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呪いの焔。  作者: あめ
不穏。
1/8

始まりの刻。






その少女が生まれし寺で。






 ここは歴史の感じる古いお寺。周りは森で囲まれており、今も参拝に来た人やこの寺の住職等が敷地内をうろうろしていた。


「おはようございますー、今日も冷えるわね。猫ちゃん達もこの寒さではこたつに入ってるのかしら?」


と四十代半ば程の容姿をした女性が笑いながら住職に話しかける。


「おはようございます、雅美さん。そうですね、猫達は寒さで家の中にいるんでしょうけど私は雅美さんの声を聞くと寒さ和らぐので今日も朝早くからお越しいただきありがとうございます」


とその寺の住職であろう人物が微笑みながら返答した。


「そりゃそうよ...昨日の夜近くのお寺でも火事があったらしいじゃない?それに数名亡くなったりしてるのもここ最近の寺荒らしと関係ありそうで......いつもよくして頂いてる住職様達とこの空気の澄んでて、それでもどこか温もりの感じる心地のいいこの場所まであんな事になったらって思ったら今すぐにでも行かなきゃって思ったのよね」


と女性の話によると最近寺荒らしが続いているらしく、住職も興味深そうに腕を組んで首を傾げながら聞いていた。


「こんなにもボロボロなのに気に入って頂いてありがとうございます。雅美さんの人柄も行いも少なくともここの神様は見てくださっていますよ。この土地にいて体がポカポカするように感じるとすればそれはここの神様からの来てくれてありがとうというような感謝やお礼によるものだと僕は思います。水の神を祀る寺であれば透き通るような空気を感じたり、風の神を祀る寺であれば心地のよい風を感じる等など感覚の鋭い方であればそう感じたりするらしいですよ。それと神様への感謝を忘れていない人達には神様もきっと何かしらの形で応えてくれます。現にここの寺で祀っているのは火の神です」


女性は住職の話に聞き入っていた。


「ただ...最近の寺や神社が荒らされている事を聞くと犯人が捕まるか、事態が収束するまで来訪は控えたほうがいいかもしれません。何かあった場合は迅速に避難等は指示しますがそれでも確実に守ってあげられる保証がないので...。本当はわざわざ来て頂いてこんな事言いたくないので早く平和な日々に戻るといいのですが」


住職は申し訳なさそうに話すと女性は頷きながら


「やーだもう、そんな申し訳なさそうにするんじゃないの!それも住職さんの親切な有難いお言葉よ?こんな物騒な状況なのに何も考えず来る無計画バカな私が悪いっちゃ、無事なのも確認できたしそろそろ帰るわ!またね」


と女性は笑いながら話し、住職も会釈すると女性は駐車場へ歩いていった。


バチッ


突然女性の帰りを優しげな表情で見守っていた住職の羽織に静電気がなる。


「...雨が降りそうだな、雷も」


とボヤッと呟いていた住職の耳に


ゴロゴロゴロゴロ


と雷鳴が聞こえてきて


バリバリバリバリドシャンッ


とその落雷は先程まで話していた女性が乗った車の上に落ちた。それに気付いた参拝客は一目散に自分の車に向かう者や建物に避難する者に分かれた。


「...っ!!!」


住職はすぐさま火の勢いが強くなる車へ向かい、帰路につこうと元々駐車場にいた数名も女性の車へ駆け出した。


「雅美さん!...うっ!こんな...どうすれば......」


運転席で気を失っている女性へ近づこうとした瞬間火の勢いが強くなり、女性を火が包むのを直視しながら住職は思わず戸惑いをそのまま口に出した。周りにいた数名の中からは自前のペットボトルの水を火にかける者や救急車を呼ぶ者、消防隊に連絡する者などいるがどれも今の状況を変える程の解決策には至らない。


「あぁ...寺が!!!」


突如消防隊に連絡していた男性が周りの状況を伝えるためにキョロキョロ辺りを見渡すと寺から煙と火が上がっているのが見え、呟く。


「...っ!ーーー様っ!!!」


住職は寺を見つめながら駆け出し、誰かの名を叫ぶがその声を掻き消すように雷鳴が激しく轟いた。




駐車場から寺の敷地内に戻るとそこには凄惨な光景が広がっていた。


「...どうしてここまで......これも呪いか、恨みか?」


本堂に向かうまでに落雷によって即死したであろう数名の遺体を見た。火に包まれながらも一酸化炭素中毒によって動けずにその場でうずくまっている巫女も見た。


「すまない...」


住職は直感でもう助けられないと悟り、ただただ目前に迫った本堂へと足を動かす。


「紫平さん」


本堂に入ろうとすると中から自分の名を呼ばれた。

住職の名は紫平しへいというらしい。


「勝彦......おまえ無事なのか...?」


紫平はこれまで見てきた光景から敷地内において生存者はいないと思い、驚きの表情を見せる。


「僕は何ともないですが...長く付き合いのある友を多く失いました...。この火事も寺荒らしと何か関係が?だとしたら寺荒らしの連中は何が目的で一体このような真似を...」


勝彦という見た目は三十代後半ぐらいの男性は友を失い、無念といった表情で頭を悩ます。


「......関係しているかは正直分からないな。実際火事は落雷によるものなのだろう。怪しい人影を見たわけでもなく...ただ火の神を祀る寺で火災とは......神もさぞお怒りであろう」


紫平も謎めいた様子で祀ってある御神体へ顔を向ける。


「......今紫がいない時でよかったと思おう、あの子まで失うわけにはいかない」


と紫平がとある人物の名を口に出す。


「今紫で最後です」


と話すと勝彦は御神体を見ていた紫平の






背中にナイフを突き立てた。




古き寺の歴史にヒビが。


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