15話 1回戦目素人
♠J、♠8、♥2の3枚のカードが手元に並ぶ。
合計数字は21だから死数字の26までは、あと5……。
ふと視界になにかが動くのが見えたので、そちらに視線を向けた。
「フェル、フェル。隠さないと隠さないと」
ユエルが手を上下左右に泳がせ、空を切るように慌てふためいていた。
あたしは隠すの意味が理解できず首を傾げた。
「カードです。そんな堂々と見ていたら流石に客からカードが丸見えですよ」
丸見え?
確かに二人を見るとカードは台の上に伏せ、数字が見えないようにしているが。
「全く、素人丸出しですこと」
ムエルニさんが上を指さし、あたしは上を見た。
あたし達が映っている魔法の画面、そこにはあたしの手元、つまりはカードが映りそうになっていた。
「基本自分しか見えないように手をカードに覆うように伏せますの。こうすることで、自分だけ見えるように捲るんですの」
実演しながらあたしの行動を小馬鹿にするように、ムエルニさんは鼻で笑う。
魔法で音は聞こえないはずなのに、観客からもクスクスとせせら笑いが聞こえたきがした。
あたしはムエルニさんがしたように、映らないようにカードを伏せて自分しか見えないように捲る。
カードの端に書かれていたマークと数字が見えた。
「確かにこうすれば自分だけしかカードが見えない。ありがとう二人とも」
嫌味な言い方だとは思ったけれど親切に教えてくれた。
あたしがお礼を言ったら、少し照れたのかそっぽを向いた。
「続行するわね。まずはユエル・タニア。カード排出宣言を」
「します! します! この1枚増やしてくださいです!」
ユエルの表情はニヤニヤへと変わる。
あからさまに良い手が来たのがバレバレ。
「次はあたしの番か」
死数字に刺せないためには4、6が欲しいけど……。
あまり自信がないや。
まだ1戦目もあるからか、あたしはパスを宣言。
「私はそうね……これを捨てますの」
♦10を捨てた。
手札を捨てて調整か。
確かに増やさないなら、あたしも減らして調整したほうが良かったかも。
「全員、カード交換終わりました。次にコインの排出。ユエル・タニア」
「んーパスで!」
「同じくパスで」
コインを使えば近づけることができるけど……。
流石に初手で使うのは勿体ない。
やっぱりカードを増やすか減らすかしておけばよかったかなと、今更ながら後悔する。
「初手なのでここは様子見をしたほうがよさそうですのでパスで」
「全員の順が終わりました。では手札開示、ショーダウン」
あたし:♠J、♠8、♥2。合計値21。
ユエル:♥K、♠9、♦3、♦2の合計値27。
ムエルニ:♥8、♣2の合計値10。
一番近いのだとユエル1、あたし5、ムエルニさん3となると――。
「初戦、目標値が一番近いユエル・タニアの勝利」
「やった、まずは1ポイントゲットです!」
ユエルはブイサインをしながら、さながら優勝した如く勝利を喜んだ。
「フェル、自分勝ちましたよ!」
「やったね。おめでとう、ユエル」
あたしは喜ぶユエルに素直に賞賛を送った。
「ふん」ムエルニが鼻を鳴らす。
「初回は様子見。次からが本番ですの」
確か皆、慎重だった。
コインも使わなかったし。
「それにしてもあなた本当に素人ね。リーシャ様に気に入られたというから、少なからず警戒はしていたのだけど」
ムエルニさんが呆れたように言う。
「カードの隠し方も知らないなんて」
「確かにあたしは知らなかったですが、次からは気を付けますよ。それに次はあたしが勝ちにいきます」
気持ちを改めて引き締めなくちゃ。
ふんすと鼻息を荒くした。
「ふふ、こうして互いに闘志を燃やすさながらは見てても面白いわね。では、2回戦目を始めましょうか」
カードが再びシャッフルされ始めた。




