俺の担任するクラスの美少女と過ごす大晦日
皆さんどうも、お久しぶりです。今作は前作の二人が贈る大晦日編となっております。先に前作の方を読んでから読むとよりわかりやすくなると思います。
それでは、どうぞ!
大晦日、多くのリア獣どもがハッスルする神性(笑)な1日。クリスマスと並ぶ非リア殺しの1日である(偏見)。
かくいう俺-----相模健介-----も大晦日という日に殺されかかっている非リアの一人だ。
でもしょうがないじゃん。生まれてこの方イケメンなんて呼ばれたことないし、むしろ目つきの悪さで25歳になっても彼女はいないし......だから今こたつにぼっちで入ってるわけだし......
いや、今そんなことを気にしても意味なし! 気分が暗くなるだけ! もっと楽しいことを考えよう!
「そういえば、実家からみかん送ってもらってたっけ? どこにしまったかなぁ?」
冬といえばこたつ、こたつといえばそう、みかん! 早速台所から送られてきたみかんを引っ張り出してこたつへIN! そしてテレビをポチッ。ふう、ぬくい。
テレビでは大晦日恒例の除夜の鐘を見にきているカップルが映っていた。
「ふん、リア充共め、貴様らはさっさと除夜の鐘ついて煩悩をなくせってんだ。爆発しろ。」
おっと、思わずどす黒いものが口から溢れてしまった。せっかく楽しいこと(みかん)考えてたのに。まぁ、悪いのはイチャついている画面の向こうのあいつらだ。あれ、このみかんすごい目に沁みるんだけど......
「いや、これはみかんが沁みるからであって別にリア充が羨ましいわけ『ピンポーン』誰じゃい!」
突然の来客に謎の方言が飛び出してしまった。てかほんとに誰? 俺にわざわざ大晦日に訪ねてくる友達なんていな......げふんげふん。
「と、とにかく出ればわかるか。」
俺が玄関に向かおうとすると、やけに若い女性の声が返ってきた。
「すみませーん、年越しそばをつくりにきたんですけど入らせてもらえませんかー?」
思わず持っていたみかんを握りつぶしそうになった。
女性が訪ねてきたからなんていう悲しい理由ではなく(ちょっと思った)、その声がとてもよく知る声だったからだ。
突然だが、俺は私立錦織学園の英語教師として勤務している。
そして、今聞こえてきた声は明らかに俺の担任するクラスの生徒の声であって......
「すみませーん、いないんですかー? 早く出てこないとどうなるか分かってるんですかー?」
うん、ヤクザの集金か何かかな。何されるかすごく気になるんだけど。(現実逃避)
「はあ、仕方ないですね。お父さんに電話で『アパートの隣の人に言い寄られてる』っていっちゃいますよー。」
「それだけはやめろ! あっ......」
「ふふふ、せんせーやっと出てきましたねー。こんばんは! あなたの未来の嫁こと超絶美少女、錦織楓が年越し蕎麦作りに来ましたよっ!」
やってしまった。思わず飛び出してしまった。
いや、これは仕方なくない? だってこいつ理事長の娘だよ? そんなお方に電話するって言ったんだよ?
そう、俺の家をいきなり訪ねてきた生徒、錦織楓は名前から分かる通り俺の学校の理事長の娘だ。しかも、自分で言っちゃっても別に問題ないほど周りが認める美少女。学校一可愛いとも言われていて、密かにファンクラブもあるほど。
えっ? なんでこんなに詳しいかって? こいつが俺に求婚してきたからだよ! そしてこいつがその時自分から言ってきたからだよ!
思い返すと、5月が始まってすぐ、俺は錦織から突然の求婚を受けた。当然、教師と生徒の関係ということもあり断ったのだが、こいつは全く諦めない。あろうことかアパートの隣に越してきて、わざわざ飯を作るに押しかけるレベル。正直引いた。
「せんせーが今年もぼっちで年を越すというのは分かっているんですよ。さぁ、私を中に入れてください。」
「だが断る。」
当然断る。某精神体が大暴れする漫画に出てくる漫画家の如くバッサリ断る。
てか、家に入れた時点で人生終了。誰かに見られたら終わり。そんな状況で家に入れてくれると思ってるこいつまじ頭おかしいと思う。
「そもそも、なんで入れると思ったか教えてほしい。普通に考えて教師の家には入れないから。」
「いや、だってせんせーが一人で可哀想だったから未来の嫁たる私が慰めないとなって思って。」
終いにはこれだ。もうね、あざとい。すっごくあざといのこの子。こういえば入れてくれるんでしょ感がね、滲み出てるの。
「あのな、お前バカだろ。大切なことだから二回言うけどさ、バカだろ。」
「むー! なんでそう言うこと言うんですか?! 教師が生徒にバカって一番ダメなやつですよ!」
「いや、そんなこと言われても、いきなり家に押しかけてくるやつをバカ以外になんといえと?」
「ひどい! せんせーほんとひどい! もういいです、お父さんに電話してせんせーのことバラしちゃうんだから!」
すかさずポケットからスマホを取り出す錦織。
そして、その手を掴む俺。
「すんません、それだけは勘弁してください。」
なぁ、これおかしくない? なんで俺悪くないのにこんな風に頭下げて謝んないといけないの? 理事長名前だすのは卑怯じゃない?
「ふっふっふっ、わかりました。そんなに許して欲しかったらせんせーの家に入れてください。年越し蕎麦の材料があるんです。」
見ると、錦織の手には蕎麦の麺が入っている袋があった......明らかに一人用の量ではないが。
ふぅ、やれやれ仕方ない。ここは折れてやろうじゃないか。
いや、むしろラッキーだと思え、俺。初めこそ一人で越す予定だった年越しを、生徒とはいえこれほどまでの美少女と過ごせるんだ。しかも蕎麦付き。
そうだ! 俺はこれでボッチから脱却するんだ!
「はぁ、仕方ねーな。ほら、入れてやるからさっさと中入れ。誰かに見られたらどうすんだ。それに外寒いだろ?」
外を見るとちらほらと雪が降っていた。それに、かなり寒い。
「せんせーほんとに優しい。そういうところ好きだなー。」
「ん? 今なんか言っ、痛い! おい! 今なんで叩いた!」
心配してやったのになんか叩かれたんだが? しかもすっごく痛いんだが?
結局、叩いた張本人様は何も言わずに中へ。そして、取り残される俺。
えっ? これいじめなの? 親の権力を振りかざす新手のいじめですか?
「せんせー、台所借りますよー?」
もう借りることは決定事項らしい。
まあいいけどね! 俺はこたつでくつろぐし!
「ああ、存分に使ってくれ。どうせ俺は使わん。お前が作ってる間、俺はこたつでくつろいでるから。」
「ああー! せんせーずるい! あとで私も入れてくださいね!」
そう言って錦織は作業を始めた。
対する俺はこたつでテレビをいじいじ。うん、なんかデジャブ感がすごいね。
テレビでは 「笑ってはいけない2○時」 がやっていたので料理ができるまでそれを見ていた。
トントン、という音をBGMに。
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「せんせー、できましたよー?」
そう言って錦織はお盆に蕎麦を二つ乗せて中に入ってきた。
そして、それの隣に座った。
え? 俺の隣? なんで?
「おいこらてめー、何ナチュラルに俺の横座ってやがんだ。」
「まあまあ先生、そんなに怒んないでくださいよー。むしろこんな美少女が隣にいるなんて役得だと思いません?」
「アホなこと言ってないで早く食べようぜ。麺が伸びちまうぞ。」
そう言って誤魔化すと、錦織は渋々と言った様子で食べ始めたので俺も便乗して食べ始める。
いや〜、やっぱ自分に不利な話はぶった斬るに限るな。じゃないとマジでそう思ってたことがバレちゃうしな......
そんなこんなで食べ始めたはいいけど、この年越し蕎麦マジで美味しいんだが。
そもそも麺が市販品かよってくらいにコシがある。これも料理する人によって変わってくるんだろうか? それにつゆもすごい美味しい。総評として、俺のお母さんが作るものというよりもお店のやつよりも多分美味しいんじゃないんだろうか。それとも俺がそう感じるだけか? まあ、美味しければなんでもいいや!
それから俺たちはまったりとテレビを見ながら時々話をしつつ三十分ほど食べ続けた。
「いや〜うまかった! ほんとありがとな!」
「そんなこと言わなくてもいいんですよ。私が作りたくて作ったんですし。」
そう言われても、感謝してるのは間違いないしな。わざわざきてこんなにもうまいものを作ってくれるのにお礼もしないのは先生とか以前の問題だ。
「それでもだよ。ほんと、こんなにも美味しいものを作ってくれてありがとう。」
「ふー、せんせーも頑固ですね。わかりました、じゃあお礼に、私と結婚してください。」
「ごめん、それは無理。」
「なんでですか?!」
逆になんでオッケーだと思ったのか教えて欲しい。せっかく感謝してたところなのになんか色々と台無しになった感が否めない。
「むー。なら初詣行きましょうよせんせー! ほら! 近くになんかの神社がありましたよね? そこ行きましょう!」
初詣、初詣か......毎年一人で行くのが辛いから行ってなかったんだよな......
いや、でも生徒といくのはいかがかなものだろうか? この辺に神社は一個しかないし、他の生徒がいたらバレちゃうか?
「すまんが、ほかの生徒にバレたらまずいからダメだ。」
「大丈夫です! せんせーはお父さんから頼まれて様子を見にきたとでも言っておけばいいんです!」
うぐっ、そう言われるとなんだかいいような気がしてきた。確かにそれならバレないし問題ない.....のか?
「いいからせんせーは明日私と初詣に行けばいいんです! わかりましたね? 分かったんですよね?」
「お、おう」
はっ、こいつの圧に押されて思はず返事しちまった。
「あ、いや錦織、いまのは違くてだな......」
「やたっ! じゃあせんせー、明日の朝呼びにくるんで待っててくださいね! それじゃ! おやすみなさーい!」
そう言って錦織はさって行った。
時計を見ると年を越していた。
「結局一人で年越しかよ......まったく、これも全部あいつのせいだ。」
俺は誰にかもわからないつぶやきを漏らしそのまま眠りについた。
もちろん、こたつの中で。
「いやあ、ぬくい。」
皆さんどうだったでしょうか? 今回は大晦日企画ということで投稿しました。この後の初詣編は皆様のご想像にお任せします。また、この作品の前作もよければお読みください。URLは下記のとおりです。
https://ncode.syosetu.com/n3331go/
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