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そしてケンカはまだ続いていた。
「これは俺がやるっつってんだろ!」
そういって、ドルが手を出そうとしたところで、
「はーい、ギルドでのケンカはおやめ下さ~い。」
手を叩く音と同時に男の声がした。
「誰だテメェ?」
「えっと…はい…」
ドルはケンカ腰で、シエラは落ち込み気味で言った。
「ちょ、シエラさんそんな落ち込まないでくださいよ~。あ、私ギルドのものです~。名前はカイと言います~。」
そうカイと名乗った男は言った。
「カイっていったか?語尾を伸ばすな、うざい。」
ドルはキレ気味で言った。
「わかりましたぁ。」
「そういう問題じゃねえよ!」
「えぇ?違うのですかぁ?語尾を伸ばすなって言われたから変えたのにぃ。」
「十分伸びてんだよ!」
また喧嘩が始まった。
かと思いきや、
「まあまあ、そう怒らないで下さいよぉ。僕ケンカするために入った訳でないですよぉ。」
「怒んなっつうんだったら、語尾伸ばすな!」
「そんなことより、そのクエストを二人で受けたらどうですぅ?」
「い!…や…です…」
「はぁ?嫌に決まってんだろ。」
二人同時に言った。
「えぇ、そんな二人とも即答で断らなくてもいいじゃないですかぁ。それにこの討伐依頼は二人で行った方がいいですよぉ。」
「なんでですか…?」
そう聞いたのは珍しくもシエラだった。
「だって今回のドラゴン、今までのと比べ物にならないくらい強いらしいですからねぇ。」
「あ?どれも変わんねーだろ。」
「いやいやいや、そうとも分かりませんよぉ。」
(根拠もねぇのに『分かりませんよぉ』とかまじうぜぇ。蹴り飛ばしたろうか?)
ドルはそう考えながら無意識にカイに蹴りを入れていた。
バシッ
カイが蹴りを受け止めた音がギルド館内に響き渡った。
そしてシエラはドルに対してこう思った。
(こいつ馬鹿だ。)
「あ、わりぃ。」
「もう、痛いですねぇ。そしてその謝罪ほんとに悪いと持ってないでしょぉ。」
「痛てぇっつう割には痛がってるようには見えねぇけどな。」
本当にカイは痛がる素振りは見せずに笑っている。
「ひどいですねぇ。ところでドルさん冒険者契約の契約内容ちゃんと読みましたぁ?」
「あ?なんのことだ?」
答えたのはシエラだった。自信はかなりなさそうだったが。
「ギ……ギルド職員に暴力を加えた場合3ヶ月間の活動休止……って書いてあった気がす……る……。」
「正解ですぅ、シエラさん。そして、加えて冒険者ランクを1つ落ちますぅ。ですので、ドルさんの場合ランクがAに落ちます。ですが今回は特別にこのクエストを2人で受けてきてくれたらチャラにしますぅ。」
「ま、待ってくださ……い!そ、それは、ぼ……私への罰ゲームとも同じです!」
「俺だってお断りだ。それならランク1つ落とす方がマシだ。」
2人とも余程組むのが嫌らしい。
「なら、言い方を変えましょうかぁ。このクエストに二人で行け。」
いきなりカイの顔から笑顔が消えた。