第一戦
「エリー、どうしたんだっ?!」
薄れゆく意識の中で[今世]のお父様の声が聞こえる。
あぁ、お父様ごめんなさい。私、一回ゼウスを殴りに行ってきていいかしら。
事の始まりは今日、私が5歳になったことを祝う誕生日パーティを開催し始めたところからだ。
今日の主役は私であるため一段と豪華なドレスが目の前にあった時から嫌な予感はしていたが侍女たちにいわれるがまま その名のごとく『お手入れ』されている最中に[今世]ではない記憶が頭の中に流れた。
(今の...記憶は...) ゲームをプレイしている「私」とそれを呆れながら見ている誰か...?
この記憶はなんだろうと今までの『五年間』の記憶を覚えている限りさらってみるが思いつくものがない。
そんなこんなしているうちに侍女たちの満足がいく仕上がりになったようで鏡の前に立ってみる。金びらやがな鏡の前で年相応の身長と顔をしている私がいる。
(侍女たちが頑張ってくれたおかげで普段より一段と可愛いわね)
実際にエリーはとても可愛い。エリー自身もそれを分かっているから自分を可愛いと思っている。可愛いものは可愛い 醜いものは醜い。でもそれだけでその人の全部を決めない、あくまで判断材料の一部に過ぎないと思っている。ある意味まっすぐな性格でもある。ふと、意識を右に向けるとパーティの準備が終わり、招待した方々が続々と我が家にやってくる。私もそろそろ会場に向かおうと思い歩き始めて少しするとある人と目線が会う。
「エリィ〜〜 いつも可愛いけど今日は一段と可愛いなぁ。」
「お父様、ありがとうございます お父様もかっこいいですよ。」
この会った瞬間親バカぶりを見せつけるような人、エリーの父もといモーガは正装の姿でビシッときめている。モーガと一緒に会場に向かい招待した方々の前で挨拶をする。
「本日は私のために集まっていただきありがとうございます。些細なものでございますがどうぞ心ゆくまでお楽しみ下さい。」
挨拶を無事に言えてホッとしたのもつかの間、次々と挨拶に来る方々の対応に追われ忙しくしていた。
「エリー、少し休みましょうか」と声をかけてくれたのは母であるマリナだ。そうですねと言い少し離れた個室に入った。椅子に座り少し肩を抜いた瞬間、また[今世]ではない記憶が頭の中に流れる。なんなんだ、この記憶は と思おうけれど懐かしくも感じる。顔がこわばっていたのだろう。「エリー?」と心配そうに顔を覗くマリナに対し
「大丈夫ですお母様。少し疲れただけですわ。」と返す。
そうして少し休憩した後、会場に戻り同じ年くらいの子と少し話してパーティは終わった。後片付けをして家族で夕食を終えた時、頭が痛くなり膨大な量の記憶が頭に入って来る。あまりにも頭が痛いので少し意識が遠のく。異変の気付いた両親が「エリー!」と必死に声をかけるがどんどん意識が薄れてゆく中全てを思い出し、(あの野郎...ぜってぇゆるさねぇ)と心の中思いそこで意識が途切れた。
翌朝、目を覚ますと横でモーガとマリナがエリーの手を握って眠っている。一晩中みていたのだろう。服装が昨日のままだ。ふっ と両親に心の中で礼を言うと気配に気づいたのかモーガが目を覚まし起きている私と目が合う。
「エリー 大丈夫か?」と私を抱きしめる。暖かいなぁと感じて「大丈夫です。疲れが一気にきて頭が痛くなったのでしょう。」と言い返す。今の会話で起きたマリナが心配そうに私に目を向ける。つぐつぐ私は愛されているなと感じ、目を細めニッコリと笑う。
一旦服を着替えるために自室に戻った二人がいなくなった後、私はあることを決心する。それは...
(ゼウスっ!お前の想像通りのストーリーにはさせない!そしてお前を殴るっ!)
前世でプレイしてた乙女ゲーの悪役令嬢となった者の決意表明だった。
ここまで読んで下さりありがとうございます。ただの素人が思いつきで書いた作品ですが今後も読んでくだされば嬉しいです。エリーの今後の行方をどうかお楽しみください。