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爆誕

初投稿した作品をリテイクしようとしたら、別作品になったので投稿してみました。

評価やコメント、誤字報告など、お願いします。なにか改善点があれば教えていただきたいです。

不定期更新ですが、何卒宜しくお願い致します。

 どの世界、いつの時代、人類が望んだ不可能な力、それは不老不死。権力者がこぞって欲し、錬金術師などが探求心や名誉欲しさに挑戦し、敗れ去る。金を積んでも手に入らぬ至高の力。それを前にし、ゴレイド帝国直属の研究者たちが挑んでいた。


「実験、開始します」

「カンタレラ、注入します」

「月の雫、注入します」

「カントラン、注入します」

「エリクサー、注入します」

「世界樹の樹液、注入しました」

「反応あり。混合コアを覆うように細胞が再生していきます」

「反応終了。再生止まりました」

「コードネーム"ショゴス"、完成…しました」


 この実験の目的は、合成した劇薬やら回復薬やら、死と再生から近いものを再混合コアに投与し、高い再生能力を持つ人工生物を生み出すことであった。この実験が成功すれば、不老不死の薬を生成する一歩近づくと考えていた。ショゴスから採取される体液、細胞は新型回復薬の材料になる可能性を秘めているだろうと予想されている。


「鑑定員、鑑定を」


 ショゴスがどのようなものか判断するため、専属の鑑定員がショゴスを鑑定する。


「ステータス、開示します」

____________________

名前:

種族:ショゴス

特性:再生・吸収

____________________


「新種か!?」

「まさか、コードネームがそのまま種族名になるとは…」

「実験は成功なのか?」


 新種ということに驚きつつも、特性が高位スライムとはいえ、スライムがよく持っているものだったので心配になった研究員が投げかける。

 それに、ベテランの研究員である実験の責任者が答える。


「知っての通り、特性にあるのは高位スライムがよく持っている再生と吸収だ。しかし、新種族に分類される程だ。それに、実験を重ね、ついに成果が出たんだ。効果には期待していいだろう。つまり、ショゴス創造実験…成功だ!」

「やりましたね!」

「ああ!」


 この実験、つまりショゴス創造実験が成功してことに、研究員たちは安堵し、歓喜した。それもそうだろう。このプロジェクトは、帝国から多大な支援と、多大な金が掛かっていた。この実験が上手くいってないと、面目が立たない。

研究員たちは黒い色をしたショゴスを眺めながら、これからの実験に思いを馳せていた。




数十日経ったある日、事件は起きた。


「大変です!ショゴスが脱走しました!!」

「どういうことだ!!」

「それが、ショゴスから体の一部を採取しようとしたところ、閉じ込めていたケースから脱走しました」

「捕まえられんのか!」

「そうしようとしたのですが、採取しようとした研究員が一人、やられてしまいまして…」

「なんだと!」

「幸い、一命は取り留めたそうです」

「もたもたしている暇はない!警備員は!」

「もう呼んであります。今頃交戦しているでしょう」


 状況を確認するため、報告をしに来た若手研究員と話を聞いたベテラン研究員の所長は現場へ向かった。

 しかし、事件が起こった場所にはショゴスも警備員もおらず、数人の研究員がいるだけだった。


「君、ショゴスと警備員はどこに行った?」

「あっちです…」


 研究員が示した方向は、人体実験に使う奴隷が収容されているフロアだった。

 警備員と合流した彼らは、状況を聞く。


「状況は!」

「は!我々が到着したときには、既に手遅れで、奴隷たちは捕食された後でした」

「それに加え、奴隷で臨床実験をしていた研究員3名と鑑定士も捕食されました…」

「貴重な人材を食いやがって…!」


 ショゴスは、いくら再生能力が高かろうと無限に再生できるわけではない。このまま採取され続ければ、生命活動の危機だと感じたのだ。それ故、エネルギーを確保するために獲物を探すために脱走したのだ。


 この世界では奴隷というのはさほど珍しい存在でもないが、この研究所において、臨床実験の人員として集められた者たちだ。人間、エルフ、獣人といった奴隷としては一般的な種族の老若男女が集められていた。再び集めるとなると、時間と金がそれ相応に掛かる。それに、奴隷の中には薬の効果を調べるのに有効な鑑定スキルを持つものや、傷ついた奴隷を回復させるスキルを持つ者、その他実験に活用できる身体強化を持つ者がいた。


 奴隷の中には、魔力が特別高いエルフの少女がいた。その少女は魔力が及ぼす影響を測る実験をする上で優れていた。更には、魔力量増大と魔力視という2つスキルも持っていたため、重宝されていた。

 2つのスキルと麗しい外見から、相当の高値で取引されていた。似たような奴隷を買うには、金と運と時間が必要になるだろう。


「やむを得ん、処分しろ!」

「しかし所長、ショゴスは再び創造できる保証はありません!」

「わかっておる!記録は残っているんだ。なんとでもなる!警備員!コアを破壊しろ!」


 所長は、コアを破壊した後に残る肉体と、データを頼りにしていた。

 警備員がコアを破壊する。普通なら、コアを破壊されたスライムは死ぬ。しかし、ショゴスはスライムではない。


「なに!?死なないだと!?」


 なんと、コアを破壊されたショゴスは死ななかったのだ。


「しかし所長様、再生能力が落ちているようです。それに、動きも遅くなったようです」


 先ほどまで交戦していた警備員が進言する。


「コアを破壊されても滅びないとは…素晴らしい!不老不死の薬にはうってつけじゃないか!」

「化け物じゃないですか!いまここで処分すべきです!」


 意見がさっきと真逆になった所長と若手研究員。


「厳重に管理すれば問題なかろう」

「我々には身に余る化け物です!所長、考え直してください!」

「ならん!各警備員に通達、ショゴスを捕獲しろ!」


 所長と研究員が言い争いをしている間に、ショゴスが逃走しようとしていた。それに気づいた所長は警備員に捕獲命令を出した。


 しかし適した捕獲用具が無く、ショゴスを捕らえるには至らなかった。唯一まともな捕獲道具であった檻は、隙間がショゴスにとっては大きく捕まえることは出来なかった。攻撃しても有効打は与えられず、扉や窓を閉めていたが、ダクトから逃げられ、研究所から出て行ってしまった。


 警備員が数人研究所に残り、ほぼ総出でショゴスを捜索した。帝都の夜は比較的に明るいものの、時間が深夜ということが災いした。しかし、入り組んだ道も多く、視界が悪い中で黒い色のショゴスを捜索するのは困難を極めた。


 貴重なショゴスを失ったとなると、研究所は大目玉を食らうであろう。それに、研究者として、やっと創造に成功した素晴らしい材料をみすみす逃すのは悔しかった。


 結局、翌朝になっても見つからず、捜索は中断となった。しかし、研究者たちはあきらめていなかった。無くしてしっまったものはまた新たに創り出せばよい、と考えていた。世に疎く、研究にしか興味が無い研究者たちの考えだ。

 しかし所長や一部の研究者は、事実を深刻に受け止めていた。あのような化け物を野に放ってしまったことが露見してしまえば、研究所が、そして自分達の地位と首が危うくなると考えた。危機感を覚えた所長は、この事件について緘口令を敷いた。


「くそっ!」


 研究所には、所長の悔しそうな叫び声が響いた。


ショゴス創造実験に使われた物紹介

• カンタレラ:バジリスクの毒を主原料とした劇薬

• 月の雫:10年に一度咲く希少な花であるツキシズカから採れる、魔力を多分に含んだ液体

• カントラン:ヒュドラの毒を主原料とした劇薬

• エリクサー:ダンジョンから極稀に発見される最上位回復薬

• 世界樹の樹液:飲むと体が耐えきれず破裂するとも、死からも逃れられるとも云われる

• 混合コア:エンペラースライムなどの再生能力が高い高位モンスターのコアを原料としたパウダーを固めた玉

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