う通りです。ジョーカーには魔力が付与されていた。そこであたしはこの木を通じて魔力を流し込むと、他の人の魔力と接触し反発し合った結果……ぽん」


 あたしは台を優しくなでながら話を続ける。


「最初に言った通り、この木の特徴は魔力を通しやすい性質。魔法使いが持っている杖の先か全体に使われている素材もこの木が多いって聞いたので。その人専用の杖になるのもその理由なはず」


 デックの束に指をさす。


「ムエルニさんはカードを操れるのが得意そうなので、特に付与された特定のカードを自分で追うなら、慣れた魔法使いなら枚数をおおよそで当てるぐらい朝飯前じゃないのかなって」


 村で教わった商人への商品の知識。

 村の外で魔物と交戦していた時に出会った魔法使い。

 またここに来た際に、ムエルニさんが操ったトランプのこと。

 これまで培った経験則が活きた瞬間だった。


「だけどそれだと、リーシャさんの魔力も干渉して暴発を起こるんじゃ?」


 ユエルは当然の疑問を呈してきた。


「あたしは仮にやると未熟だから無理だけど、リーシャ様ほどの手練れなら完全に消失できると思う。実際こうしてなにも起きていないし」

「なら、他のカードも同様に魔力を付与すれば、どのトランプカードがどこにあるのかわかるんじゃ?」


 あたしは首を横に振る。


「それも無理かな。他のカードは使い終われば回収されるし、実質残るのはジョーカーのみ。仮にそれをするならムエルニさん本人がディーラーとしての役を買って、対戦方式自体を返る必要性があったはず」


 リーシャ様はパンッ!と手を叩き、全員がそちらに向く。


「さて、こうしてイカサマも明らかになり、台自体も対象となったわけね。処遇をどうしようかしら?」


 冷徹な笑みを浮かべながらムエルニさんに視線を向ける。

 ムエルニさん自身は子供のいたずらが親にバレたように、顔を伏せ小さくなっていた。


「ゲーム自体この時点で終了にして、ユエルとフェルの入団は勿論、ムエルニの降格。いいえ、ギルドの権威を汚した罪は重いわ。それ以上の罰則が必要かしら。それとも――」

「リーシャ様。あたしはこのまま続行したいと思っています。あくまでさっきのジョーカーはムエルニさんが自ら手札に来たのも運ですし。判明するのがジョーカーだけであってそれ以外は全く不明なはずです。ただ、不平等なので先ほど言った、手札の公開を許可してほしいと考えています」

「ふぅん、面白いわね。あなたがそう言うなら構わないのだけど。残り二人はどうかしら?」

「私もその案で構いません……」

「自分はよくわからずにいたのですが。フェルがそういうなら自分には断る理由なんてありません」


 あたしは観客に視線をむけると、不満の声があがると思っていたが、当人達が納得しているおかげか大人しい。


「では再度カードを配り直して四巡目。ユエル・タニアから」


 ユエルの手札は、♥4、♠6、♥7。

 あたしの手札はジョーカー、♦3、♣6。

 デックの枚数も少なくなってきたからかジョーカーの入手がしやすくなってきた。

 それはムエルニさんも同条件なはず。

 そしてジョーカーがあたしの手に渡っているのも、彼女にはわかっているだろう。

 逆にあたし達は残りのジョーカーが不明。

 ここからは運の勝負。


「ユエル。スペードの6を捨てて」


 言われた通りに♠6が捨て山にいく。

 ♥4と♥7で11。

 あたしの番となるがパスを宣言。


「ムエルニの番ね」

「そうね私は3枚頂こうかしら」


 ムエルニは手で口元を隠す。

 悟られないようにするためか、ジョーカーが来たとしても判断しにくい。


「ではコイン宣言をユエル・タニア」

「当然ここは白ですねフェル!」


 あたしはコクリと頷く。


「あら、ユエルは本当にフェル・ラグンダルトに従っていいのかしら?」

「どういうこと?」


 白のコインを出そうとした手がピタリと止まる。


「どうしてあなたは手札を公開させたのか考えてみたのかしら?」

「それは、自分がフェルを信じての事でやったまで」

「私はその逆ね」


 ムエルニさんが冷たく言う。


「今は私が優位に立ててますの。ユエル、あなたは勝ち星を一つとれてますの」

「確かに自分は一つ運良くとれてる」

「だけど、フェル・ラグンダルトはまだ勝ち星一つも取れてない」


 ムエルニさんがあたしに指をさす。


「頭の悪そうなあなたに特別に教えてさしあげます。何も考えなしに手札公開したによって、あなただけ数字が丸裸にされたわけですし。誘導なんてさらにしやすくなりましたの」

「だからそれはフェルに従えば……」

「彼女の思考はこう、自分とあなたの手札が確認できることによって私に優位に働く。このまま誘導し続けることで勝ち星を取り勝ち上がる。逆に言えば必然とユエル、あなたの敗北が決まる。それに今回ジョーカーを持っているのはフェル・ラグンダルト」


 言葉の誘導。心理的圧迫。ユエルの表情も不安そうにあたしを見つめる。


「フェル。自分どうすればいいのかわからない……フェルの事を信じたいのに不安になってきました……」


 震える声であたしに助けを求める。


「更には今回勝てば次のデックでもジョーカーが私たちのどれかに来るから、勝ちやすくなる」


 ムエルニさんの言う通り、次のゲームでカードを配れば高確率で手に入るだろう。

 ジョーカーもきやすいから、こちらの優位に立つ可能性が高い。

 あたしはユエルを見た。

 ユエルの表情は不安でいっぱいだし、目も潤んでいる。

 不安にさせたくない。


「ユエル。ごめんなさい」

「フェル……」


 これからあたしは言う事でユエルに信用を取り戻させたい。

 不安にならないでユエル。


「まあ、本当に信用に足るような事をするなら


 追撃のように煽るムエルニさん。対してあたしは決意していた。


「ムエルニさん、確かに甘かったと思う。あなたに言われて足りないんだと初めて気づけた」


 あたしは自身に配られた3枚のカードに手をかけた。


「だから、こうするつもりだよ」

「へっ?」

「手札を公開するっ!」


 カードを広げ公開した。

 信じて、あたしを。


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