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百八重人格

「・・目を覚ましたか・・・」


「・・・・ん・・・・ここはどこ?あなたは誰?」


「俺はタケシだ。お前の友達・・・いや、お前の友達だった・・・・。お前の名前はなんていうんだ?」


「え・・・僕はヒロシです。」


「ヒロシか・・・・その名前は初めてだな。・・・そう言えばスグルがヒロシには気をつけろって言ってたような・・・ヒロシが出てきたらお終いだとか。お前スグルを知ってるか?」



「え?知らないです。え、なんなんですか。ここはどこなんですか。スグルって誰ですか?」


「・・・お前で107人目だよ。これを説明するのは。お前はな、っていうかお前の体はな元々は俺の友達のサトシのものだったんだ。しかし三ヶ月前からサトシは多重人格になっちまって次から次へと違う名前の人格が出てくる様になっちまったんだ。サトシはどこだ?サトシを返してくれ!!」


「・・・ええ、そんなこと言われても。僕はヒロシです。サトシなんかじゃありません!!」


「・・・・悪い。ずっとこんなやりとりを続けてるんだ。みんなそういう反応をする。どの人格も個別の記憶を持っていて自分がサトシの中のひとつの人格であるという自覚はないんだ。だが段々分かってきたことがある。それぞれの人格は記憶の中で別の人格と会ったことはあるらしいんだ。ただ、名前を覚えている時と覚えてない時がある。ヒロシ、お前ナオコを知っているか?」


「え?ナオコなら知ってますよ。ピスタチオが好きな子ですよね?」


「そうだ!ピスタチオの画像インスタに上げがちな第45の人格ナオコだ。第6の人格カツヤの話ではナオコと一番中の良い人格がリーダー格らしい。でも誰もその名前を知らないんだ。そいつの名前をつきとめればサトシが返ってくるヒントになるかもしれない。ヒロシ、何か心当たりはないか?」


「ナオコと仲の良い?ナオコは割と隔たりなくみんなと仲良くしているからなぁ・・・。ああでも最近ナオコ借金してて友達に連帯保証人になってもらったってワタルが言ってたからそれと関係あるのかな?」


「ワタル、一昨日出てきたやつだな。少し無口な、爪を噛む癖のある奴だな。確かあの時ワタルは弁護士の友達がいると言っていた。もしその弁護士がサトシの中の人格にいたとしたらナオコの連帯保証人に一つ噛んでいる可能性がある。知り合いに弁護士はいるか?」


「いますよ。アキラとチハルとサブローとユウヤとクマゴロウとか、いっぱいいますよ。」


「アキラ・・・第71の人格だな。第44の人格ヒロアキの衆議院議員時代の公設秘書。チハル・・・タトゥーアーティストをしていた所を第3の人格ツカサに発見されツカサ子飼いのパスポート偽造集団にスカウトされた女・・・司法試験にも受かっていたとはな。第87.第88の人格・・・サブローとユウヤ。奴らは唯一双子の人格で同時に出現する。サブローが喋ればそれをユウヤがリピートする。最初はふざけているのかと思ったがな、しかし奴らの絆は並大抵のものじゃない。俺は奇妙なその二つの人格を信じざるをえなかった。クマゴロウ・・・こいつは知らないな。どんな奴なんだ?」


「僕もあったことないんです。でもマサトさんがクマゴロウさんハンパないって言ってたんです。」


「会ったことないのに知り合いかよ!まあいい、マサトはクマゴロウとどこで会ったんだ?」


「エリカさんの経営してるバーでシンジさんがジョージさんを呼んでパーティーしてたんですけど、そこにクマゴロウさんが来たらしいんです。で、クマゴロウさん最近すげー金持ちのパトロン捕まえたらしくて、焼肉屋経営するって。」


「クマゴロウのパトロンは誰だ?」


「知りませんよ。会ったことないんだから。ただ、不動産とコンサル系の会社を経営してるってことしか。」


「!?そいつはどこ出身だ?」


「いやだから分かりませんよ・・・あっ、でもマサルさん北九州とか言ってた様な・・・。」


「スグルだ・・・。そいつはスグルだ。」


「スグル・・・・。」


「第二の人格スグルだ。一番最初に出てきた奴だ。あいつ・・・何も知らないフリして本当は全部知ってたんじゃないのか?・・そう言えば今までどの人格からもスグルの話を聞いたことがない。大抵どの人格も顔見知りなのに・・・。間違いない!黒幕はスグルだ!ヒロシ!!今すぐサトシの体からスグルを出せないのか?」


「無茶言わないで下さいよ!ていうかその多重人格の話本当なんですか?まだ信じられないんですけど!」


「本当だ!俺をずっと・・・この目で!本当だよ!サトシを返せ!!」







サトシは大声でがなり立てた。彼の口からは第107の人格ヒロシと第108の人格タケシの言い争う声が発せられていた。家族は来週彼を入院させるつもりだ。

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