08. < 少女・瑕奈(きずな)の華麗なる潜入調査記録 >
08.< 少女・瑕奈の華麗なる潜入調査記録 >
“ フツウ ”。
普通 ―― って、何ですかね?
たとえば。
近所の野良猫さんの話なんですけど、
この間、トラックが規定速度ぶっちぎりで道路を走っている目の前を、虎縞のかわいい猫さんが、こう、優雅に横切っていくところを見たんですよ。
で、私、思わず
「危ないっ!」
と、心の中で叫んだんですね。
そりゃあ私だって助けられるものなら助けたかったですよ。
でも私は陸上選手みたいに早く走れませんし、火事場の馬鹿力に期待できるほど運もよくありません。
おまけに時を止めるとか、猫を助けた反対側の手でトラックを止めるなんて魔法みたいな力も持っていないんです。
実に普通の少女なんですよ。
あ、私の話じゃないですね。
猫さんの話でした。
それでその猫さん、どうなったと思いますか?
トラックは猫さんに気付くことなくどんどん前へと迫ってきます。
無骨な四対の車輪が猫さんの華奢で細身な体躯に今にも到達しそうになったとき、
その猫さん、宙返りしたんです。
ええ。
そうなんです。
宙返り、したんです。こう、綺麗に弧を描く感じで。
猫さんはトラックをちらりと見ると、まるで全てが予定調和の出来事みたいに、慌てず動じず、ただその後ろ足の強靭なバネを利用して、びょーんと跳躍した挙句、くるっと一回転して塀の上に降り立ったんです。
信じられますか?
私は俄かに信じられませんでした。
しかもその猫さん、私の視線に気付いて何と、にやっと笑ったんです。
猫が笑うところって見たことありますか?
私はそれが初めてだったんですけど、結構ブキミなものでした。もう二度と見たくないくらいには。
とにかくですね。
私はそのとき、確実に悟りました。
「 この猫は普通じゃない 」
普通の定義がなんであれ、たとえ平凡と非凡の境目が曖昧だとしても。
私の目の前でひらりとトラックをかわし、あまつさえ宙返りまで見せてくれたあの猫さんは、明らかに一般的常識からかけ離れている存在なのだ、と。
尚、この猫さんは今後のお話に一切関係ありません。
彼(彼女?)はあくまで私の回想の中に登場する虎縞が綺麗で宙返りの上手な猫さんです。
まさか主人公の絶体絶命の危機に颯爽と現れ、全てを解決に導くなんてことは絶対にありません。
これは本当です。
伏線じゃないですよ?
だってその次の週、猫さんは同じ道路の真ん中でぺしゃんこになって潰れてしまっていたんですから。
*
ということで私の話をしましょう。
私は極々普通の十五歳の女の子です。
あ、失礼しました。
この間、十六歳になったんでした。忘れてましたよ。
容姿も能力もいたって平凡。
そりゃあ目も当てられないほどブサイクってわけじゃないですけど、胸だって平均よりは小さいですし、背も小学生並みに低いのが実は密かなコンプレックスだったりしています。
そうですね、得意な事はお料理です。
同居人(後に記述)がまったくといっていいほど家事をしない人なので、それなりに家の中の事はできるはずだと自負しています。
けれどそれも一般のレベルからはみ出ることはないでしょう。
けれど私も生い立ちは少々複雑かもしれません。
詳しくは語りませんが、私はその幼少期をかなり“苦痛”だと思う環境の中で過ごして来ました。
虐待ってわけではないんですけど。
ああ、でもアレも虐待の一種になるんですかね。どうなんでしょう。
昔の話なのでよく分かりませんね、私にも。
父と形容されるべき人は、私のことを愛してなどいませんでした。
けれど興味がなかったわけではないようです。
まあその関心は親が子に対して抱くものではなかったんですが、私としてはそれでもよかったんじゃないかな、と思います。
私という存在をこの世に生み出してくれたことを今では感謝しています。
そのおかげで色んな事を知ることができましたし、素敵な体験もたくさんできましたから。
さてはて。
私自身は凡庸かつ平凡なわけですが、周りに集まってくる人たちはどうも普通じゃありません。
父にしてみたってそうですね。
彼は俗に謂う“狂科学者”というやつでした。
けれどただ単に狂っていたわけではなく、その突飛なアイデアと斬新な意見を求め、政府の偉い人なんかがたまに訪れたりしてました。
今は離れて暮らしているんですが、十中八九きっとあのままなのでしょう。多分。
そんな私には弟妹がいます。
私たちは三つ子として生まれました。
二人は何の才能もない私とは違い、世間があっと驚く素晴らしい能力を持っているのです。
弟は発達した嗅覚と聴覚の持ち主です。
雑踏の中でも五キロ先で釘が落ちる音を聞き分けたり、遠く離れた家の晩御飯を見事当ててみせたり、とその能力はもはや犬並みです。
あ、こう言うと彼は凄く怒るので、内緒にしててくださいね。
小さい頃はいつも涙を溜めた目で私の背後に隠れ怯えていました。
それは無条件に抱きしめてあげたくなるくらいの可愛さでした。その遺伝子の欠片でもいいから私に受け継がれればよかったのにと、無駄なことを思ってしまうくらいに。
そんな弟は近年その人間不信にすっかり拍車がかかり、ついには家の中に引きこもって一歩も出なくなりました。
ええ、ニートです。
そして彼こそがさきほどの“同居人”さんなんですが、最近では顔を合わせてもくれません。
これがお年頃ってやつでしょうか?
妹の方は、そうですね …… 平たく言えば天才です。
確か誰かが彼女のことを“電脳世界の申し子”と呼んでいましたね。
それで間違いないんだと思います。
妹は私たちがまだ覚えたての這い這いに夢中になっていた頃から、電脳に関して異常な興味を示してきました。
そして言葉を習得する前に電脳を使いこなすことを覚えてしまったのです。
驚きですよね。
そんな妹は、ある日その才能を聞きつけた偉い人に連れられて、どこか知らない場所で生活することになりました。
それ以来、もう十年近く音沙汰はありません。
とある筋からそれなりに元気でやっているとは聞いているんですが、それでも姉としては心配になってしまいますよね。
それが私の自慢の弟妹たちです。
今はニートで行方不明の身ですが、それでも私は彼らを愛していると公言できます。
好きです。大好きです。超愛しています!
私の家族以外にも、不思議な人たちはたくさんいます。
半年前から働き始めた<傍観者>という事務所の同僚の方たちなんですが
謎の老成パトロンとその美人眼鏡秘書を筆頭に、
性別錯乱した変態実験マニア、
危険な匂いがぷんぷんするかなり二枚目なナイフ男、
かの007も真っ青なスパイ能力を持つおっさん(失礼)と、
若くして医師免許と電脳工学に精通した“ドクター”と呼ばれる青年。
それから、私とそう歳も変わらない常に無表情顔の少年。
入りたての頃、仕事のあれこれを教えてもらったので私は彼を“先輩”と呼んでいます。
その先輩なんですが、ついこの間まで私と同じく非力・無能要員としてそれなりに親近感を懐いていたんですけど ―― それはとんでもない検討違いでした。
多分、私たちの中で一番異能なのは彼、正確に言えば彼の中のもう一人の存在なのではないかと、うすうす思い始めている今日この頃です。
ということで、これが私と、私の周りをとりまく人々です。
改めて考えてみると、彼らに比べ私は本当に微妙ですね。
その微妙さ加減もまた微妙すぎて、なんていうかどうしようもなく不完全燃焼です。
私は私が好きです。
私が今の“私”に成れたのはここまでの経緯のおかげです。
私まで“私”を嫌いになってしまったら、今まで私を支えてくれた全ての人たちに何だか申し訳ない気がするのです。
だけど ――
やっぱりそれでも少しは思ってしまいますよね?
三七三さんみたいに頭が良かったら。
柊木沢さんのように強くなれたら。
先輩のように …… は、やめておきます。
やっぱりあれは特別です。
私がどう足掻いたところであそこまでは無理ですよ。
普通じゃない、私。
平凡じゃない、私。
凡庸じゃない、私。
憧れの非・日常。望んでいた超能力。少しばかりの才と知恵。
もしもこんな日々から抜け出せる方法があったとしたら、試してみたいと思いませんか?
―― ね?
** *
ある日の<傍観者>事務所でのことです。
先輩と図書館に行った日から数日後。
私と先輩は、明さんの部屋に呼び出されました。
「―― 潜入、ですか?」
告げられたのは思ってもみなかった次の仕事内容。
今まで私は(先輩もそうですが)、ちょこちょこ書類を作成したり、三七三さんの実験の犠牲になったり、調べ物をしてみたり、三七三さんの実験の玩具になってみたり、と事務的なことしか任されてきませんでした。
それもそうですよね。
十六歳の少女と十九歳の少年に、柊木沢さんのような血の臭いがするあれやこれやはちょっと、いやかなり無茶がありましたから。
それがいきなり、潜入工作ときましたよ!
「正確には潜入工作ではありません。貴方がたには、ただこの集いに参加していただきたいだけです」
そう言って、明さんは一枚のチラシを私たちに見せた。
「“創世会 体験入信のお誘い”?」
「ええ。これは創世会と呼ばれる例の団体が月に一度催している、PRイベントのようなものです」
「それに僕たちが参加するんですか?」
先輩がチラシから顔を上げます。
その無表情っぷりからは判別しにくかったけれど、多分先輩も私同様混乱していたんだと思います。
「何故、僕たちなんですか?」
訊ねつつ、先輩はちらりと私の方を見ました。
「僕も瑕奈ちゃんもこういうことには不慣れです。どちらかというとこういう事は、金さんか柊木沢さんあたりが妥当かと思いますが」
「私も大いに賛同します!」
どさくさに紛れて意思表明。
明さんのことは美人だなとは思っていたけれど、その一貫した態度と口調に萎縮してしまうところもありましたから。
そんな私と先輩の態度に動じることも無く、明さんは淡々と選抜の理由を説明していきます。
「金さんは首探しからシフトして新たな任務についています。柊木沢さんは目立ちますから、顔を覚えられる可能性もあります。私が、いえ叶が望んでいるのは創世会の内情についての“視察”です。貴方がたは特に何もせず、むしろ下手に動くことなく、ただその場の流れに任せありのままの状景を見てきていただきたいのです」
「で、でも、もし本格的な入信を迫られたら」
「それはないと思います。全員が全員、その場でイエスと言えるはずがありません。少し検討してから後日また、という選択肢も必ず与えられるはずですから」
「それはそうかもしれないですけど ……。もし、私たちがどこかからの回し者だとバレたりしたら、」
「そんなことになったら ―― お前らだけで対処できるとは到底思えないな」
まるでアニメに登場する正義の味方のような声。
振り返ればそこには柊木沢さんが、扉の陰にもたれかっこよく腕を組んでいます。
「どうすんだ?相手は必要とあらば人の首を切るような連中だぞ?生きて帰れると思ってたんなら、ちと楽観的すぎやしませんかね」
「じゃ、じゃあもしバレたりしたら ……」
柊木沢さんは不吉な音を上げながら、自分の首を人差し指でなぞりました。
典型的な首ちょんぱのポーズです。
「ひいっ!」
「なんてな、そういうこともあるかもしれねえって話だよ」
思わず悲鳴を上げた私に柊木沢さんは肩を竦めます。
「で?どうなのよ、明ちゃん?そのところ考えてるわけ?」
「ですから彼らにはそのような事態を招かぬよう、何の先入観もなく自然な態度で臨んでいただくのです」
「それじゃあ説得力に欠けんぜ?」
「…… それでは、貴方はどうしろと仰るのですか?」
「俺も行く」
柊木沢さんは真剣な顔で宣言しました。
確かに私も柊木沢さんと仕事外でデートは好ましい展開で、あ、いや何でもないです。
とにかく柊木沢さんが来てくれるなら私としても安心です。先輩もきっと同じ風に思っているのでしょう。
…… 相変わらずの無表情ですが。
しかし対する明さんは珍しく露骨に嫌な顔をしています。でも美人って、どんな顔をしても美人なんですね。
これは発見です。
「創世会は貴方が思っているよりも一般的に広く知られています。このイベントも抽選制でして、二人分の参加権しか入手することができませんでした。なので、」
「そんなの明ちゃんなら何とかできるんだろう?」
柊木沢さんは私と先輩に近づいて、その両肩を引き寄せるように背後から腕を回します。
し、心拍数が!心拍数が!
「俺はこいつらをそんな狼の群れに裸で投げ込むような真似、賛成できねえな。別に事を荒げようってわけじゃない。なんなら得物だって持っていかないよ。俺はあくまでも保険、または保護者だな」
「…… 分かりました」
凄いですっ、あの明さんがとうとう折れました!
というか、柊木沢さんを説得するほうが困難だと気付いたのでしょう。懸命な判断です。
「もう一席分、どうにか用意させましょう。しかし貴方には彼らと別行動で潜入していただきます。くれぐれも穏便に事を運ぶよう心がけて下さい」
「了解。明ちゃんは話が早くて助かるねえ」
そう言うと、柊木沢さんは私たちを引き連れて笑顔で明さんの部屋を後にしたのでした。
「よかったんですか、あんなこと言って」
部屋の外で、先輩が柊木沢さんに訊ねました。
「いいのいいの。どうせ俺も暇してたし、それに首を刈るような連中の親玉だぜ?見てみたいに決まってるじゃねえか」
「成る程」
…… それってただの暇つぶしと好奇心ってことですよね?
しかし先輩も納得していますし、私も特に意見することはやめました。
そこへ、
「何なにー、あたしだけ仲間はずれなのー?」
騒ぎを聞きつけてきた三七三さんが不満そうにこちらへと向かってきます。
その頭には何故かゴーグルが装備されています。必然的に嫌な予感。
「えー、みんなでどこかへ行く計画?あたしも混ぜてほしいわぁ」
「…… お前ら、何があってもコイツにはバラすなよ?死んでも口を割るなよ、いいな?」
「ええー何その態度っ!三七三さん、傷ついちゃうなー傷心だなー」
柊木沢さんは完全に無視しています。
先輩は、その、何ていうか無表情です。ここまでくると清々しいですね、いっそ。
そして三七三さんの視線は順当に巡り廻って、私の方へと向けられます。
「…… 瑕奈?」
「は、はい!なな何でしょうかっ?」
「ちょっと新しい拷も …… いいえ、実験を思いついたの。ちょっと一緒に来てもらえる?」
いまなんか言いかけた!
絶対何か不穏なことを言いかけましたっ!
「せ、先輩―!柊木沢さーん!」
助けを求める私の叫びも虚しく、三七三さんは女性とは思えない凄い力でどんどん私を引きずって、あ、いや、引っ張っていきます。
「今、ちょうどラットを使った実験にも飽きてきたところだったの。活きのいいサンプルが欲しかったのよね」
うふふと不気味に微笑む三七三さんは右手をわきわきと動かしています。
最後の力を振り絞って、私は柊木沢さんに目を向けました。
すると彼は両手を合わせ目を瞑り、
「―― 合掌」
となにやらお経を唱えています。
「ちゃんと成仏してくれよー。間違っても逆恨みで化けて出るなよー」
まだ死んでいませんからっ!
*
そしてその数日後の日曜日。
私は先輩と東京駅で待ち合わせて、一緒に例のなんたら会の集いに向かうこととなりました。
ちなみに柊木沢さんとは直接会場で待ち合わせの約束です。
…… なんだかとっても残念な心情です、ハイ。
「お腹、空いてない?」
内心がっくりきていた私に、先輩が訊ねます。
時刻はもうすぐ正午になろうというころです。
例の集会は一時半からなので、まだ少し時間がありました。
丸の内ビルあたりには、親子連れやカップルさんたちの姿がちらほらと見受けられます。
「そうですねぇ、小腹は若干空いてきたかと」
「じゃあ会場に向かう前に何か食べていこう」
そういうと先輩はいちゃいちゃと手を繋ぐ恋人たちの脇をすり抜けて、新・丸の内ビルに入っていきます。
慌てて追いかける私。
なんだか聞いたことのある名前のレストランで、私と先輩は向かい合って昼食と洒落込んでいました。
先輩はカツカレーとコーヒーのセットを、私はオムライスと食後のデザートにこの店の名物だというパフェを頼みました。
実を言うとこういった場所で食事をするのは初めての経験でした。
しかも男の人と二人きり、これってひょっとすると本当にデートみたいじゃないですか?
お相手が先輩というのが残念といえば残念ですが(失礼ですね)、知り合いが周りにいない今、これは色々聞きだす絶好のチャンスなのかもしれません。
「先輩って、柊木沢さんと仲がいいですよね?」
私はさりげない感じで聞いてみました。
それにしても、私が頼んだのは普通のオムライスのはずなんですが、何故かそのてっぺんに紙でできたイタリアの国旗が立てられています。
隣の人もオムライスを頼んでいたのですが、その男の人のオムライスには旗なんか立っていません。
不思議ですね。
「どうなんだろう、普通じゃないかな?」
私の問い掛けに対し、先輩はフォークを持つ手を休め答えます。
「いやいやいや。だって先輩、柊木沢さんとご飯食べに行ったりしてますし、仕事終わったら飲みに連れて行ってもらったりもしてるじゃないですか!」
「それは僕が男だからじゃないかな。たまたまそこにいたからとか、そんな理由だと思うよ」
「でも!たとえば飲み屋さんとかバーとかクラブとかで、色んな話をするわけじゃないですかっ!」
先輩がクラブで踊り明かしている姿を想像、いえ、想像できませんでした。
「まあ少しは」
「ですよね!ですよね!じゃあ、じゃあプライベートな話とかもするんですよね!?」
「瑕奈ちゃん、ケチャップが洋服に飛んだよ」
「ああ、本当です!ふ、ふきんを ……」
最悪です。
今日はよりにもよって新しく購入したばかりの白地に小さなお花がプリントしてあるシャツを着ています。
ケチャップの毒々しい赤は当然ピンクと黄緑の中で目立ってしまうわけで ……。
「うん。大分見えなくなったよ」
「本当、ですか?」
ごしごしと擦った結果、ようやく少しは薄くなったようです。
ふう、と額の汗を拭ってスプーンを持ち直し、レッツ・お食事再開です。
それにしてもこのオムライス、玉子はふんわりしてますし、中のチキンにまでしっかり味がついていて何とも美味な一品です。
家でもこのくらい美味しいオムライスが作れたらいいお嫁さんになれるんですけどね。
え、誰のお嫁さんかって?
それは勿論 ……
「―― っは!そうだった!」
ケチャップのせいで忘れていましたよ!
「先輩、単刀直入に聞きますよ?」
私はカツカレーをほぼ完食しつつあった先輩のほうへと身を乗り出します。
「あの、その ―― 先輩のタイプってどんなんですか?」
……。
ま、まずは周りから固めていかないとね!
いきなり柊木沢さんの好みとか聞いたら、好きって言ってるのと同じじゃないですか。
え、ちょっと待ってください。
ということは、もしかすると今私は先輩に直接的に好きって言ってしまったってことですか?
「タイプって …… 血液型のこと?」
そんな私の心配を他所に、先輩は勘違いの斜め上を行く珍回答を提供してくれました。
「たしかAB型だと思うけど」
「ふうん。一番レアなタイプですね」
確かに先輩は二面性がありますし。万事納得。
って、違う!
「そ、そうじゃなくてですね、その、なんていうんですか?女性のタイプですよ、好みの女性のタイプ!」
「“好みの女性のタイプ”?」
先輩は最後のカツを突き刺したフォークを宙で止めました。
「女性の、好み …… ねえ」
「なんでもいいですよ?髪が長いほうが好きとか、清純派が好みとか」
「うーん、髪の長さ ……。清純、派?」
「ああじゃあもういいです!」
面倒くさくなってきたので、私はいよいよ本丸に飛び込んでみることにしました。
「じゃあ、柊木沢さんの好みってどうなんですかね?」
「柊木沢さん、かあ」
どうやら先輩は思考の迷路から解放されたようです。
そうですよね、先輩と女性というのはどうも私の頭の中でもうまく結びつけることができませんから。
「柊木沢さんてモテそうじゃないですか?実際のところ、好みとかにも煩いんですかね?」
先輩は少し考えてから、
「柊木沢さんは ―― 眼鏡の人が、好きかな?」
唐突にそう零しました。
眼鏡。
めがね。メガネ。MEGANE。
…… それは盲点でした、迂闊でした。
柊木沢さんにそんな属性があったとは。
「二ノ宮さんのことも好きみたいだし、ミーナさんも眼鏡掛けてたし。どちらかというと知的な感じの人が好きなんじゃないかな?」
「そ、そうですか ……」
切実な質問なんですが、知性ってどこに売ってますか?それっておいくらで買えますか?
「って、ちょっと待ってください。その、“ミーナ”って誰ですか?」
「ああ。この間、十字製薬の本社に行ったときに柊木沢さんが知り合った女の人だよ」
先輩は、三七三さんには内緒にしておいてねと私に言付けました。
しかしそんなことはどうでもいいです。
「で、そのミーナさんと柊木沢さんは、どういうご関係で?」
「どういう ……?うーん、そうだな。十字のビルに入れて貰うために話しかけたんだけど、携帯電話の番号も交換してたし、その後にデートの約束も取り付けてたしな。そこまでは僕も見てないし、実際のところどうなんだろうね?」
「・・・・・・」
デート、の約束。
携帯番号の交換。
私は徐々に遠のいていく意識の中、そのミーナさんを想像してみました。
十字製薬につとめる眼鏡のエリート女研究者。
白衣の下には胸を強調した小さめのシャツ、脚の線を浮かび上がらせたタイトなスカート。
泣きホクロと赤い唇がセクシーで首筋からはそっとコロンの匂いを漂わせる、大人の女。
そんな(想像の)人を相手に、私が勝てるわけがないじゃないですか。
「あの、瑕奈ちゃん、ケチャップがまた」
「…… もういいんです。赤い花を咲かせておけばいいんです」
と言いつつも、おしぼりを手にとってしまう私。
あーあ、このシャツも高かったのにな。
店員さんが凄く似合いますよこのスカートと合わせたら男なんてイチコロです、なんて言うからセットで購入したっていうのに。
何だか悲しくなってきました。
泣きたいというよりも笑い出してしまいたいです。
あ、嘘。やっぱりちょっとばかし泣いてもいいですか?
「瑕奈ちゃん、もしかして柊木沢さんのことが好きなの?」
「ほわっつ!?」
急に口から英語が飛び出していました。
その弾みでスプーンが涼しい音と共に床へと落下。
暇そうにしていたウエイトレスのお姉さんが、後で拾いますから大丈夫ですよ、と爽やかな笑顔で新しいスプーンを持ってきてくれます。
けれど私はお礼も言えませんでした。
心の中では土下座までしました、本当ですよ?
それよりも ――
「ど、なななどうしてそんなこと思ったんですかっ?」
「違うの?」
「いや、あの違うのかと言いますとそうではないとは申し難く、非常にあの、その」
「言いたくないならいいよ、別に」
先輩はそう言って、空のお皿の前で手を組みます。
「ただちょっとそう思っただけ」
「……。」
いつもは鈍いというか勘が悪いのに、どうしてこういうときだけレーダーが利くんでしょう?
それとも、それほどまでに私の態度が分かりやすかったんでしょうか。
きっとそうなんでしょうね。
「好きっていうかその、気になっているというか」
「かっこいいもんね、柊木沢さん」
「そうなんですよ!」
ぶっちゃけ一目惚れでした。
初めて見たときから心、奪われちゃったんです、私。
「でも、柊木沢さんは多分私のことなんか妹くらいにしか見てないんですよ」
「歳の差があるからね」
あ、そこはもっとフォローしてほしかったな!
でも先輩なんで多くは望みません。
「じゃあ、先輩はどうすれば私が柊木沢さんに気にしてもらえると思いますか?」
「そうだね。よく分からないけど、髪を伸ばしてみたらどうかな?」
「髪、ですか?」
「やっぱり髪の長い女の人は綺麗だと思うから」
「ほお」
…… 先輩のこういう意見を初めて聞きました。
ある意味すごく新鮮です。
*
「とりあえず、ご馳走様でした!」
色とりどりのフルーツのパフェも食べ終わると、私たちは外に出ました。
ちなみにお勘定は先輩が持ってくれました。
私がお礼を言うと、
「そんなに感謝されるほどの額じゃなかったよ」
と軽くあしらわれました。
私のオムライスとパフェで二千円、先輩のカツカレーセットが千二百円。
合計すると十代の若者のお昼代としてはあまり安いとは思えません。
そうなんです、先輩からは時々ブルジョア臭がするんですよね。
私と先輩は再び賑やかな通りを、会場のビルへ向かって歩き始めます。
途中、小さなブティックでとっても可愛いワンピースを見つけてしまいました。
しかしお値段を見ると、あれこれゼロが一つ多いんじゃないのって感じの額でした。
さすが丸の内、原宿の竹下通りで千九百八十円のシャツに悩む私の世界ではありません。
そんな私と先輩の横を、ふいに一台の車が通り過ぎ、そして停止しました。
私は大して気にもしていなかったのですが、先輩の足が止まります。
「カイ君、」
車の中から声がしてウインドウが下がります。
先輩は、ああやっぱりとそれに近づいていくので、私も反射的にその後を追いました。
すると、
「どうしたの、こんなところで?」
…… 凄い美人さんがそこにいました。
線の細い、いかにも儚げなお嬢様といった感じです。
上品に着こなした白いシャツと紺色のスカートのコンビネーションは、ラルフローレンでしょうか?
黒い艶のある髪をそっと耳に掛ける仕草は、女の私が見ても惚れてしまいそうな気品に満ち溢れています。
間違いありません、この人、本物のお金持ちです。
「あら?もしかして、デートだった?」
お嬢様(仮)は私に向かって優しく微笑んでいます。
「えっ、いいえ!そういうわけじゃありませんです、はい!」
「たまたまこっちの方に用事があったんだ。樹雄さんも、お久しぶりです」
お嬢様(仮)の隣には男の人が座っていました。
その人は先輩ににこやかな笑顔を見せています。
そしてふいに私のほうを見ると、軽く片目を瞑られました。
…… 世の中には自然にウインクを投げかけられる種類の人もいるんですね。
これがロマンスグレーの魅力!
ビバ・ナイスミドル!
思わず叫びそうになりました。
「これから病院なの。近くまでなら送ってあげられるけど?」
先輩はお嬢様(仮)の誘いを首を振って辞退します。
「歩いたほうが早いから大丈夫。有難う」
「いいの。それじゃあ、またね」
お嬢様(仮)は電話するわね、と呟くとウインドウを上げました。
それの姿が完全に見えなくなってしまうと、車は再び道路へと走り出していきました。
銀色に光るそれが角を曲がった瞬間、私は先輩に問い訊ねます。
「先輩先輩っ!今の人、先輩の何なんですか?」
「何って、そうだね。幼馴染で元・学友かな?」
「あんな人と幼馴染っ!先輩って一体どういう生い立ちしてるんですかっ」
「別に普通だと思うけど」
聞いてしまってから、私はもの凄い後悔の念に襲われました。
誰だって人に言われたくないことはある ―― そう言っていたのは柊木沢さんでした。
「先輩、あの、ごめんなさい」
「何が?」
「その、生い立ちとかって誰でもあんまり話したくないですよね。私も、実はそうなんです。だから、」
「ああ。ほら、あれが僕の父親だよ」
「…… へっ?」
先輩が指差したその先には、大型スクリーンがありました。
そこに映し出されているニュースでは日本の防衛大臣が新たな軍事兵器増産についての会見を行っています。
「って、あれがお父さんですかっ!」
「そうそう」
先輩はあまり関心なさそうに言いました。
が、私の方としては関心有りありです。
なんてったって、あの君島 理人ですからね!
日本情勢や政界の動きに疎い私でも、その整った容姿と頭脳明晰な政論展開で有名な君島防衛大臣の顔を幾度も雑誌や新聞で拝見していました。
その息子が、先輩。
「はわー ……」
私が抱いていたブルジョワ疑惑、完璧にどんぴしゃです。
このことを柊木沢さんや三七三さんはご存知なんでしょうか?
「ちなみにさっきの芽衣子は一之瀬財閥の一人娘だよ。親同士の繋がりで僕達は知り合ったってわけ」
「いちの、せ」
またしても登場したビッグネームに、私は目を白黒とさせるしかありません。
「でも先輩、あの、そんなこと私に教えてもいいんですか?」
「別に隠しているわけでもないからね。今までは聞かれなかったから言わなかっただけ」
「ほお」
でも、分かったことは先輩の家庭環境だけじゃありませんよ。
「先輩って清純派路線が好きなんですね」
「どうして?」
「またまたー、芽衣子さんですか?超、綺麗な人でしたね!」
「そうかなあ」
先輩は不思議そうな顔をしています。
「……」
あんな美人を前にしてそんな感想しか持てない先輩が、少しかわいそうになってきました。
*
そうこうしているうちに、目的の<創世会 本部ビル>までたどり着いてしまいました。
「またこれは大きな建物ですね ……」
五十階はあろうかというビルの上から下までを創世会が独占しているそうです。
宗教って、そんなにスペースを必要とするものなんですかね?
「とりあえず入ろう。もうすぐ約束の時間だ」
「あ、はい」
半円形型の自動扉を抜けると、私と先輩はごく一般的なオフィスビルのロビーに出ました。
きょろきょろと探ってみますが、例の集会を呼びかける看板は愚か、そこには誰もいませんでした。
「体験入信の方ですか?」
受付のお姉さんに尋ねられ、私と先輩は頷きます。
「ではこちらでお名前を確認します」
そう言われ、私たちはお姉さんの方へと赴きました。
何故かお姉さんは病院服のようなものを着ています。
「これですか?」
私の視線に気付いたお姉さんが笑いかけます。
「これは信者の誰もが着ているものです。本当は何も身につけず、生まれたままの姿で世界を感じるべきなのですが、それですと捕まってしまいますからね」
「…… はあ」
私と先輩はこっそり目を見合わせた。
これを着なければいけないとしたら、せっかく買ったこの上下がますます台無しですよ。
けれどお姉さんは私たちの名前を確認すると、奥のエレベーターで地下三階まで降りるように促すだけでした。
二人きりでは広すぎるエレベーターに乗り込むと、私は思い出して先輩のほうに向き直りました。
「そうでした!先輩、あのくれぐれも私がその、柊木沢さんにほ、ほほほ惚の字であることは内密にお願いします」
「うん、分かった」
私はこのとき、相談したのが先輩で本当によかったと思いました。
これが三七三さんだったら、どうしようかなーとはぐらかされた挙句、ことあるごとにそれを理由として様々な実験の生け贄にされてしまいそうです。
あ、それって普段とあまり変わりがないですね。あはは。
…… 果たして笑っていいものか。
エレベーターの扉が開いたとき、向こう側には何もない空間が広がっていました。
比喩ではありません。
さしずめそれは真っ白で大きな箱の中です。
ビルがスリーフロア分くらいぶち抜かれ、真っ白に塗られています。
それだけです。
高い天井には明かりの類も見受けられませんでした。
なのに、ここは思わず目を覆いたくなってしまうほどの明るさです。
そこには既に私たちよりも前に到着した人たちが、五十人ほど集まっていました。
私はその中に柊木沢さんの姿を探します。
どちらかというと、中年姿の男性や女性が目立ちます。
なかには杖をついたお爺さんや私よりも小さい子供もいました。あ、柊木沢さんです!
柊木沢さんは一匹狼よろしく腕を組み、壁のひとつに凭れ掛かっていました。
その雰囲気から誰も近づいていこうとはしませんが、女の人はおろか男の人だって彼の肢体に釘付けです。
それは少し誇らしくもありました。
そして、そんな柊木沢さんは私たちの方を見て無関心を装いながら、小さくウインクをします。
私の身近にも自然なウインクを飛ばせる人がいたことを忘れていました。
十分ほど待つと、突然部屋の真ん中の床が開き、女の人が現れました。
正確には何か機械のようなもので体を押し上げられてきたようです。
ほら、よくコンサートなんかで見る、ちょうどあの仕掛けのような感じです。
時刻は一時半きっかりでした。
「皆さん、創世会へようこそ!」
その女の人は素敵に赤い唇をしていた。
長くも短くもない茶色の髪を頭の上のほうで束ね、服装は受付のお姉さんと同じものを着ています。
「貴方がたは今、真理への扉を叩いたのです。そして世界は貴方がそれを開ける事を静かに待っています」
何かの劇のようでした。
それから女の人は世界は汚染され、人は愚鈍になり、本来人間という生き物が持っているポテンシャルを失ってしまった、というようなことを延々と語り続けます。
話し上手なためか、私もそれに飽きることなく聞き入ることが出来ました。
ああ、でも柊木沢さんだけは既に退屈モードです。
この人は本当に何をしにきたんでしょうか?
「私たちの救世主は選ばれた存在です。そして、そんな世界を憂い、自らに与えられた恩恵を私たちにも分け与えようと、その腕を慈悲深く広げておられるのです!」
…… うっかりその中に飛び込んだら首を切られてしまうんですよね?
それは救世主というよりも、人食いワニみたいだなと私は思いました。
「私の至らない説明だけでは、救世主の真の目的を理解してもらうことは不可能でしょう。ですので、」
女の人が両手を天に掲げます。
すると、フロア中のいたるところに人が入れるほどの白い箱が幾つも現れました。
それも先ほど女の人が上がってきたときと同じ原理です。
が、こちらのほうは些かスケールが違います。見ていた人々の口から驚きや感嘆の声が漏れます。
「わあ、」
当の私も声を上げてしまった一人です。
先輩はといえばいつもの無表情でそれを眺めているだけ、柊木沢さんも少し顔を上げただけで大した反応も見せていません。
ちょっと恥ずかしくなってしまいます。
「では、この箱の中にお入り下さい。さらなる真理をご理解いただけると思います」
会場にざわめきが走ります。
これは私にとっても想定外でした。
さすがの柊木沢さんも顔を顰めています。先輩も …… まったく無表情を崩しません。
私の頭の中では“洗脳”や“マインドコントロール”と云った単語がぐるぐると回っています。意味は同じですけど。
「私の言葉では説得力が足りませんが、この箱の中には貴方がたを強制的に我が教団に入信させるような仕掛けは一切ございません」
確かに説得力はありませんでした。
周りの人たちも口々に何かを囁きあいながら、それに入ることを渋っています。
「―― けれど、これだけは言わせてください!」
まるで全ての迷いを断ち切るような声で、女の人が叫びました。
その影響で部屋の中は再び静けさで満たされます。
「この箱の中にあるのは、“真理”です。貴方の人生を、価値観を、そして貴方自身をも変えてしまうことをお約束します」
変わりたいんでしょう?
そのために、ここへ来たんでしょう?
何故か、そう言われたような気がしました。
しばらくその言葉の余韻に浸っていた人々は、やがてゆっくりと動き出しました。
私たちもそれに倣います。
「―― 振り返るなよ」
素早く背後に忍び寄った柊木沢さんが囁きます。
「あの得体の知れない箱の中に何があるかは分からねえ。が、身の危険を感じたらすぐに飛び出せ。そして叫べ。その後は俺が何とかしてやる」
冷たく冴えた声でした。
私と先輩は無言で頷きます。
私たち三人は密接していた箱を選び、それぞれ中に入って行きます。
私は最後にもう一度だけ、二人を見ました。
柊木沢さんは何の抵抗もなく箱へ入っていきます。先輩も同じでした。
箱にはドアノブのようなものも、引き戸のような隙間も見当たりません。
押しても開かなかったので箱の角隅に軽く触れると、それは簡単に開きました。
小さく深呼吸をして中に突入します。
体を全部入れてしまうと、それは自動的にぱたんとしまりました。
隙間なく閉まってしまった為、箱の中に完全な暗闇だけが残ります。
防音処理でもされているのか、外の音はなにも聞こえません。
唯一この耳に届くのはうるさく高鳴る鼓動だけ。
…… なんだか不安になってきました。
試しに扉を押してみたのですが、やはり開きそうにもありません。
箱の中はどうやら公衆トイレの個室二つ分くらいの広さのようです。
手探りで辺りを歩くと、何かに膝があたりました。
椅子、なのでしょうか?
それにゆっくりと腰掛けると、ふいに頭上のスポットライトが勢いよく部屋の内部を照らし出しました。
外の部屋とは違い、箱の中は真っ暗でした。
私が座っているちょうど真正面に映画のスクリーンのようなものが設置されています。
ちりちり、と。
何かが焦げるような音がしました。
そして、
その 上映会 は静かに始まりました。
** *
皆さんは後悔することってありますか?
私は結構ありますよ。
昨日もテレビを見ていたらうっかり鯖の味噌煮を焦がしてしまいました。
雨の予報に気付かずにお布団を干してしまって、タオルケット一枚で眠ったこともあります。
まあどれも後悔というにはお茶目すぎる失敗ですよね。
本当は後悔なんて、したことはありません。
私は若いですし、大抵のことはそれで何とか乗り切れます。
でも、
だけど
だから ――
もしかするとそれは私にとって初めての “後悔” になるのかもしれません。
後悔、先に立たずとはよく言ったものです。
だけど私はどうしてもあの猫さんのことを思わずにはいられなかったのです。
いまさらこんなことを言ったところで何もかもが手遅れなのに、ね。