16話 2戦目油断大敵
カードは回収され、未使用デックの上から再び配り始める。
♦4、♣7、♣8の合計19。
4を減らせば15で死数字から2で圏内に入り、7を減らせば12と1圏内だ。
「二巡目、次はフェル・ラグンダルトから」
「あたしは……」
リーシャ様の開始の合図とともに7に手をかけたとき、あたしの手は止まった。
1回戦、ムエルニさんが同じように捨てて調整に入った。同様に、あたしも同じようにこの1枚を捨てたらなにかあると疑われる。
ならここは交換したほうがいいのかな?
「2枚交換で」
「ちょっとそれはルールにありませんことよ。ルールにはカードを増やすか減らすかの二択のみなの」
あっ、そっか。忘れてた。
「なら2枚追加で」
♣10と♠Aが加わり30に。
近い数字だと26だから27にするためには3点差か悪くないや。
「次順ムエルニ」
ムエルニさんはじっとカードを見つめるも、再び1枚捨てた。
表情には出ないから手札の良し悪しは読めない。
1回戦といい、良い手札かもしれない。
「ユエル・タニア」
ユエルは1枚捨て、困り顔から嬉しそうな表情をコロコロ変える。
とても分かりやすい。
多分1から3圏内なのは間違いないだろう。
「ではコインの排出をフェル・ラグンダルト」
3でも圏内に入っているが、二人も間違いなく近いはず。
このまま動かないわけにはいかないだろう。
あたしは赤のコインを1枚裏側で出した。
「へぇ、-3という事はかなり近い数字と見て取れるわね。潰すの」
「……っ!」
勘が鋭いのかムエルニが同じ赤のコインを表側で出してくる。
再び赤コインを手に取ろうとするも手を止めた。
これ以上コインを減らすのは、まだ得策ではない。この行動自体ムエルニさんの行ったことが正解だと言っているようなもの。
リーシャ様はコインを出さないと判断すると、ムエルニさんに手をかざした。
「そうですわね。今のままで問題ないからパスしますの」
リーシャ様はあたしに視線を向けた。
先ほどの攻防を期待してるからか、あたしはコインに指をかけるも出し渋り諦めた。
ここでの正直消費は痛い。
興味をなくしたのか視線は他へと向けられる。
そしてユエルへ。
「そうですね。自分もパスですかね」
余裕綽々な表情。だけど、絶望させるようにムエルニさんは手持ちのカードを1枚ユエルに見せつけた。
「ならその鼻を折らせてもらうわよ。ユエル・タニアあなたのカード1枚捨てなさい」
「ああああああ、そんなぁ……」
そんな悲痛な叫びとともに、カードを1枚捨てた。
「もう他にいないわね。なら手札公開してちょうだい」
あたし:♦4、♣7、♣8、♠A、♣10、コイン±2の合計値30。
ユエル:♥10、♦6の合計値16。
ムエルニ:♥Aと♣Jの合計値12。
「2戦目勝者、ムエルニ」
「当然の結果ですわね」
ムエルニさんが髪をかけ上げる。
余裕の表情。
まさかジョーカーを手に持っているとは予想していなかった。
仮にコインで互いに出し合っても、ムエルニさんが優位に立てたのには変わりなかったんだろう……。
あたしは視線を外に目を向けると、観客達は拍手をしていた。
なにかを喋っている様子だが聞こえてはこず。
ただなんとなく、それぞれが言っている口ぶりからして「流石ムエルニ」「流石セブンズミラーの幹部」など、ムエルニさんを称賛の数々だろう。
「では、3回戦を始めましょう」
現在の戦績はあたし0勝、ユエル1勝、ムエルニさん1勝。
次に二人のどちらかが勝利すれば優勝に手が届くんだ。
今のままだとまずいというのは分かっていた。
次の3戦目は荒れる予感がしてならなかった。




