閑話 南の国を巡る人々[Ⅰ]
親が死ぬ、友が死ぬ、知らない奴が死ぬ。
血しぶきが上がるたびに僕は無事であることに安堵し、また、死んだ身体を前にして少しだけ悲しくなる。
慣れてしまった僕はもう、故郷が無くなったくらいでは、泣くこともできやしない。
一昨日は死ななかった。
昨日も死ななかった。
今日はもうすぐ終わりそうで、死ぬ気配はない。
この地獄は、いつ終わる?
誰が始めて、誰が継いだ?
戦争は起こる?
医療は人を救う筈だ。
政治は人を豊かにする筈だ。
決して、人を傷つけることはない筈だ。
なぜ、人は生まれる?
幸せなんか無い世界で、なぜ僕らは幸せを求めて生きるのか?
誰も答えはわからない。何万年後に、僕らは答えを見つける?
答えを見つけるために、生きるのか?
ーー知るか。僕らは死なない限り、生きねばならないのだ。
流れには、逆らえない。
同じ時など決して無いと知りながら、思考を止めて、ただ揺蕩う。
今なら、まだ、やり直せるか?
いつか、もう、終わらせることができるのか?
時々そう考え、しかし、いつも結論は同じ。
できやしないさ。
僕はきっと、何度生まれたって、こうやって煮えきらない生き方をするんだ。
そう、答えを知らないまま、ゴールも道標も無い空間を、ただ漠々とーーー
痛みを伴いながら、進むのだ。