第三戦
更新遅くなりました。すみませんm(_ _)m
「エ、エリー?もう一回言ってくれないか。」
「剣の稽古をつけて欲しいと言ったのですが・・・」
「ダっ、ダメだ!かわいいエリーの手に剣など持たせられないっ!」
親バカもここまでいくと重症だ。どうやってモーガを説得しようか考えていると「あら、いいじゃない。エリーが自分から何かしたいって言ったの初めてでしょ?」
扉の方を見るとマリナが立っている。
「しっ、しかしだな」
「いつまでも蝶よ花よと育ててはエリーは成長しませんよ?」
「うっ」
さすがはマリナだ。彼女に弁を立たせたら右に立つものはいない。うなだれたモーガはまるで怯える子犬だ。体は大きいけど。諦めたらしいモーガは「辛くなったらいつでも言うんだぞ」と言った。
「ありがとうございます、お父様」これでひとまずは剣の稽古が出来るだろう。
「しっかりと励むのよ」
「はい、お母様」
こんな家族のひとときな時間を過ごした数日後。
私はお父様に連れられて町にやってきた。お父様が管理している領地を視察しにきたのだ。
「町のみんなが生き生きしていますわね。お父様が頑張っている証拠ではないでしょうか。」
「そうだったら嬉しいな。初めの頃はあまりにも制度がずさんなものだった。前の領主がただ腹を満たすだけにここの人たちは働かされていたようなものも同然。たまにこうして町の様子をみておかしいところはないか探すのも貴族としての責任だ。」
親バカではあるがモーガも立派な貴族なのだ。こうして生活できているのは民のおかげであり、その民を守るのが領主としての役目だと、すべての民が幸せに過ごせるように王宮に勤めるモーガの元に生まれて良かったとエリーは思う。
「お、領主様とエリー様。そんな格好してどうしたんですか。」
声をかけてきたのは町で商業を営んでいるハノスだ。町に行くときはだいたいハノスの店に寄って気になったものを買っている。
「あぁ、ハノスか。エリーに町の普段の様子を知ってほしくてな。だから今日はただの親子だ。様とかつけないでくれ。」
そう、今日の目的は’視察’なのだ。民達は領主の顔を知らない。いつもはちょっとお偉いさんが町に遊びに来ている程度の装いだが、今回は服装を町の民達に似せている。おかげでドレスではなくワンピースだ。動きやすい。ドレス重いんだよなぁ。
こうやって町の一部になることはとても心地が良い。賑やかな声が聞こえてみんなが笑顔だと嬉しい。...のだがなにやら道の先が騒がしい。
「なんだか騒がしいですね。嫌な雰囲気です。」
「そうだな。様子を見に行こう。」
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「どうしたんですか?」近くに立っている一人に声をかけてみる。
「あぁ。なんでも盗っ人を店主が追いかけているらしいよ。」
確かに男の子二人と女の子一人が店主らしき人に追いかけ回されている。その子達の服は古着でボロボロだ。手には果物が握ってある。
(ふむ。どうしましょう。)どうやって騒ぎを鎮めようか考える。ちなみにモーガには「エリーに任せる。」と言われた。
中身はだいぶ上だが外見は若干5歳だぞ。大丈夫かこの父親。
案がまとまった頃、盗っ人達(以下ガキンチョ達)が捕まっていた。
「やっと捕まえらぞ、ガキ達。お前らちょこまかと逃げやがって。」
店主はいささか興奮気味だ。まぁそりゃあんだけ走り回ってたら疲れただろう。ガキンチョ達はうつむいたまま黙っている。
さぁショータイムの始まりだ。エリーは足を踏み出す。
さて、話しかけようといざ決めてもどう切り出せばいいか迷う。ガキンチョ達が捕まったことで野次馬が散らばっていっていい具合に場は収まってきたが未だに店主は怒ってるし空気が悪い。とりあえず声をかけてみるか。
「どうするんですか?」
「あ?なんだ嬢ちゃん。冷やかしならどっか行ってくれ。」
うーん、だめだな。完全に気が立っている。
「冷やかしじゃありませんよ。この子達どうするんですか。」
「しつこいなぁ、どうするってそりゃタダ働きしてもらうに決まってるだろ。金も持ってなさそうだし、果物ももう売り物にならなそうだからな。」
「お金さえ払えばいいんですよね。」
店主のこめかみがピクってする。少し踏み込み過ぎたかな。でも仕方がない。店主にはガキンチョ達を諦めてもらわなければいけないから。
「嬢ちゃん、一体何がしたいんだ。見たところ金を持ってるようには見えないし。」
「カトレーヌ家のご息女と知り合いって言ったら?」
店主の顔が唖然となって口をぱくぱくさせている。失礼だが金魚みたいね。笑いそうになるのをこらえる。
「あ・・・あのカトレーヌ家と顔を合わせていると、そう言いたいのか。」
「そうです。ちなみにお金なら少し持っていますよ。」
そう言ってお金を店主に差し出す。店主は戸惑いながらも受け取った。これは交渉成立と思っていいんだよね。
さて、残るはこのガキンチョ達だ。服装や見た目からしてもしかしたら・・・
いざとなったら屋敷に連れ込もう。何か言われるかもしれないがそこはお父様におねだりだ!
「ねぇ、おうちはどの辺なの?」
そう聞くと男の子の一人がギリっと私を睨みつける。この反応は概ね予想どうりってとこかな。
「お前には感謝してる。けどそれに答える義理はない。」
「もしかして貧困地区辺り?」
おぉ、すごい殺気が放たれているわね。あいにくそれ以上のものを受けたことがある私にとっては軽いものだけど。
さて、さっきのがラウンドワンだとしたらラウンドツーの開始だ。