無題
貴方の顔が、髪が、性格が、声が、大好きだ。
不安そうに困らせた眉も、屈託のない笑顔も
どうしようもなく愛おしく私を見る視線も
全てが
◇ ◇ ◇
永遠は存在しない。それはいつの時代だってどの場所だって関係性だってそう。
諸行無常と日本で表されるように何事だって変化していくもの。
…そうなのだけど。でもね、どうしたって永遠となってほしいと思ってしまう時がある。
貴方が笑ったり、喜んでいる時。
脆いからこそ永遠ではないからこそ価値があるのなんて充分わかってる。
でもね、そこで時が止まって欲しいと思ってしまう。
時間は有限で、貴方も有限なんて、そんなの耐えられない。
時が止まってしまえばいいって叫べば世界は力になってくれるのかなとか、思いを馳せてしまう。
そんなことあるはずないのに。
あらぬ期待と邪な思いを抱いて貴方の傍にいる私はどれほど罪な女なんでしょうね。
「ずっと傍にいて」
そう言った貴方の声はか細くて不安げで、何より壊れそうで。
縋るように私を抱きしめた貴方の震えた体を感じて。
私の気持ちはどこまで貴方に伝わっているのか不安になった。
誰より何より貴方を愛してる私の気持ちは貴方にまだこれっぽっちも伝えられてないのね。
安い言葉を並べて振舞ってみせるだけでは貴方に愛を伝えることは難しいのだと学ばされた。
ねぇ、私はどんな言葉で、どんな仕草で、どんな表情で
貴方に愛を囁けばいいの?
誰よりも貴方を想ってるってことを
他の誰でもない貴方に1番よく知っておいて欲しいのに。
◇ ◇ ◇
「捨てられるかもしれない」
「本当は好きじゃないかもしれない」
どこまでも不安そうな貴方は言葉にしなくたってきっとこう思ってるんでしょうね。
だからね、大丈夫って魔法の言葉をかけるの。
貴方に言い聞かせるんじゃなくて、私にね。
魔法は素敵な力だと思う。
それ1つで叶えられることは叶えられて、素敵な時間を過ごすことが出来る。
ゲームにしか出てこないような不思議なものだけどね、私は1つだけ魔法が使える。
それはね、「大丈夫」の魔法。
効果範囲は私のみなのだけど、使い勝手はいいのよ。
不安を隠して、不信を無視して、自分を鼓舞することができる魔法。MP切れには注意だけれど。
貴方が苦しそうな時、不安そうな時、辛そうな時。
私はね、MPギリギリまで大丈夫の魔法を唱えるの。
貴方が苦しいなら私が楽にしてあげたい。
貴方が不安そうなら私がその不安を取り除いて代わりに愛を注いであげたい。
貴方が辛いと言うのなら私が変わりに背負ってあげたい。
魔法を唱えなくたって出来ることなのかもしれないけどね、私には難しい。
だからね、必死に魔法を唱えるの。
貴方が1番大事なの。だから大丈夫だよってね。
私の言葉は貴方に届いていないかもしれない。
私の気持ちは貴方に伝わっていないかもしれない。それが怖い。苦しいの。
でもね、そんな時にも魔法を使う。「大丈夫」って。
根拠のない自信、御託を都合よく継ぎ接ぎしただけの戯言、貴方はもっと信じられないでしょうね。
私が一緒にいるからみたいな、先の話は余計に貴方を怖がらせているかもしれないわね。
ごめんなさい。でもね、私にはこれしかわからないの。
正しい、だけで生きていられるならどんなに楽なんだろうね。
◇ ◇ ◇
貴方が私の頬に手を添えるとき、私はとても苦しくなる。
貴方が意味もなく私を見つめたとき、私は溶けてしまうのではないかと錯覚する。
貴方と手を繋いだとき、どうしようもなく胸が高鳴る。
貴方と××するとき、愛おしくて息が詰まる。
私を求めてくれる貴方が本当であって欲しいと願うの。
◇ ◇ ◇
何が私と貴方をこうさせているのかそんな難しいことはわからない。
学んできたわけでもないし、経験にもない。
私と貴方の関係に名前は本当に必要かな?
形にこだわらなくたって、きっと私と貴方はこうなった。
関係に名前をつけたら安心できるの?
例外もなく周りと同じようにこの関係に名前をつけた。
でもね、おかしいの。安心するどころか不安が募るばかり。
不思議ね、私は貴方を愛しているという事実を抱きしめているだけなのに。
永遠は、確かにない。
どんな形であれ始まりは終わりまでのスタートだし、終わりは始まりのスタートだもの。
でもね、私はそれを貴方と繰り返したい。
色んなものを貴方と始めて、色んなものを貴方と見送るの。
これは1種の永遠じゃないのかな?
定義するものが物体でなく概念なのが少し難しいのだけどね。
私は、まだ全然大人じゃない。
でもね、どうしようもなく貴方を愛していることをわかって欲しいの。
大人ぶってこの歳らしくはないかもしれない。
貴方との為なら、貴方に愛を伝えるためなら
私の苦しい過去なんか踏み台にしてやるって決意表明のつもりなの。
可愛げもないかもしれないわね。
これからきっと増えてくから待っていて欲しいの。
私の心に始まって顔も胸も声も匂いも視線も体温だって
全てが貴方のものなのよっていつも思ってる。
全力で、貴方への愛を叫んでるの。
いつか伝わって欲しいと思ってる。
そのための努力も惜しまない。
だからね、お願い。どこにもいかないで、
悪いことしないから、いい子にしてるから、捨てないで
「永遠」を、「ずっと」を信じさせて欲しいの。
貴方以外に何も望まないから。
◇ ◇ ◇
苦しそうな横顔、苛立ちが見える視線、不安そうな声
何が貴方をそうさせるのかしら。私が原因?
苦しい空気はいつだって重たく私と貴方の間を威圧する。
何が悪かったのかな、どうしてだろう、何がきっかけかな
そう考えているうちに、どんどん自分を嫌いになっていくの。
こんな時に、魔法が使えたらどんなに楽か、と思う。
魔法はこの世に存在しない。永遠と同じく空想上の産物なの。
じゃあね、大丈夫の魔法ってなんだったのかな。
痩せ我慢や空元気を繋ぎ合わせて言葉にして
ただ、今が苦しくないようにと逃げるだけの行為。
それが大丈夫の魔法の正体で私に魔法なんてものは使えない。
私はただの人間だからね、貴方に特別なことは何も出来ない。
人並みの幸せだとか、人並みの安心感だとかね、そんな陳腐なものしかあげることができないの。
だから重たい空気は不安になってしまう。
私はどうすればいいのかわからない。
「どうしたら許してくれるのかな、何が気に障っちゃった?
ねえ、思ったことがあるなら言って欲しいよ」
ごめんね。心を読む魔法は使えない。
貴方が何を思って溜息を吐くのか、視線を逸らすのか。
私にはわからない。ごめんなさい。
何も言わないでいてくれるのが貴方の優しさなのかな。
そうだとしたらね、言ってくれた方が私にとっては優しさだと
誰かテレパシーで送ってくれないかな、って思うこともある。
何度も言うけどこの世にその類の魔法は存在しない。
不便で不親切で不愉快で不公平なこの世しか存在しない。
たまには魔法や奇跡に甘えさせてよ、なんて
夢に溢れた言葉は世に満ちた不浄なものでもみ消されてしまう
苦しいよ、助けて、って、素直に言えたらな、ってね。
貴方だって素直に何でも言ってくれたら
私はどんな魔法だって使ってみせるよ、なんて思うのよ。
◇ ◇ ◇
貴方が苦しいと私も苦しくなってしまう。
貴方が辛いと私も貴方が辛いことが辛いと感じてしまう。
きっとね、貴方と私は融合していて、共同体として生きてる。
それはね、私にとって最も大切に抱きしめたいものなのよ。
貴方の為にが私の為になるような、そんな幸福を
ぱっぱと手放せるほど、私は嬉しい人間ではないから。
私は私1人で幸せになりたい。そう願ってた。
誰かに依存した幸せなんてね、自分で手に入れてないからとても不安に感じてしまう。
それは本当なのかって過敏に不信を募らせてしまう。
私は私自身で手に入れた幸せでしか安心できなかったの。
ありふれた言葉になってしまうのがとても歯痒いのだけどね
私は貴方との幸せがとても好きなの。
貴方と2人で作った思い出が、幸福が、全てに感じるの。
それはね、不安と不信を背負う代わりに受け入れたくなるほど
私の中でとても大きな意味を持つものなのよ。
◇ ◇ ◇
あれだけ言葉を紡いでも、やっぱり真意は届かないのね。
「支えていく」って言ってくれたこと、私は忘れてないのよ?
ねぇ。私が貴方にしてしまった仕打ちはそんなに手痛いものだったのかしら。
わからないの。私は自分がされて嫌なことは絶対誰にもしないつもりで生活してる。
そのうえで、嫌だったのなら、教えてくれれば改善したのに。
貴方と初めてぶつかって、苦しくなって。
でもやっぱり貴方と幸せでありたいと願って。
「ずっと」を、「永遠」を、信じさせてくれるって、すごく夢を抱いていたのよ。
◇ ◇ ◇
1番聞きたくなかった言葉が貴方の口から苦しそうに吐かれた時、私は逃げようと思ったの。
遠くへ、その言葉が絶対に私の耳に届かない場所へ。
無様だったと思うわ。品性の欠片もなかった。
でもね、そうしてでも私は貴方と一緒のときを過ごしたかった。
人生で最大の期待をしていたんだもの。
それがその一言でバラバラに砕け散っちゃうのがわかってるなら、そんなの聞きたくないものでしょ?
でもね、「逃げるな」って、貴方は言ったのよ。
そんなのもう、どうしようもない。
だって私は世界で1番貴方を愛していて、貴方が逃げるなって言ってるなら私はどこにも逃げられない。
逃げる道がなくなって、ようやく貴方は終わりを告げたわね。
散々だった。聞きたくもない罵詈雑言ばかり。
しまいには私の存在まで否定するんだもの。
そんなの、私はこの世に居ないってことじゃない?
でもいいの。もう。そんなお話ここでおしまい。
あなたとの関係もこれでさよなら。
だってもう愛されてないんだもの。私が愛す必要だってない。
あなたが幸せに生きることを願うわ。大切な気持ちを日々をありがとう。
でも、思い出と言葉は全て持ち帰ってね。1つ残さず。
100まで生きてね。ってまだそれに囚われてるのね私。
◇ ◇ ◇
お願い。何も言わないから帰ってきて、