13話 貴族の舞踏会と、賭けられた三人
「ひぇー、さっきのラウンジが目じゃないほど、ここはそれ以上に広いですね!」
出てきた場所が少し高めなのか小さいあたしでもフロア全体を見渡せる。
お城の舞踏会、そんな印象を受けた。高さはさすがにそれほどではないが、それでも天井にはいくつものシャンデリア。一階と違い白黒のタイル状の床。楽器演奏の中、貴族が手を繋いで踊って一夜を明かす。そんな風に妄想もできる。
しかしここは煌びやかな舞踏会ではなくカジノ会場。いくつもの台が見えた。
あれら全てがギャンブル台となるのかな?
あたしは呆けて見てると、ユエルが指をさした。
「ほら見てください。貴族らしい人たちもいるし、あっちは見たことあるような上位ランクの冒険者? すごいですよフェル!」
ユエルは興奮気味に言う。
チラリと横目で見たときは冒険者らしき姿が多かったけど、ユエルの言う通りここでは貴族らしき姿の人が何人か見受けられた。
身なりからして地位の高い人達なのだろうと思われた。
全員がこちらを見ている。
「先に中央付近にいるサリエント様とムエルニ様がお待ちです」
従業員に言われた通り中央に視線を向けた。
一台のテーブル、近くにはリーシャ様とムエルニさんの二人が先に待っていた。
あたし達は近づくと、周囲の人達は物珍しさ、そして値踏みするような視線で見ていた。
「お待たせしました。リーシャ様」
「待っていたわよフェル、ユエル。さあ座りなさい」
あたし達はそれぞれ席に等間隔で座った。
台を改めて見ると、台自体は円形型。最初に目につくのは台の上だった。他の台と同様に緑の布地に覆われている。更にはわずかに起毛しており、指で撫でると逆立つ毛足がざらりとした抵抗を返す。
側面を触ると茶色く、木で出来ているのか分かり木目特有の触り心地。
台を支える脚は茶色く渦を巻くように伸びた卓は、まるで魔物の爪のようだった。
椅子に座ってみると、台は高すぎず低すぎもしない絶妙加減。
「滑らかな手触り。支える脚の装飾も綺麗だし。この台は特殊な木ですよね?」
「あら、あなたよくわかりますの」
「ゲルムって何ですか?」
ユエルが疑問を投げかける。
「一言で言うなら主に魔法使いが愛用する武器の素材かな。魔力も通しやすいと聞いた事あるから」
「この台も含めて備品全て私が管轄していますの。このテーブルとて特注品。ありがたく使わせてもらえることを光栄に思うことね」
ムエルニさんはふふんと鼻を鳴らしながら得意げな顔をした。
「話は済んだかしら?」
開始の合図だからか、さっきまでのざわめきは嘘のように止み静かになる。
静寂の観衆の中でリーシャ様の声が響く。
「では再度確認としてムエルニ、あなたは負けたら地位降格。そしてフェル、ユエルは勝てば入団」
あたし達は同意するようにコクリとうなずく。
「そして今回のゲームでは、あなたたちをギャンブルとして賭けさせてもらっているわよ」
「ギャンブル?」
「この建物内のゲームを止め、全ての客があなたたちの誰が勝利するかというギャンブルをね」
リーシャ様はムエルニさんに手をかざす。
「倍率として、セブンズミラー幹部の1人でもあるムエルニは1.5倍」
次にあたしに手をかざした。
「フェル、あなたはライネスに勝ったと言う情報が伝わって3.5倍」
次にユエルをかざす。
「ユエルはそうね……未知数だけど、ここまで来たことで6.0倍」
ユエルが一番高いということは、逆に言えばユエルが一番勝率が低いとのことなんだろう。
カジノ店ではあるのだから、儲けるためには当然と言えば当然の行為とも言えた。
続けるようにリーシャ様は言った。
「内容も一階の中央に映像として、あなたたちのやり取りを映してるわ」
リーシャ様は優雅に指を鳴らす。
するとあたし達の上空に突如として、自分たちの姿が鮮明に浮かび上がった。
当然、ざわめきが起きる。
「この映像、あたし達が映ってる?」
あたしは台の上から手を振る仕草をすると、映像も全く同じ仕草が映った。
この建物にいる皆が映像を見る事ができるようになったんだ。
ただ、これも魔法?
こんなすごい魔法見た事も聞いたこともないし、使ったことある冒険者達なんて見た事がない。
周囲を見渡すと、特に一部の冒険者っぽい人や貴族の人は口をポカンと開けながら見ている。
やっぱり知らない人は知らないんだ。
カードの件といい、これといい、あたしはリーシャ様に尊敬の念を送る。
ただ全員にあたし達のやることを映されるとなると、緊張する……。
「さて、ここに集まった皆様」
リーシャ様の声が会場全体に響く。
これも一種の魔法なんだろう。
「本日は特別な勝負をご覧いただきます。まずはセブンズミラー幹部の1人、ムエルニ。そして、私が見出した新人フェル・ラグンダルト。そしてもう一人の挑戦者はユエル・タニア。この三名による、運命の勝負を始めましょう」
言い終わると同時に拍手喝采が起きた。
「そして最後に今回ディーラーを務めさせていただきます。私、セブンズミラーのギルドマスターであるリーシャ・ウーナ・サリエントが執り行うことといたします」
ついに始まるんだ。




