風と殻
かつて、描いたことのないくらいの自由詩です。
砂まじりの乾いた風に吹かれながら
この街でくらすために
肩幅より小さめな殻をはった
背のびも思うようにできなくて
なんだか窮屈な気もしたけど
乾いた風に直に晒されたら
すぐに ひからびてしまう
でも
風のひとつも吹かない街では
きっと 生きていけない
ちょっとぐらい乾いてたって 砂まじりの風は
なまあたたかく 頬を撫でてくれたし
いつもは乾いてる風も
雨あがりには いくらかの湿り気をくれた
この殻に包まれて生きる姿が
私っていう生き物なんだって思えば
窮屈な気がしながらだって
この街で 乾いた風に吹かれながら生きていけた
だけど
ある朝 乾いた風は突然 吹きやんだんだ
どこか 他の街で吹くことに 決めたのかもしれない
砂をまきあげて吹くことに 飽きたのかもしれない
砂まじりの乾いた風に吹かれながら生きていく
この街でくらす日々は もう終わりなんだって
諦めより 理解より 覚悟より
もっと素直に受け容れることができたけれど
乾いた風に直に晒されなくなって
もう ひからびてしまう心配もなくなっても
風のひとつも吹かない街では
やっぱり 生きていけない
途方に暮れて 立ち尽くすより
取り乱して わめきちらすより
もう一度
背すじをぐんとのばしたくて
両肩をぴんとはりたくて
おもいきって 殻を脱ぎ捨てたんだ
それは
窮屈な殻に包まれて生きてきた
私を否定することじゃなくて
窮屈な殻に包まれていない
私をとりもどすこと
そしたら
街はきのうまでと そんなに変わってないはずなのに
なんだか 新しい肌触りがくすぐったくて
そんな私に そんなに変わってないはずのこの街は
新しい風を運んできてくれたよ
砂まじり乾いた風のほかにも
ほんとは この街にもたくさんの風が吹いていて
みんながみんな
ぜんぶの風に逢えるわけじゃない
みんながみんな
ここちよい風に吹かれてくらせるわけじゃない
でも
風は たったひとつしか吹いていないわけじゃない
そんなことも きっと なんだか 忘れがち
思い出してみて 気づかされて
はっとしたあと はじめて苦笑いができた
砂まじりでなくても 乾いた風でもなくても
新しい風だって 私に切り傷をつけるかもしれない
前とは違った 新しい殻を
きっと 私は はることになるのだろう
それでも
私が望んで吹かれた風に
私っていう生き物のかたちをした殻をはりながら
この街で生きていくんだ
こんどは 窮屈な殻にならないように
こんどは 頬を撫でてくれる風に 笑顔を返せるように
私は この街で この風に吹かれながら生きていく
「詩」って呼んでも、いいのかもよくわかりません(笑)
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