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三題噺もどき3

梅雨の朝

作者: 狐彪

三題噺もどき―よんひゃくきゅうじゅうに。

 


 室内の空気を扇風機がかき回している。


 外は、雨が降ったりやんだりしているせいで、日差しこそないモノの、むしむしとした暑さが居座っている。今週いっぱいまでは梅雨が明けなさそうだ。天気予報を見る限りは、確かに雨予報が続いていた。

 今日の朝なんかは、バケツをひっくり返したような雨音で目が覚めたのだ。体感数分ぐらいですぐに止んだけど。

 だから、誰かベランダに水でも撒いてるのかとも思った。

「……」

 あの妬みを言いたくなるほどの輝かしい太陽の日差しがないのはありがたいが、体中にまとわりつくような暑さだけはほんとに勘弁してほしい。

 梅雨が明ければマシにはなるんだろうけど。それまでこの暑さに耐えるのもきつい。

 何度でも言う。こういうジメジメした暑さは嫌いだ。好きな人なんてむしろいるんだろうか。

「……」

 今朝起きたときなんか、汗をかいているのか何なのか。

 肌がべたべたで気持ち悪いったらありゃしなかった。

 いつもならしない、朝風呂をしたくなるほどに気持ち悪かった。

 朝風呂……これはこれで悪くはないが、習慣にするには面倒なような気もする……が、これからこの暑さが続くと考えると朝風呂はいいかもしれない。

「……」

 まぁ、それで。

 朝風呂から上がってきて、軽く朝食でも食べようとキッチンに来たのだけど。

 ……ここに来た瞬間に食欲が失せるのは何だろうな?

「……」

 とりあえず、水分補給をしようと。

 冷蔵庫に常備してある麦茶を取り出し、手近に置いてあったコップに注ぐ。

 冷えたグラスの感触がジワリと広がり、風呂上がりで火照っていた手のひらを冷やす。

 ついで、ごくりと飲み込んだ麦茶が中を冷やしていき、思わず―ふぅ……と息が漏れる。

 あれだ、風呂上がりのビールとかと同じ感覚に近い。

「……」

 飲み干したグラスを、シンクに置く。

 さて。何を食べようか。

 今日は特にこれといった予定は入っていないから、家でゆっくりしていようと思ってはいる。だからまぁ、特に無理をして食べる必要性もないのだけど。

 しかし、食欲はなくとも、腹の虫が鳴いている。

「……」

 何か食べられるものでもあっただろうか。

 こういう時にアイスとか食べられたらいいんだけどなぁ……程よく満たされそうで。なぞに冷えに極端に弱い腹でなければ食べるんだけど。アイスを食べて腹を壊して気分を害するよりは食べない方がいい。と思ってしまう。

「……」

 冷蔵庫を開けて見るが、これと言って簡単に食べられそうなものもないし。

 冷凍庫の中もあまり入っていない。これでも買い物に入ったはずなんだけど。

 ないと言うか、食べる気になれないだけだが。

「……」

 菓子類……何か買ってたかな。

 電子レンジの上に置いてある籠の中身を確認してみる。

 ……あ。

「……」

 開けっ放しになっていた袋を見つける。

 何だろうかと手に取って確認してみると、飴の入っている袋だった。

 これぐらいなら適当に食べられる上に糖分も取れて良いか。

「……」

 と、思い。

 袋の中身を確認したところ、一種類しか入っていなかった。

 パッケージには数種類入っているようなことが書いてあったんだが……。

「……」

 あぁ、そうか。

 これ……あれか。

「……」

 いつだったか。適当にお菓子を買っておこうと思って、食べやすい飴を買っておいたのだけど。その種類をちゃんと確認していなかったのが祟って、苦手なミント系のモノが入っていたことに帰宅してから気付いたのだ。私はノド飴を筆頭に、メントールとかミントとかハッカとか、ああいう清涼系?の飴は苦手なのだ。ミント好きに怒られそうだけど。口内がさっぱりしていいんだろうけど……どうにも受け付けない。

「……」

 それで、他の種類のものだけ早々に消費しきって。

 ミントのこの飴だけが残って、ここに放置されていたというわけだろう。

 食べないけど捨てるに捨てきれずに、奥に隠しておいたって感じだ。

 誰かにあげたりでもしたらよかったんだけど……妹は食べないし義弟も食べないと言っていたし。他の知り合いは苦手だからもらってと言えるような関係じゃないし。

「……」

 だからと言って苦手なこれが今食べられるわけじゃないし。

 食欲はないけど空腹ではあるし。

 何を……どうしたら……どうするかな。

「……」

「……」

「……」

「……」

 ふぅ。

 とりあえず、この飴は元に戻しておいて。

 外はまだ雨も降っていないから、近くのコンビニにでも行くかな。

 ついでに昼食も買ってこよう。

 うん。そうしよう。






 お題:妬み・日差し・のど飴

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