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呪いの焔。  作者: あめ
不穏。
3/8

向かい風。

 






命の危機を経験し、芽生えたモノ。






 甲冑の男に襲われてから数時間後、森の中を集団が駆けている。


「今紫様、このまま街に入る前に私達とは一旦お別れです...っと、その前にこの中では私が一応リーダーだったので代表して簡潔に自己紹介を。私は羽山芽生はねやまめうと申します。今一緒にいる者全てカグツチ様の眷属である山の神、ツミノカミを祀っている寺の生まれで私は今年二十二歳になります」


と駆けていた集団は今紫とその眷属達で街の様子が見える位置まで来ると女性が代表して自己紹介をしており、彼女は黒髪のツインテールだ。


「皆さんがツミノカミの...でもお別れというのは...?」


今紫は祖父から聞いていた神の名を思い出しながら問う。


「これが夜なら暗闇に紛れられるので都合よく動けたのですがこれから陽が昇るにつれてこの人数では目立ちすぎます...なので一旦私達とは別行動にはなりますが私の信頼する仲間数名を今紫様の護衛につけるので今紫様達は正規のルートで寺に向かってください。私達は今紫様達が来るまでに付近の安全を確認しておくので別ルートで愛宕神社へ向かいます。そこで落ち合いましょう」


と女性は話し、今紫や紫平の生まれである寺は愛宕神社だと分かった。


「芽生さんや皆さんもお強いとは思いますが、さっきの男性の話からすればおそらく敵が潜んでる可能性が高そうですので十分お気を付けて...ご武運を」


今紫は心配そうな表情でそう言った。


「...今紫様に名を呼ばれる日が来るなんて...この名前が誇りになりますね」


と女性は感慨深そうに話すと


「おーっと?芽生ちゃん泣いちゃうんじゃねえの?」


と集団の中から五十代程の男性が揶揄うように言う。


「えぇー?私も歳とったのかな...グスン」


彼女の反応に周りの者は笑った。


「...私なんて祖父のように真面目でもなければ皆さんのように強くもない、ただの平凡な女なのに...」


と今紫は申し訳なさそうな顔で呟き


「今紫様はそりゃ弱いだろうさ...それはずっと陰から成長を見守ってきた俺らだからこそ思う。だけど成長を見守ってきた俺らだからこそ今紫様の成長が娘のように嬉しいんだよなー、これが!だから俺らの事は親のように慕ってくれていいし、芽生ちゃんの事は姉に思ったっていい。ただ俺から一つ親の立場でアドバイスするとしたら強くなろうとして簡単に身につく強さは必ず脆くなるか、砕けて無くなるぜ?人間なんて生きてりゃ色んな経験を得て勝手に強くなる。その強さは絶対に自分を裏切らねえ...お?話長すぎたな、すまんすまん。でもいいアドバイスだろ?どうよ?」


と男性は我に返ったように周りの仲間に問う。


「...まー、悪くはないと思います。今紫様、こちらは徳さんです。気さくな方なので相談役におすすめですよ」


女性はそう話すと周りの仲間は笑い


「護衛の方が来たようなので今紫様、しばしお別れです」


と女性の言葉に街の方を見ると四名の男性が今紫達のほうへ歩いてきていた。






「...未だに奴の信仰は厚いということだな」


どこか薄暗い部屋で五人が正座で話しあっているようだ。


「眷属まで機能しているなんてとてもめんどくさい」


と三十代程の赤髪の女性が話す。


「奴の力が衰えないということは信仰によるもの、その信仰の元は眷属自身の力によるもの...であれば眷属の寺を潰して回るのもありでは?」


と四十代後半程の黒髪の男性が提案した。


「貴様は簡単に言うが火の神の眷属ですら神であるぞ?山の神、草木の神、我が接触したのは山中...それは奴らの庭のようなものでありカグツチ同様未だ信仰の厚い山の神、ツミノカミもいる...運が悪ければ我は逃げられなかったであろう。だがおそらく眷属のリーダーは若いな、甘さか余裕なのかは分からないが我を逃がすとは」


そう話しているのは今紫を襲ったイザナミの眷属の甲冑を着ている男性だ。


「リーダーがそれならわしらには都合よかろう...イザナミ様の復活も近いが果たしてイザナギ様は何処に..」


髭を生やし、眼鏡をかけた老人が呟くと


「把握できていないのは悩ましいけどイザナギ様は何があろうとイザナミ様と出会う運命なんでしょ?ならイザナミ様が復活なさってから姿を現すの待ってもいいんじゃない?」


と二十代前半程の男性が言った。


「それではイザナギ様が単独でカグツチ達を消してしまうではないか?それではつまらんのよ...なんせ今回のイザナミ様の依代はとっておきのを用意したんだ、お前達にもお披露目しよう。この女こそ名を紫令といい、紫平がコソコソ探し回っていた実の娘だ」


老人がそう話すと自分の後ろの壁に照明を当て、そこには一人の女性が両手首を鎖で縛られ、全裸で吊るされていた。


「趣味の悪いことを......ん?待て、ということはあの少女の母か...」


彼のいう少女とはもちろん今紫の事だ。そして今紫の母は何故捕らえられているのか。髪が一部抜け落ちているようで顔面には何度も殴られたような痣、体にも痣、そして腹部からは血が流れているようで滴る血が真下に落ちるたびピチャンピチャンと音を立てる。生きているのかすら現時点では分からないが名を紫令しれいというらしい。


「イザナギ様も勿論メンバーに含め、この依代で復活なさったイザナミ様の手で紫令の最愛の娘の命を奪ってやろうではないか」


そう言い放つと老人は高らかに笑う。


(彼女は行方不明だったはず......とっくに奴の手にあったのか)


甲冑の男は何か考えるように顎に手を当て


「何か気になることでも?...愛はいいものだぞ、強さすら惑う」


と意味深に老人は笑みを浮かべながら話し


「...元よりお前は趣味が悪い男よ」


甲冑の男は何かを悟ったように呟いた。






「おはようございます、誘美と申します」


今紫の目前まで来るとその男性は名を誘美ゆうびと名乗った。


「今紫様をよろしくお願いします、あなた方もどうかご無事で」


芽生はそう言うと会釈をし、周りの者を引き連れながら






「さて、彼がどう動くか......イザナギの眷属...」


と聞こえない距離まで歩くとそう呟いた。



風のように動きし時。


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